第4回 Bグループ「ユダヤ・キリスト教の軌跡」

ライター:木曽千尋先生

第1セッション 旧約聖書『イザヤ書』

b2はじめに、モデレーターから今回の2本のテキストに通底するテーマである「ヘブライズム」の概念について説明があり、「苦難の僕の贖罪」を朗読してから対話に入った。

最初に「僕」とは誰かについて様々な意見が交わされた。プロテスタントのクリスチャンである生徒からは、イエスの登場を予言したものではないかという話が出される一方、ユダヤ教について調べてきた生徒からは、ユダヤ教ではイエスを救世主として認めていないのではないかという声が上がった。「かつて」という言葉が何度も使われていることから、イスラエルの人々が過去に味わってきた苦難を包含していると解釈するべきとの発言もあった。

モデレーターからは、「僕の解釈については学問的に9つの説が出されており、ここで出た意見はいずれもどれかの学説に合致している」との解説があり、続いて対話は僕が何を伝えようとしたのかに移っていった。

ノアの箱舟以後、イスラエルの人々に同じようなことをしないと神は約束したので、僕一人が生贄になった。僕が一人で罪を負うことによって、他の人々が神からチャンスを与えられるようにしたのではないか?これに対しリソース・パーソンから「こんな大変な神にどうしてついていくのか」という揺さぶりがあったが、生徒からはあえて理不尽さを受け入れることがユダヤ民族のアイデンティティにつながったのではないか、神は贖罪で一度罪をリセットすると一転して人々を信頼してくれるのが面白いとの発言もあった。

さらに対話は「契約」について広がる。僕に罪を与えるときには徹底的に厳しい神が、「あなた」には「永久の契約」のような赦しを与える。その「特別感」によって民衆は惹きつけられていったのではないか?僕はイエスを予言しているという立場から見れば、三位一体説に基づくと神がイエスとなって人々の罪を一身に負ったと考えられる。神自身がすべてを引き受けたと捉えられるのではないだろうかという意見も出された。

b1最後に、参加したOGから、宗教とは人間が理不尽な出来事を納得するために作り出したものではないか?では、イザヤ書はどういう理不尽をどう理解するために書かれたのか、という視点から読むと面白いという指摘があった。モデレーターからは、当時のイスラエルの人々が神をどう捉えたのか、彼らに寄り添ってテキストを読んでみようというアドバイスがあって対話が終了した。

第2セッション M・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

b4モデレーターから、資本主義の発展は資本主義とは対極にあるような思想が支配的な地域でしかありえないという逆説のスリルを味わって欲しいとテキストの紹介があって対話が始まった。

カトリックとプロテスタントに関する部分では、はじめカトリックが形式的なのに対してプロテスタントは信徒の精神まで支配している、教会にいるときの自分とそれ以外のときの自分にギャップがあるのがカトリック、常に信仰者でいるのがプロテスタントとった声が上がり、やがて宗教改革は宗教による支配が違う形に変化したに過ぎないという指摘が出た。

資本主義の精神についてでは、宗教的な勤勉さそのものを重視するカトリックと異なり、プロテスタントは勤勉さによって生まれる経済的価値を重視しており、お金を儲けるというのは有能さの現れとされ神への善行とみなされた。しかし、はじめは「救いの確証」を目的に世俗の職業に力を入れたものの、やがて人々の間で利益を得ることが自己目的化して行ったのではないかという意見が出た。

対話が予定説に関する部分にまで進むと、人間は救済の確証が持てないのに神に絶対服従しなければならないとう一方的な関係に驚きつつも、ひたすら金を稼ぐべしという命令的な言い回しから、何者かに支配されることで人は安心感を得るという『自由からの逃走』を想起するという感想が出た。さらに、呪術からの解放について、これは人間一人ひとりが個として分けられてしまったことを意味し、人びとは結果が数値化可能な金儲けに励むしか自己の救済を感じられない状況に置かれてしまったのではないかという意見も出された。

b3最後に、リソース・パーソンから天職の観念はカルヴィにズムから形成されたことが説明され、自分は何のために働くのか、大学生になり就職活動をする際に再度思い起こして欲しいこと、ヴェーバー自身他の視点から見れば他の説も成り立ちうると述べており、何事も鵜呑みにするのではなく多角的に考えるようにして欲しいという言葉があり、OBからもヴェーバーの価値観と現在の価値観の間の際を感じ、自分の常識に疑いを持って欲しいとアドバイスがあった。モデレーターから、資本主義の末人たる我々は「精神なき専門家、魂なき享楽人」に陥るというヴェーバーの予言を胸にとどめておいてもらいたいとまとめがあって対話は終了した。