2025.05.31理事長メッセージ
理事長からのなずなメッセージ#234 教職員の学びの大切さと古賀研究基金
2025.6.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

5月は生徒の活動が活発な月でした。14日に校外研修活動を中1は上野、中2は鎌倉、中3は横浜、高2は上野で行いました。高1は6月に1泊2日で軽井沢での集団研修活動を予定しています。天気も良く新緑の季節、校外での友人との探求活動は思い出に残るものです。
第三教育拠点の図書館では、授業に関連した展示、季節や話題になる企画展示が積極的に行われています。また昨年10月より土足入館と荷物の持ち込みを解禁し、朝の利用者が増えています。4月7時30分時点での平均利用者数は、昨年の40人から91人へと倍増しています。またロッカーを撤去した空きスペースは、新着本コーナーと動画上映コーナーとし活用しています。朝の30分から1時間の読書は値千金です。
今世界は、不安定かつ大きな変化の時代です。少子化が進行し、天然資源のない日本は、人こそが最も重要な資源であり、人の育成、活用、健康・幸福(ウェルビーイング)は最重要課題です。いまこそ学園の建学の精神である自ら主体的に学び生涯学び続ける第三教育が大切です。
学校教育においては知識習得だけでなく、主体的・能動的学び、協働学習、発表・表現力の育成が重視され、社会においては新しい分野を学ぶリカレント教育が重要となっています。このような時代こそ教職員は常に新しいことを学び、深い専門性と広い教養が求められます。新しい教育へ挑戦し、第三教育の達人として生徒の手本であり続けるために、教職員の研究・研修がますます重要であります。
1, 古賀研究基金; 教職員の研究・研修活動を支える土台
学園には教職員の研究・研修のため独自の「古賀研究基金」(創立者古賀米吉の発案による教職員のための研究基金)があり、海外調査・視察、個人の研究への助成、教科研究会・各種研修支援、資格取得支援などに有意義に活用されています。この基金は、創立者の藍綬褒章及び叙勲、喜寿など祝賀のおりの祝い金をもとに創設され、その後保護者等の寄付、さらに毎年の新入生の入学時の古賀研究基金寄付などの浄財をもって、運営がなされています。最初の大型教育研修として、1964年に当時の教頭が海外研究視察のためヨーロッパへ派遣されています。
今年度の古賀研究基金の主な活用テーマは以下の通りです。
・アジアでの国際研修のための研究視察2名(タイ、マレーシア)
・個人特別研究開発
国語 生成AIの利用と作文教育・探求活動への応用
理科 実物周期律表展示の充実
理科 生成AIを活用したマイコン制御による測定器の開発
理科 3Dプリンターを用いた実験教具の開発
理科 センサーを利用した実験の教育効果
英語 行動科学の研究と実践 など
・授業研究会・教科研修会(外部講師)、他校視察などの推進

2, 研究成果; 隔年の研究紀要の作成と公表
学園では、創立当初より生徒・教職員の成果を研究誌として発行してきました。創立80周年を機に教職員の研究紀要を隔年に発行・公表することとし、2017年12編、2019年10編、2021年11編、2023年10編の論文からなる紀要を発行してきました。これらの研究の大半は上記の古賀研究基金の支援によるものです。今年は13編の論文を発表しました。国語5件,社会2件、数学1件、理科3件(物理2件、生物1件)、保健体育1件、生成AIに関するもの1件、学校図書館に関するもの1件と極めて多様です。いずれも日々多忙な教育活動の中で問題意識をもって研究し、まとめられた論文です。
3,研究・研修のシステム; 研修委員会が中心となり推進
教育の質の向上は、教職員の教育・研究力と熱意にかかっています。そのために研究・研修の制度およびシステムの改善を行ってきました。その中で研修委員会は、古賀研究基金の活用・推進をはじめ定期的な研修プログラムの企画・推進など研修の活性化を図っています。更に自主的公開授業「オープンクラス」、教科を超えた研究会、全教職員対象の研修会「なずなセミナー」、教科毎の研究会、他校見学など研究・研修活動を積極的に支援・推進しています。また教育研究部は先端的教育の研究・普及を推進し、ICT推進部はICT設備の計画・整備と利用法の研究を行っています。
最後に生成AIやインターネットなどデジタル技術の急速な進歩は、人間の仕事を代替すると共に、その活用は新しい価値を生み出します。一方今後ますます創造力、情緒、総合知、意識、思いやりといった人間らしさや人間力が一層求められ、実物や自然、対面での交流などリアルな活動が貴重な時代です。AIを有益なツールとして活用しつつ、一人一人を生身の人間として、よく見て特色を引き出す教育(学園のなずな教育)がますます重要であると思う日々です。
『一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし。(管子)』
