104.本学のめざすリベラルアーツ教育

2014.6.1
市川学園理事長・学園長 古賀 正一

takaosan20140509 6月は陰暦水無月(みなづき)、日本気象協会の『季節のことば36選』では、「あじさい、梅雨、蛍舞う」です。

 朝校門に立ち、新入生の明るい挨拶の声に、学校に慣れてきた様子がうかがえ勇気づけられます。中間考査も終了し、すっかり中学生らしくなってきました。 

A.話題・・・本校のめざすリベラルアーツ教育

 今月は、学園の第三次中期計画(2014年度―2017年度)の基本方針である、リベラルアーツ教育について触れたいと思います。
  目標は、世界で活躍できる品格あるリーダーの輩出であり、自ら学ぶ第三教育力を土台に、『リベラルアーツ教育』を推進します。その具体的な中身は進学力を含めた真の「学力」、「教養力」、「科学力」、「国際力」、「人間力」の5つの力を育成することにあります。(高校レベルでは、あまりリベラルアーツ教育という言葉は使われませんが、学園の特色となり教育の王道です。)
 本学園は、創立者が、留学中イギリスのイートン校などパブリックスクールの教養豊かな紳士の養成、リーダー教育に感銘し、自ら学ぶ第三教育を重視し、英語力の土台は中身を理解できる教養力にありと喝破した点からも、リベラルアーツ教育は、本学園の建学の精神の具現化にふさわしいものです。

1) リベラルアーツと教養

  一般にリベラルアーツは「教養、一般教養」と訳されていますが、その歴史と意味は深い。あえて今回リベラルアーツ教育と銘打ったのは、宮崎校長のもと学園の教育を更に一段質の高いレベルにあげること、昨今の早期専門化・瑣末化に対し、文理を問わず大局を俯瞰できる幅広い知識と人間性が必要であること、学問、事業においても学際・業際分野が広がり且つ新しい分野への挑戦が必要なことなどの理由があります。
  近年大学改革のキーワードも、グローバル化と共に教養であり、基礎教育を担当する中学・高校時代こそ教養の土台(知・徳・体・情操)をつくることが必要です。尚教養を辞書で引くと、「学問、芸術などにより人間性、知性を磨き高めること」(広辞苑)とありますが、どの辞書にも、知識とともに、「豊かな心、心のゆたかさ、品位」などの言葉が必ず入っています。

2) リベラルアーツliberal artsの意味

  ギリシャ・ローマ時代、自由民(奴隷に対し)のみ習得を許された学芸が源流で、中世に大学誕生の折、自由7科として公式に定められ、文法、論理、修辞の3科(trivium)と算術、幾何、天文学、音楽の4科(quadrivium)を、専門に進む前の教育の主要科目としました。近代以降では大学での一般教育科目を言い、専門的科目に対して一般的知識を与え、広く知的能力を発揮させる目的の語学、自然科学、文学、哲学、歴史、芸術、社会科学などを指します。
  ウェブスター新世界辞書の中で、liberal artsを「arts becoming a gentleman”(紳士になるためのアーツ)」と表現しているのも面白いと思います。

3) 米国のリベラルアーツ・カレッジ(LAC)

  自然科学、人文科学、社会科学および学際分野にわたる学術の基礎的な研究を行う4年生大学(主に学士課程)で、全寮制少人数教育を特徴としています。ほとんどの場合、大学院を持たず、教授は学生の教育に専念しています。アマースト大学、ウイリアムズ大学(いずれもマサチューセッツ州)、ウェズリアン大学(コネチカット州)が特に著名で、新島襄、内村鑑三、本間長世などはアマースト出身者です。

4) 我が国におけるリベラルアーツ教育

  主として戦前の旧制高等学校で行われ、戦後は、新制4年制大学の教養学部、文理学部など学部組織の他、教養部(教養課程・一般教養課程)などで行われてきました。1991年の大学設置基準の大綱化と共に、早期専門化や新名称の学部や新しい大学設置の風潮が高まり、東大をはじめとする数少ない大学が教養部を維持し、教養教育を続けました。
  近年グローバル化、創造力の時代に、再び教養力が見直され、バランスのとれた判断力のあるリーダーには、豊かな教養が必須条件になってきています。リベラルアーツ、教養、国際教養などの名称をつけた大学、学部も増えてきました。大学がレジャーランド化し、学生が勉強しない、読書しない、基礎学力が落ちたなど大学の質が問われる時代、教養の重要性は高まります。

5) 本学園のリベラルアーツ教育の具体例

  5つの力の養成から言えば、本学園の全ての授業、活動がリベラルアーツ教育に結びつきますが、教養に関する特色ある最近の活動を列挙します。

① 読書こそ教養のもと

  朝7時から開館する図書館(第三教育センター)、夜8時まで開館する自習室(高校2年以下は7時まで)、朝の10分間読書、読書を奨める冊子『市川学園100冊の本』、岩波文庫を全巻そろえた閲覧室、ネット検索の24台の最新PCなど環境は抜群。主役は生徒達です。英語原書も多数で、100万語読む運動も推進中です。

② 各分野の一流の講師による土曜講座(年間12-15講座)

  今年もノーベル化学賞受賞者の根岸英一先生をはじめ、東大理事、グローバル企業の会長経験者、元駐米大使、能楽師、国立博物館館長、国立公文書館館長、宇宙航空研究機構や民間会社の技術者、各大学教授など学界、産業界、官界、文化関連など多数の著名人にご協力いただいています。1時間強の講演後の生徒の質問も活発です。

③ 市川アカデメイア

  高2対象の古今東西の哲学書対話セミナー。モデレーター(進行係)、リソースパースン(助言者)は、教員と外部識者が務めるが、主役は生徒です。
  プラトン『クリトン』からE.フロム『自由からの逃走』まで年間6回12作品の要所を熟読し、生徒相互に対話をし、自分の意見の発表と共に他者の意見を聴き理解を深めます。最後に一つの作品を選び、小論文を書くことが条件で、希望制30名2グループで実施しています。

④ 外部講師による放課後の各種の特別講座

  「グローバル時代と君たちの未来」講座(高1)、EUについての講座、新渡戸稲造の「武士道」の講座(中3)、「イギリス史」講座(中3、高1;校長直接指導)など多数あります。

⑤ MOOC(ムーク、Massive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座)の活用

  世界の名門大学の卓越した授業を、情報教室で聴講し英語を使って中身を学ぶ授業。校長が直接指導。昨年は希望者に対し、東大村山斉教授の「ビッグバンからダークエネルギーまで」と藤原帰一教授の「戦争と平和の条件」を活用した授業を実施したが、今年度は、海外帰国生対象に正規の授業「英語表現」で、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の講義「正義論」を活用。新しい教育の形への期待は大きい。

⑥ 第二期のSSH(2014年度―18年度)

  SSHの目標である「卓越した理科教育と優れた科学者・技術者の育成」は、本学園では中学生を含めた理数教育、課題研究、授業研究であり、まさにサイエンス教養の土台となります。

B.5月度の学園の活動

1) 国際交流
① 4/26-5/4 博報財団児童海外体験プログラムによるベトナム(ホーチミン市)の中学校等訪問に中3生徒4名、教師1名参加
② 5/15 インドネシア・メダン市(市川市姉妹都市)視察団8名、総領事が学園訪問し、授業見学と施設見学。
③ 5/17-25 国際連合大学国際交流事業(中国政府日本教職員招聘事業)に教員1名参加。北京、貴州省貴陽市、上海訪問。小中一貫校、小学校、中学校、盲聾唖学校、文化施設など訪問交流。

2) 5/7 高校14回卒業生 俳優高橋英樹氏の講演会(市川グランドホテル、市政80周年記念)がありました。主催は「老後を安心して健やかに暮らす会」で、多数の市民と共に高校14回卒業生が多数聴講し、講演後旧交を温めました。若き時代の思い出話はつきぬものです。

3) 5/9 校外学習の日として、中2鎌倉、高1高尾山、高2筑波研究学園都市で校外研修。中1、中3は校内でスポーツ大会、高3は校内模擬試験とそれぞれ有意義な一日を過ごしました。

4) 5/28 本年度の中学入試説明会スタート。今回は、HPからの申し込みであったが、午前・午後合わせて約1,000名の小学校保護者来校。

  今年は、校長によるリベラルアーツ教育重視、SSH2期目指定、隣接新グラウンド建設予定、進学実績(国公立合格者166名で3年前の2倍、早慶上智理科大の4大学累計合格数が開成、豊島岡女子に続き全国3位、MARCHは全国4位)など話題が多い。

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