138.疑問と驚きこそ研究のはじまり・・・『われらの研究』に思う

warera2017.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

今年、創立80周年をむかえる本校は様々な事業を計画しています。その中のひとつに生徒の研究論文集『われらの研究』があります。この冊子は、市川学園の生徒の研究発表誌として長年続けられてきたもので、建学の精神である、自ら考え学ぶ『第三教育』の実践の一つです。創刊は1952年11月、創立15周年を記念して発刊されました。創刊号の巻頭で、創立者古賀米吉校長は次のように述べています。

「はてな、と立ちとまって、みなおすことがあり、考えなおすことがある。なぜそうなるのか、とあまのじゃくになってみたくなることもある。それからどうなる、と次から次へ、追ってゆきたいこともある。われらの心の生活は、何の疑問もなくすらすら流れて行くおめでたいものであってはならない。ことに若い人の心の生活は、疑問百出、突き当たったり、よどんだり、曲折きわまりないものでありたい。教師や学校は、生徒にけしかけて、おおいに疑問を起こさせ、深く煩悶させることをその任務とする。(原文)後略」

まさに建学の精神、『第三教育』の真髄を語っています。教師は一方的に教えるのではなく、生徒に考えさせ鼓舞し、時には悩ませるコーチ役ととらえ、生徒が自ら疑問をもち、考え悩み自分で学ぶ能動的学習・研究の大切さを唱えており、昨今の新しい教育を先取りしています。

およそ科学の進歩は、なぜだろう、不思議だなと疑問(?)を持つことからはじまり、その疑問の探究・理解・発見により驚き、感嘆・感動(!)し、更にまた疑問が深まることの連鎖の中から生まれてきます。世界は疑問や驚きに満ち満ちています。いや、分っていることのほうが極めて少ないのです。多くの素晴らしい発見・発明・理論の端緒は、20代、30代の若さから生まれてきているのです。

詩人のまど・みちおさん(1909-2014)は、『百歳日記(NHK出版、生活人新書)』の中で、「世の中に『?』と『!』と両方あれば、ほかにはもう、何もいらんのじゃないでしょうかね?」と、名言を述べておられます。

『われらの研究』は、戦後間もない1947年2月に発刊された校友会(生徒会)の冊子『松籟』(しょうらい;まつかぜ)を起点としています。『松籟』は印刷もままならぬ戦後の貧しい環境の中で、新しいことに挑戦しようとする生徒・教師のエネルギーを感じます。その後『われらの研究』に引き継がれます。

現在学園では、SSHをはじめ多くの課題研究、夏休みの研究、クラブ活動研究、なずな祭展示、口述発表会、校外の機関への応募論文や研究発表などを通じて研究発表活動が極めて活発です。

特に近年は、校外での発表活動が顕著で、外部評価が高いこともうれしい限りです。『われらの研究』のバックナンバーの中に、活躍する卒業生の青春時代の研究をみつけ、懐かしく思っています。

今回の80周年記念の『われらの研究』は、ここ数年の生徒諸君の膨大な研究発表や論文のなかから、全国的に優秀な成績を収め評価されたものを中心に、12編を選び研究論文集としてまとめられました。したがって12編以外にも多くの立派な研究や論文があることを知っておいていただきたい。

生徒諸君は、先輩・同級・後輩の作品をお手本として学びつつ、次は自分が研究発表の主役として、やってみようと思ってほしいのです。自分が考えたこと、研究したことを論文にまとめ表現することは、楽しいことであり、諸君が将来どんな分野に進もうとも、大切なスキル(技術)なのです。

他人の評価や指摘を受けることは、更なる自身の成長の励みにもなります。校外の広い世界での発表を通しての他流試合は、諸君を更に大きく成長させることでしょう。美術や音楽などの芸術の発表も同じではないでしょうか。

さあ主役は生徒諸君、この冊子を参考に、新しいことに一歩踏み出してみませんか。それこそが『第三教育の達人』になるための大切な一歩なのです。

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