152.働くということについて…教職員の働き方改革と生徒のキャリア教育

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市川学園理事長・学園長 古賀正一

昨今働き方改革についての議論が活発です。人間が生き生きと働き、質の良い仕事をし、達成感を味わい、仕事と家庭の両輪で幸福感を味わうことが理想です。教職員のように、専門性が高く自由裁量の大きい職業においても、長時間労働は、健康面、仕事の質や効率面からも好ましくありません。教職員個人ごとに、負荷が偏らないマネージメントも不可欠です。教職員がベストなコンディションで生徒に対応することが、卓越した教育の基本です。

教職員の働き方改革の視点は、労働時間、健康管理、生産性・効率性と教育の質、部活等授業外業務負担、教員の事務負担の軽減など考えるべきことは多々あります。労働時間だけに矮小化すべきではありません。

すでに文科省中央教育審議会諮問2017-6-22「学校における働き方改革」(①学校が担うべき業務②教員、職員、専門スタッフの役割③学校の組織マネージメント)が出され、「学校における働き方改革特別委員会」から、8月緊急提言、12月中間まとめが出されました。教師が担う業務の明確化・適正化、学校の組織運営体制の見直し、勤務時間、環境整備などがうたわれ、具体策は長時間労働抑制、学校外・地域のサポート、事務・部活指導員・カウンセラーなどサポートスタッフの充実、授業コマ数増への教員増などが検討されています。私立学校は、この動きを注視しつつも、一歩先行しなければならないでしょう。

当学園はすでに10年ほど前から、教員の事務負担軽減と教員の本来業務特に授業への注力を検討し、教員への支援を推進してきました。今まで学園がやってきたことの一例は次のとおりです。

*学校週6日制への変更に伴う指定休日制度の導入
教職員が日曜以外に休む曜日を個別に設定、木曜のみ全員出勤

*教員支援体制の強化
教務助手の配置、校門指導・駅でのバス乗車指導・施設整備などに教員OB・外部シルバー人材活用、理科助手・情報助手にそれぞれ複数名配置など

*教員業務の法人本部(事務室)への移管と支援
学年会計、生徒会会計、後援会会計、広報部支援、バス配車スケジュール管理支援など

*ICTによる業務改善
入試出願管理、教務・時間割・入試・進路・生徒情報管理、緊急携帯連絡網、保護者との電子メールネットワーク「なずなネット」

*ICTによる授業改善
能動的学習(AL)のためのALICE特別教室、中高全教室に電子黒板機能付きプロジェクタ配備、中学3年生高校1年生全員のタブレット活用、授業におけるICT活用のためのアプリ・コンテンツ整備

*部活ガイドライン改訂と部活の時間管理
最終下校時間、週休2日、休日休養日などを厳格に適用、非常勤講師への部活顧問委嘱、外部コーチの活用

*教職員の最終退勤時刻の遵守と校内機械警備、教職員の健康管理

*生徒・教職員の心のケア支援
カウンセラー(毎日午後配置)、教員・保健室・カウンセラーの連携ネットワークと情報共有

*早期定年退職と選択コース制導入

今後の課題としては、教職員の時間管理のさらなる徹底、部活顧問の更なる支援、教員の授業外業務、行事の見直し、教員業務の平準化(特定の人に集中しない)、次世代ICT計画と支援体制の改革推進などがあります。

一方働くということ、仕事の意義についても、教育の中で生徒を啓発指導しなければなりません。進路選択とは、まさに将来の仕事の選択の第一歩なのです。教育は、究極的には生徒が自らの特長を生かし自分らしい生き方を実現するため、自ら学ぶ力をつけ、適した仕事を見つけ、社会的・職業的に自立することを支援することです。

働くということは、いかに生きるか、幸せとは何かにも通ずるものです。このような視点で学園のキャリア教育(職業・仕事の教育)を進めており、特定のスキル修得を目的とするものではありません。

「働くということ」は、
第一に、生活の資を得て、自立し家族を養うこと即ち「金を稼ぐこと」
第二に、自分のやりたい事を仕事を通じて実現すること即ち「自己実現すること」
第三に、仕事を通じて、社会に貢献し人類の進歩に役立つこと即ち「社会貢献すること」

この三つが同時に実現することが理想です。実際は、最初は思うとおりに行かず、悩み、日々の仕事を通じて専門知識を身につけ、自分を鍛えてゆくことです。我慢することやり抜く力が不可欠です。日々の仕事の積み重ねからのみ、自分らしい生き方が実現できます。

生徒達は学問を学びながら、仕事や職業について知らねばなりません。そこで学園では、土曜講座、特別ゼミ、行事、国内外の研修などいろいろな場を設け、多くの人から学び、自ら考え体験し、広い視野を持つよう生徒を鼓舞してきました。昨年からは同窓会との共同で、「キャリアセミナー」を開いています。(なずなメッセージ147参照http://www.ichigaku.ac.jp/schoolinformation/nazuna/143-1/)

仕事とは働くとは何か、どんな業種・職種分野があるか、大学の学部との関係など、理系文系選択をする前の高校1年生に対し、OB・OGが多数来校し、直接後輩に話してくれるものです。具体的なプログラムは、まず仕事や分野の概要のオリエンテーションを行い、生徒たちは希望の分野のOB・OGと小グループで対話します。これを分野別の部屋を変えながら3回(3分野)くらい実行します。今年は6月に開催しますが、卒業生が先輩として、熱意を持って自らの体験を話し、親身に後輩の高校生を支援してくれる姿は、本当に美しく、有難いことです。

『この道より我を生かす道なしこの道を歩く(武者小路実篤)』

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