160.論理と情緒(サイエンスとアート)

2018 St Hilda's

2018年12月に来校した姉妹校St Hilda’s Collegiate Schoolの生徒と共に!

2019.01.08
市川学園理事長・学園長 古賀正一

新年を平和な中迎えられたことを、当たり前のことながら共に感謝したいと思います。災害にあい、病気や貧困に苦しみ、当たり前の生活のできない人が、国内・世界にはたくさんいることに思いを馳せたい。日常の当たり前の事が、本当に有難い(あることが難しい)時代です。

また禅の言葉に『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)という言葉があり、毎日毎日が素晴らしい、今この時が大切という意味があります。人は特別な変化や特別な行事があることに関心がありますが、平凡ではあっても一瞬一瞬を精いっぱいに生きる、その積み重ねが一日であり、一日の積み重ねが一年となり、充実した人生となる。そんな感じで日々を大切に、出会いを大切にしたいと思う新年です。

1.第4次中期計画の推進

今年は申すまでもなく平成の最後、親天皇即位、改元の年です。

改は、改革や改善のように、あらためる、新しくするという意味があります。学園は常に改革にチャレンジし、進歩と成長をめざしてきましたが、第4次中期計画は2年目であり、更に教育の質の充実、生徒の自主性の向上、生徒の目指す進学目標の達成、教職員の充実した新しい働き方改革などを推進します。

また中期計画の目標項目の一つに、『明るく活発で、風通しの良い職場風土』がありますが、今年はこの点にも注力したいと思っています。組織の壁をこえ、上下左右のコミュニケーションを更に活発にすること、組織の壁を取り払うことです。

当学園は、オープン授業、SSH発表会やアカデミックデイ、リベラルアーツ教育、土曜講座、教職員の自主的学びの会(茶っとルーム)など教科、学年の枠を超えての活動が多く、組織の壁を超える仕組みがたくさんあります。組織の壁をなくすには、教職員ができるだけ多くの校務経験をすること、積極的な情報共有が重要です。

 2.論理と情緒(サイエンスとアート)

現在は、グローバル、人生100年、AI時代で夢のある時代ですが、一方国際情勢、国内の政治・経済ともに不透明なことが多く、スピードの速い技術革新にも、一定のルールや倫理観が必要です。

ビジネスの世界では、近年の世界情勢を表すVUCA(ブーカ)という言葉があります。不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)の頭文字をとったことばです。VUCAの時代だからこそ、特に21世紀を存分に生きる生徒には、しっかりした基礎学力(理文にわたる広い教養)、自分で学び自分の頭で考え判断する力、新しいことに挑戦する意欲とともに、正しい倫理観と良識、真善美の感受性が必要です。

年末、知人から『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?・・経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周、光文社新書)を紹介されました。人も本も出会いです。

この本は行きすぎた論理性・合理性一辺倒の傾向に対し、感性と直感的な構想力が重要であること、近年欧米のビジネスマンは、従来型のMBAのビジネススクールではなく、経営に美意識をとりいれた美術系大学のMBAや早朝の美術館のギャラリートーク、哲学に関心が深く、サイエンスだけでなくアートが経営判断に重要になってきていることを指摘しています。共感するところ大です。

数学者の藤原正彦氏は、数学のような学問でも論理だけでなく情緒(美意識)が必要であり、創造性・独創性の追求には、知識・論理とともに情緒の重要性を早くから説いておられ、感銘を受けたことを覚えています。

日本の経営者もかつては、経営の学びとして、人間学(生き方の哲学)の学びを重視し、師について中国古典の貞観政要や十八史略などを真剣に読んだ時代がありました。昨今は日本アスペン研究所主催の古今東西の古典の対話型エグゼクティブセミナーも開かれています。いずれにしろ、経営判断や日常の決定の多くは、昨今のビッグデータや情報技術の支援により科学的・合理的に判断することが必要です。しかし高度な最終判断は、AIではできない倫理観や美意識(真善美)や直感にもとづく判断が重要なことは言うまでもありません。

学園では、5教科の重要性とともに音楽や芸術や家庭などの情操教育、更に道徳・倫理教育、哲学教育などさらに充実させ、その中で生徒の自主性や美意識を発揮させたいと考えます。結局は知徳体情操のバランスです。学園の羅針盤である第三教育(自ら学ぶ力)とリベラルアーツ教育(広い教養)は不変であり、更に磨きをかけたいと思います。

新年が平和で幸せな一年でありますよう、皆様のご多幸ご健勝を祈念いたします。

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