180.人間を支える3本の柱

                                                                                                020.09.01
hp200904市川学園理事長・学園長 古賀正一

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し続け、収束が未だ遠い段階ですが、コロナと共に経済も回さなければならぬ時代です。感染拡大防止か経済かの二項対立の議論は不毛で、知恵を絞らねばなりません。
教育も同じで、学園は感染症防止に十分留意しつつ、生徒の学習保障、授業の充実、学校行事の工夫をしてまいります。海外活動、集団での移動活動、宿泊活動など、今はできないまたは制約が多い中で、最大限の努力と工夫をする方針です。

9月1日から授業は通常になります。通学時の混雑を少しでも避ける分散登校を意識し、中高共に朝のHRは8時45分、授業は9時開始、50分6コマの授業で終業15時25分とし、下校時間は中学17時30分、高校18時で、コロナ禍の前と変わりません。
行事や課外活動も、3密を回避し感染防止に十分注意をしつつ、順次可能と判断したことから実行します。土曜講座、LA(リベラルアーツ)ゼミ、プレミアム講座、SSH課題研究の実験、部活動など拡大してまいります。

生徒も教職員も、学校の内外の友人・知人とのリアルな交流や集団活動には種々制約されますが、これは自分を守るためにも友人を守るためにも大切です。ICTのスキルとネットの活用は、有効な手段になります。まさにリアルとネットのハイブリッド(複合)が大切なSociety5.0(創造社会、超スマート社会)の実現が目標になります。
コロナ禍の中であぶりだされた日本社会の欠点は、ディジタル化、ネット社会の遅れです。教育を含め社会のあらゆる分野でのDX(ディジタル・トランスフォーメーション)が、加速される機会にしなければなりません。またコロナ禍の中で、自分がやれることを見出し実行するポジティブ(プラス)思考を持つことと、不満や無い物ねだりをして常に受け身なネガティブ(マイナス)思考を持つことでは、コロナ後に雲泥の差がつきます。
特にこの時期はネットの上手な活用と読書により自ら学ぶこと(第三教育)、自分が今できることを充実させることが重要です。一方今まで以上に家族や親しい人との時間を充実させることも大切です。

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さて私の好きな作家の一人に城山三郎(1927~2007)がいます。特に経済小説やビジネス小説の分野を開拓し、また歴史小説、伝記小説、随筆など多くの作品を残しています。城山は、作品を通じ、政治家や経営者などリーダーの生き方と共に、目立たないが素晴らしい人間の生き様などを書く極めて人間通の作家です。
異色の官僚を書いた『官僚たちの夏』、石坂泰三の世界を書いた『もう、君には頼まない』、広田弘毅がモデルの『落日燃ゆ』、渋沢栄一がモデルの『雄気堂々』、商社マンの左遷と定年を描く『毎日が日曜日』など、今も感動し学ぶことの多い作品が多々あります。

城山のエッセイの中に『人間を支える3本の柱』*という話があります。人間の生き方、特に現在のように不確実な時代こそ必要な示唆に富んだ話です。その概要を以下に紹介します。
ニューヨークの日本人の精神科医から聞いた話として、強く生きるには、セルフ、インティマシイ、アチーブメントの3つの柱が必要であること、柱が3本あれば、1本の柱が折れても、挫折や困難を乗り越えられるということです。
第一の柱はセルフ(self)の柱です。セルフ即ち自分だけの世界(個の世界)を持つことの重要性です。読書、音楽を聴く、絵を見たり描いたりする、一人でできる趣味、思索など個人だけで完結するする世界の大切さです。
第二の柱はインティマシイ(intimacy)の柱です。親近性という意味で、親しい人との関係、例えば家族、親しい友人や敬愛する先生、地域の人、自分を支えてくれる人々との関係を大切に親密にすることです。
第三の柱は、アチーブメント(achievement)の柱です。達成という意味であり、目標を持つことです。多くは自分の仕事での成果、本当にやりたいこと、生きがいです。事業の達成目標、進学の目標、学びの目標等もあります。

3本の柱をバランス良く太く充実させておけば、1本の柱が折れてもあとの2本が支えてくれる。人生では、親しい人との別れは必ずあり、インティマシイの柱が折れることがあります。そのときに第一のセルフの柱、第三のアチーブメントの柱が、支えてくれることでしょう。
また自分の目標が達成できない、思い通りにならない、病気の治療、仕事での挫折、進学目標が達成できない挫折などアチーブメントの柱が折れることもあるでしょう。そのときセルフの柱と共に、親しい人の支援即ちインティマシイの柱は、勇気を与えてくれ支えになってくれることでしょう。
「コロナと共に」の時代を乗り切るためにも、親しい友人との交流や家族との日常が大切なことを実感しつつ、目標達成のための工夫をし、個人でできる世界を充実させることが如何に大切かと思うこの頃です。
お互いに3本の柱を、更に充実させ豊かにしたいものです。

*(注)城山三郎『打たれ強く生きる』(日本経済新聞社)、 『逆境を生きる』(新潮社)講演録
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