30.第三教育の天才 南方熊楠 ~第60回高等学校 卒業式挨拶 要旨

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第三教育の天才 南方熊楠 ~第60回 高等学校卒業証書授与式 挨拶 要旨

理事長・校長 古賀正一

2008 3.7

425名の卒業生諸君、心をこめて卒業おめでとう。

学園の周りの梅も咲き、諸君の門出を祝福しています。
保護者の皆様、最愛のご子息は、ただ今市川高等学校を立派に卒業されます。心からお祝い申し上げます。
卒業生諸君、諸君は男子校として70年続いた本学園の男子学年の最後、いわば栄光の学年です。また市川高等学校第60回という節目の卒業生でもあります。

卒業は人生の一つの区切りであると共に、目標に向かい、新たな気持ちで諸君が出発する日でもあります。諸君は、学園で学び、友情を育み、様々な体験をしたことと思う。その全てが、今の君の人格をつくっています。
希望の大学に見事合格した諸君も、惜しくも再度チャレンジする諸君も、人生はこれからです。人生は長いマラソンにたとえられます。一度しかないかけがえのない人生、自分のやりたい目標、仕事、学問にチャレンジし、実力を蓄え、人格というものを磨いてほしいと思います。諸君は青春真っ只中だが、青春とは、実は年齢ではなく、自分の目標にチャレンジし、挑戦しつづける精神の若さをいうのです。

本校の建学の精神は、自ら学ぶ第三教育であり諸君はこの第三教育を十分理解し実践していると思う。自ら学ぶ習慣を身につけ、一生学び続けることを忘れなければ、必ずや世の中に貢献し、成功すると確信しています。第三教育で学ぶということは、本や講義だけでなく、汗水たらす仕事、友人との交流、協力やボランティア、毎日の活動、失敗など全ての体験からも学ぶということです。
つまりあらゆることが先生であり、師であるのです。70周年の記念で建立された第三教育塔のように高くより高く伸びていってほしい。

さて今日は、諸君の門出に当たり、日本の誇る科学者であり思想家である、南方熊楠(※)と彼の言った脳力(※ノウリキ)の話をしたい。
南方は自ら学び、考えぬき、物の本質を洞察する力を脳力といいました。彼はまさに本学でいう第三教育の天才です。
南方は明治維新の前年に生まれ、明治、大正、昭和と生きた博物学者であり、生物学、特に菌類の研究で有名であり、民俗学、哲学など関連する広い分野を追及した知の鉄人とも言うべき人です。英国留学中、大英博物館で53冊にわたる膨大な抜書き帳をつくり考え抜きました。独学で学び優れた研究論文をネイチャーなどに発表し、世界で評価されました。言葉も19ヶ国語を操ったといいます。
また当時では考えられないほど世界を歩き生命の本質を観察し、大きな世界観を持った巨人です。森の木が伐採されるのを憂い今日の環境運動のさきがけも作りました。東大を中退し、以来在野の学者であり続けた人です。南方熊楠の同窓には夏目漱石、正岡子規、本多光太郎、秋山真之などがいました。彼は脳力という物事を深く洞察し考え抜き、本質を正しく見抜く力を高めることに生涯努力しました。

この脳力は、本学の第三教育を極めることに通じると思います。今やインターネットなどにより、世界中の情報が瞬時に得られる時代です。情報は得てもそれだけでは価値がありません。
情報をもとに自ら考え、本質を見抜き、自分の意見を持ち、新しいことを創造することです。また昨今のメディアにのる多くの情報の真偽、正邪を良くみきわめ、諸君自身で考えを持つことが大切です。まさに脳力を鍛えることです。そのためには広い教養と深い専門、正しい倫理観を学び、身につけねばなりません。食糧問題や、地球温暖化の問題など、これからは自国だけでは解決できない時代です。個人も国も、自立とともに共生の時代であり、諸君の活躍の場は大きいと思います。志と気概をもってください。

最後になりますが、諸君は卒業に当たり、ご両親はじめ先生やお世話になった方々への感謝の気持ち、他人への思いやりを是非忘れないでほしい。人間は一人では生きられない、多くの人のおかげとご縁で生かされているのです。

市川学園はこれから更に卓越した教育を追求してゆきます。学園にとり諸君は誇りであり、諸君にとり学園は常に心のふるさとです。これからもいつでも立ち寄ってください。心から歓迎します。門出を祝し、諸君の将来が、希望に満ち輝くことを祈り、私の挨拶とします。

(※) 南方熊楠と脳力については、寺島実郎氏著『脳力のレッスン2』『20世紀から何を学ぶか(上)』、松居竜五氏著『南方熊楠一切智の夢』などに詳しい。

第60回 市川高等学校 卒業証書授与式

08年 3月4日(火)午前10時 卒業生 425名