54.本物に出会うことの大切さ・・・土曜講座 羽生善治永世名人に学ぶ

なずなメッセージ

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本物に出会うことの大切さ・・・
土曜講座 羽生善治永世名人に学ぶ

理事長・学園長
   古 賀  正 一

2010.3.1

 土曜講座は本学園の意義ある土曜日の特色です。教養教育、キャリア教育の一環であり、自ら学ぶ第三教育の重要な実践でもあります。勿論H22年度からの6日制においても、土曜日午後の土曜講座は続けます。平成15年からスタート以来、延べ170人以上の各分野の一流の方、活躍している卒業生などに来ていただいています。2月20日今年度最終土曜講座は、将棋の天才羽生善治永世名人に、王将戦の最中来ていただくことが出来ました。本校伊澤有一教諭とのご縁のお蔭です。生徒たちがその道一筋の本物の方の話を聞くこと、芸術でも本物の芸や作品に接すること、一流のスポーツ選手の試合を見ること、立派な人物に出会うことは極めて大切です。羽生名人は、厳しい勝負の世界で勝ち抜いただけあり、不惑寸前の若さにもかかわらず、春風駘蕩とした素晴らしい人格と識見で、生徒や保護者を魅了しました。講演は、国枝記念国際ホールで約1時間おこなわれ、講演後の生徒・保護者の質問にも30分丁寧に答えていただきました。更に将棋部の生徒と写真を撮り、色紙・著書にサインと言葉を書いていただきました。

 講演は、『現代に生きるとは』と題し約1時間、厳しい勝負の修羅場を何度も潜り抜けた本物の人生体験がにじみ出るお話でありました。講演における羽生語録のいくつかを挙げます。

1、将棋の歴史;古代インドの戦争好きの王様のために作られたボードゲーム。西に行きチェスとなった。チェスには、戦争用語が多い。ボードゲームは一国一つあるほど種類が多い。日本には1000-1500年前に到来し将棋の源流となった。

2、直感について; 将棋の次の手は、80手くらい考えられるが、直感で77手は捨て、残りの2-3手を深く考え読み一手を選ぶ。直感は、写真のピントを合わせるプロセスに似ている。脳科学では、直感とひらめきは区別。直感は論理立て説明可能。ひらめきは理屈ではない、虫の知らせのようなもの。直感は日々の研鑽と練習で磨かれる。直感と読みと大局観(方向性、大きな方針、木を見て森を見る)が大切。棋譜は楽譜のようなもので、まとまりとして覚える。覚えるコツは五感を駆使する。集中力が重要だが、6時間が本当に集中できる限度。運とつき、バイオリズムも大切。不調のときは気分を変え、生活習慣を変えてみる。

3、メンタルな強さは、経験をつむこと; 修羅場を潜り抜けることとある程度年齢がたつことにより生まれる。努力してマスターした経験は役に立つ。結果だけでなくプロセスは無駄にならない。

4、変化の時代、インターネト情報化時代、良い手や作戦は必ず真似される。それが市場原理である。いくら過去の棋譜、定石を勉強しても、そこから脱する創意工夫が大切。

5、日本は、小さくコンパクトにまとめ表現すること、細かいことが得意。将棋も他国よりコンパクトで盤が小さい。アニメ、俳句、短歌、半導体、言葉遣いなど全てコンパクトが日本の特技。

6、ミスの話;1年50-60試合して、ミスなしは1-2回。大切なのは、ミスして更にミスを重ねないこと。ミスや失敗から早く脱却すること。

7、結果が全てではない。過去のことをあまり振り返らない。これからどうするかが大切。どんどん忘れることも大切。

最後に色紙と著書に書いていただいた言葉は、

『玲瓏』 (すきとおるように美しく輝く様)

であり、まさに達人の境地でありましょう。羽生名人は、小さい頃大山康晴名人の講演を地元八王子で聞き感動し、将棋を志すことを決意。但し内容は覚えていないとのことです。本物に出会うことの大切さを感じます。

 土曜講座に、過去登場いただいた方々のほんの一部を列挙します。(役職他は、講演当時の呼称、敬称略、順不同)

 児玉清(俳優・司会者)、小平桂一(すばる開発者、総合研究大学学長)、谷川俊太郎・賢作父子(詩人、ピアニスト)、中村桂子(JT生命誌館館長)、大竹美樹(アフラック創業者)、鈴木義信(日本野球連盟副会長)、近衛忠煇(日本赤十字社副社長)、小川誠子(女流棋士)、岡田武史(横浜Fマリノス監督)、渡邊顕(弁護士)、中津攸子(作家)、後藤忠治(セントラルスポーツ社長)、岡野光夫(東京女子医科大学先端医学研究所長)、吉田和子(旧姓沢松、テニスプレーヤ)、佐々木正峰(国立科学博物館長)、永井和之(中央大学総長・学長)、広瀬喜久男(JOC名誉委員)、湊正子(東京女子大学学長)、吉越浩一郎(トリンプ・インターナショナル・ジャパン元社長)、伊藤洋(東京医科大学理事長)、松本孝利(アカデミーキャピタルインベストメンツ代表取締役)他多数。