62.教育は国境を越える

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教育は国境を越える

理事長・学園長
    古 賀  正 一

2010.12.1

 グローバルな時代、残念ながら日本の若者が海外に関心を持ち飛躍する数が減っており心配です。

 日本は、明治以来1980年代まで、先進の欧米諸国に追いつけ追い越せの『キャッチアップ』の時代でした。西欧から必死に学び、学問・技術も制度・法律も教育・文化も導入し、咀嚼し日本方式を創出しました。1990年代からITが普及、情報は国境を超えボーダレスとなり、日本も先進国として新しいことを創出し世界を引っ張る『クリエート』の時代になりました。今や、中国、韓国、東アジア諸国、南米やインドなどかつての発展途上国も欧米や日本をめざし、ある部分では日本を追い抜く時代です。 

 かつて日本のリーダー達は諸外国でも尊敬され、新渡戸稲造は「武士道」を、岡倉天心は「茶の本」を英文で最初に書き世界中で出版されました。しかし、現在は特定の日本人だけでなく、あらゆる職業の人が、世界の事実上の標準語(デファクト・スタンダード)である英語を駆使し世界の人々と交流しなければならぬ時代です。インターネットでの検索やメールでの交信も英語を使いこなさなければ不利になります。教育も国内だけでなく世界を視点に考え、教育そのものが国境を越える時代です。

 国際ビジネスにたずさわった小職の経験から、国際的に活躍するには次の4点が重要だと思っています。

1.コンテンツ(中身); 自分の専門について深い知識を有し、他国や他社が学ぶものを持っていること。(ビジネス、技術・研究いずれも)

2.教養とマナー; 日本及び世界についての理解と教養。これはまさに中学高校の教育が基本。またマナーや態度、良識は不可欠。挨拶、応対辞令のできない人は外国でも相手にされない。

3.人間力と人間的魅力; 他人とコミュニケーションできる能力。英語以前の問題で、積極的に発言し人と交流できること。更に他人を思いやる気持ち、異質を受け入れる能力も必要。更に健全な体と意志、打たれ強いこと。

4.ツールとしての英語力; 意思の通じる英語力を身につける。即ち相手の言うことが分かり、相手に理解させる英語であること。母国語でない英語ゆえブロークンで十分。勿論専門分野の資料・論文は十分読みこなせること。人を介さず英語の手紙・メールが書けること。

 このように考えてくると、当学園での教育方針である自分で学ぶ第三教育、中高時代の各科目の基礎知識、人間教育としてのしつけが基礎力として物を言います。その上でツールとしての英語を好きになり、十分に身につけ、チャンスを見つけ使うことが重要です。英語について以下コメントします。

1.中学時代から英語に親しみ好きになること; 授業内容を十分理解すること。学園では『市川の英語』としてシラバスを組み立て、授業を工夫している。読み、書き、聞き、話せる英語をバランスよく身につけること。

2.外国人と接触し対話の機会にチャレンジすること;オーラル・コミュニケーション(OC)の授業や予約制英会話、さらには英語シャワー(集中的に英語を話す合宿)や海外語学研修(カナダ、イギリス、ニュージーランド)などで積極的に英語を使ってみること。SSHの英語での発表、英語スピーチコンテスト、英語デイベート大会など英語の他流試合に臨むこと。SSHの海外交流などを通じて他国との交流事業を積極的に進める。

3.受験勉強の英語は役に立つ; 長文読解を通して多くの語彙を身につけ(Input)、エッセー作文などで英語を使う(Output)。大学や社会で原書や資料を読み、英語で論文を書くことにも通じ、深い語学力が身につく。

4.帰国子女; 中学では英語に力点を置く帰国生入試を実施。また、帰国生を対象に特別英語授業も実施。学園の活性化に通じる。勿論帰国子女以外も英検2、準1級取得を目指す。

5.進学のグローバル化; 高校で短期留学を目指す生徒も増えている。進路目標も直接海外の大学をねらう生徒も出てくる。

6.教職員の英語授業研究; 英語での授業をInput型(教え込む授業)からOutput型(できるだけ生徒に英語を使わせる授業)に方向転換をめざし、ネィティブ教師とのティーム・ティーチング,公開授業などで教員が切磋琢磨。千葉県の私・公の有力校との『英語指導法研究会』を学園が幹事校として積極的に実施中。古賀研究基金で教職員の研究、海外研修も実施。

 高等教育(大学)も国際化の動きは急です。一部の大学や大学院では英語での専門科目授業を増やしていますし、1年次に集中的に英語力をつけ、2年次に留学を義務付ける大学もあります。グローバル30という海外留学生を多く受け入れ国際化を推進する政府プロジェクトもあります。

 教育はおよそ国内問題と考えられていましたが、海外の授業もどんどん入ってきますし、海外の教育を知った学生や留学生も入ってきます。教育も国境を越えます。昨今人気のハーバード大学マイケル・サンデル教授の政治哲学”正義”のような授業が、世界中で聴講・参加できる時代です。

  市川学園は、『国際的に活躍できる品格あるリーダーの育成』を目標として、種々の改革を続けています。