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2025.04.30理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#233 第三教育伝道者の発見

2025.5.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 新年度をスタートし、1ヶ月が瞬く間に過ぎました。新入生も学園生活に慣れ、明るい声が校内に溢れています。25年度は、第5次中期計画の最終年度としての検証の年であり、第6次中期計画(2026年度~29年度)を計画する年です。また2027年度には創立90周年を迎えます。
 4月9日の入学式は、満開の桜の花の中、中学生329名、高校生441名の新入生を迎えるにふさわしい日となりました。

 高校入学式での小職の挨拶の要旨を記します。

 『本学園は88年前の1937年4月15日創立者である古賀米吉先生と関係者の熱意で開校しました。英国イートン校などパブリックスクールの自由と規律、紳士の精神を模範とし、優れたリーダーの育成を目指す高い志でした。すでに4万人を越える卒業生を輩出し、多くの分野で活躍しています。建学の精神は、生徒一人ひとりの特色を良く見て伸ばそうと言う「なずな教育」と生徒が自ら考え学ぶ「第三教育」です。第三教育は、現在の能動的学習や学びなおし教育などを含む自分で自分を教育する生涯続く学びの王道です。第三教育の中心は読書です。紙の本をしっかり読み、考えることが、脳のためにも重要です。高校生活で皆さんに期待することを2つ話したいと思います。
 第一は、「自分の将来の目標を探してください。」
自分が本当にやりたいことは何か、如何に社会や世界に貢献するか、幸福とは何か、つまり「いかに生きるか」という問いを、深く考えてほしいのです。自分の本当にやりたい将来の目標を探究して下さい。悩むことも重要です。
 将来どの分野に進むにしても、本校のリベラルアーツ教育を通じ、基礎学力と広い教養、人間としてのマナーやモラルを身につけることは不可欠です。
 また日本の大学の多くは理系、文系と分かれていますが、これからは理系・文系双方の知識が必要になり、広い教養の上に深い専門を持つ時代です。学問領域の境界や異なる分野の連携から新しい研究や新しい事業など、画期的な成果が生まれています。
 一方昨今の生成AIなど極端に速い開発には、倫理的・安全性の検証や制御が必要になるでしょう。洪水のように押し寄せる科学・技術の発達を人間が良い方向に導くべきだと司馬遼太郎は、すでに「21世紀に生きる君たちへ」の中で指摘しています。
第二は、「楽しい学園生活を通じチャレンジしてください。」
楽しい学園生活は、学びと活動を通じて日々自分の進歩・成長を実感すること、友人や先生との人間関係を豊かにすることが基本です。授業、行事、クラブ活動はもちろん、自分で選択できる沢山のメニューにチャレンジしてください。土曜講座、国際研修、市川アカデメイア、SSH課題研究、リベラルアーツゼミや多く特別講座があり、更に各種外部イベントやコンテストなど他校の生徒と切磋琢磨する交流もあります。
 まずは「何でも見てみよう、何でもやってみよう」というチャレンジ精神で参加することが大切です。皆さんは、今青春まっただ中です。しかし本当の青春とは、米国の詩人サミュエル・ウルマンが言うように、実は年齢ではなく、積極性や好奇心つまり心の若さなのです。何事にも意欲的にチャレンジし、本当の青春を楽しんでください。
 今世界は戦争・紛争・災害が絶えず、大きな変化の中、こうして平和で平穏に入学式を行えることは、有難いことです。地球という惑星の中に生きる我々人間、すなわち賢い人と命名されたホモサピエンスと言う種は、生きものの一つであり、他の生きものや自然と共に生き、生かされている存在です。賢い行動で一刻も早い真の世界の平和と共存共栄を祈念します。』

 最後に新しい発見をしました。
 今年一橋大学の経済学部に入学した生徒の父親から、下記のメールをいただきました。『晴れて念願の一橋大生になることができ、親子ともども4月6日の入学式を心待ちにしています。昨日、新入生向けのガイダンスビデオを見たのですが、経済学部長の黒住英司教授は、市川高校のOBではないでしょうか?なぜなら、新入生へのメッセージとして「主体的な取り組み姿勢として第三教育という考え方」を勧められていたからです。(教授ご自身が通われた高校での教えということで紹介されています。) もしOBでしたら、大学でも先輩にあたる先生から教えを受けることとなり、つくづく不思議な縁を感じております。』早速ビデオメッセージを拝聴し、高校40回の卒業生であることを確かめ、黒住学部長に手紙を差し上げたところ、丁重な返信をいただきました。
 『新しく経済学部長に就任し、真っ先に伝えたいと思ったのが第三教育のことでした。自分による自分のための教育は、教育課程が上がるほどに重要性を増してくると思います。研究者にしても社会人にしても意識しているいないにかかわらず、第三教育を実践しているものであり、その素地は中学・高校で準備を重ね、大学でもより積極的に意識して第三教育に励んでもらいたいと思っています。』(要約)
 第三教育の達人、伝道者である卒業生の嬉しい発見でした。つくづく人生は、「ご縁とお蔭様(出会いと感謝)」の積み重ねだと感じました。