2026.4.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
3月は別れの季節であり、新しい出発への準備のときです。3月4日には、第78回高校卒業生417名の卒業式(卒業証書授与式)を、田中甲市川市長、二川則義同窓会長、野村あずさ後援会長をはじめ、多くの来賓にご臨席いただき、厳かな中にも和気あいあいとした雰囲気で、無事に挙行することができました。学年主任・担任を先頭に入場する卒業生を拍手で迎え、君が代斉唱、理事長・学園長挨拶、市川市長挨拶、卒業証書授与、賞状賞品授与、校長式辞、同窓会会長挨拶、祝電披露、卒業生からの記念品目録贈呈、卒業生への記念品贈呈、卒業生謝辞、卒業の歌「旅立ちの日に」を保護者に向けて合唱し、最後に校歌斉唱で式を締めくくりました。その後、卒業生の退場を見送り式典を終えました。毎年のことながら、感動する時間です。午後には、後援会・卒業生主催の謝恩会があり、お世話になった先生方(学園幹部、学年教職員ほか)への感謝の言葉と記念品贈呈、学園生活での思い出の映像、余興、合唱「3月9日」など、短時間でしたが充実した心のこもったひとときでした。
中学は99%が市川高校に進学する(内進生)ので、卒業式でなく修了式としています。23日の終業式の日に、國枝記念国際ホールにて、理事長挨拶、卒業証書授与、校長祝辞を行い簡素ながら心を込めた門出を祝う式を行いました。
さて、作家の司馬遼太郎は晩年「二十一世紀に生きる君たちへ」(注)というエッセイを、小学校6年の教科書(大阪書籍:小学国語下)に書きました。
技術革新のスピードが速く、自国第一・自分第一主義、対立と分断が続く今こそ、価値あるメッセージであり、その要旨を以下に記します。
1.空気・水・土など自然こそ、不変の価値であり、人間は他の動植物とともに自然に依存しつつ生き、生かされてきた。
2.人間は古代でも中世でも自然こそ神々とした。自然をおそれ身を慎んできたが、近現代になり人間こそが一番偉い存在だと思いあがってきた。
人間は自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされているという素直な態度こそ希望であり君たちへの期待である。
3.君たち自身のことである。人間は、自分に厳しく、相手にやさしい、素直で賢い自己を確立しなければならない。
4.21世紀は科学・技術がもっと発達するが、洪水のように人間をのみこんでしまってはならない。人間が科学・技術を支配し、良い方向にもっていってほしい。
5.人間は孤立しては生きられず、社会という支え合う仕組みを作っている。人間は自己中心でなく支え合う存在であり、助け合う、いたわり、他人の痛みを感じること、やさしさが大切である。これらは本能ではないので訓練が必要である。これがしっかり根づけば、他民族へのいたわりも湧き出る。
6.君たちは自己を確立し、魅力ある頼もしい人間になってほしい。君たちの未来が真昼の太陽のように輝いていると感じた。
(注)掲載本:「十六の話」(中央公論社)、「二十一世紀に生きる君たちへ」(司馬遼太郎記念館)および(朝日出版社)
司馬さんは、21世紀を背負う若者へ、頼もしくたくましい強さを持った人間であるとともに、自己中心でなく、やさしさ・思いやり・人の痛みを感じ、生かされているという謙虚な気持ちを持たねばならないと言っています。
今、世界では戦争や紛争が収まらず、むしろ拡大・エスカレートしています。力こそ正義、強ければ何をやってもよいという風潮が広がり、民主主義・法の支配・基本的人権が危機にあります。これが本当の強さなのか、いま真の強さとは何かを考えてみる必要があります。
奇しくも、今年の東京大学の入試における英語問題2(A)は、下記の通りでした。
「以下の問いに、60~80語の英語で答えよ。What does it mean to be strong?」
まさに知識でなく思考力を測る問題であり、強いとは何か、単なる肉体的な力ではないものとして、「強さ」や「弱さ」、他者との関係などを理解し論じる問題です。
正解はいろいろあると思いますが、強さの定義、具体的内容が必要でしょう。
回答として、「強いとは、単に身体的な力や恐れを感じない力を意味しない。真の強さとは、困難に正直に立ち向かい、あきらめず、自分の弱さを受け入れ、失敗しても努力を続ける力にある。また、強い人は、他者を理解し、特に弱者を支える。困難にあっても忍耐と勇気を示す。強さとは他者を支配することではなく、共感すること。逆境でも助け合うことである。」など考えたい。
強さを示す有名な言葉として、下記の言葉を思い出します。
「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。」米国の作家レイモンド・チャンドラーの小説プレイバックの中で、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウに言わせた名言です。 以下が原文です。
「 If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」
2026.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
2月は入試の季節であり、高校3年生は志望大学の個別試験にチャレンジを続けています。自分の掲げた目標をあきらめないでほしい、人生は長い、回り道も失敗も可能、「Never Give Up」の精神で頑張ってと応援しています。
一方、中学・高校の入試も終わり、10日の中学入学ガイダンスおもって入学者が決まりました。お蔭さまで、今年も定員320名を超える多様な特色ある生徒を入学式に迎えることができます。心から歓迎したいと思います。高校につぃては、3月13日高校入学ガイダンスで最終入学者が決まります。
また、2026年度に向けて、人事体制(校務分掌)や予算編成の作業が行われました。予算は新しい人事体制のもと、27部門で具体的内容を検討し、その集積として2026年度予算案がつくられ、3月の理事会・評議員会で決定されます。また、第6次中期計画の取りまとめも行われました。予算編成は単なる見込みや目安ではなく、各施策の具体的内容(何を、いつ、いくらで)が大切で、まさに「実行の意思」であり経営の根幹です。
さて、8日の衆議院議員選挙により政治のかたちが決まり、政策の迅速な実行を期待するところですが、何より大切なのは資源である「人財」です。教育・研究の予算を充実させ、決めたことを確実に実行してほしい。今後の国力向上には、一人当たりGDPの増大、生産性の向上、創造力の発揮が不可欠です。公教育の一翼を担う私学への補助・助成を、より一層確実に強化していただきたいと念願しています。
私学の中等教育(中学・高校)は、国と都道府県の補助金(交付税と単独の補助)があり、これが学校収入の約30%、残りの約70%は学納金によるものです。私学助成が法律で規定されたのは、昭和50年の「私立学校振興助成法」であり、さらに平成18年改正の「教育基本法」第8条私立学校の項で、「・・・国及び地方公共団体はその自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。」と明確に規定されています。
当学園も補助金に依存しつつ、良い教育の提供のためには収入増が不可欠であり、入学年度から授業料増額をお願いしてきました。諸物価上昇の折、今後とも教育の質の維持・向上のためには増額が必要です。高校授業料の無償化は保護者にとって極めて重要です。
一方、支出(人件費と経費)については、無駄の排除、種々の削減の努力を続けるとともに、教職員の処遇改善、必要な残業料負担で人件費は増大しています。また、経費については、物価・人件費の上昇、環境の整備・維持管理に多くの費用が掛かりますが、施策の実行を先送りすることはできません。
学園の教育・経営で重視していることは、
1.不易の建学の精神をさらに進化させ実践・・独自無双の人間観(多様性)、なずな教育(個の教育)、第三教育(自ら学ぶ力)
2.教育の基本を大切に・・リベラルアーツと5つの力(人間力、学力、教養力、科学力、国際力)のさらなる進歩
3.安定的経営と持続的発展・・世の中の変化に対応できる力、財務力、生徒・保護者から選ばれる力(定員・募集人員の確保)
4.時代の変化に合った卓越した教育の実践・・個々の生徒の進歩・成長、第三教育の達人の育成、教職員の学び・研究の活性化
5.卒業生の活躍と社会貢献・・同窓会の伝統と活性化
6.経営のガバナンス・・理事会・評議員会による秩序と進歩
具体的実行ステップは、
1.4年単位での中期計画を立て、その目標に基づいて年度計画を作成し、各部門でPDCA(計画・実行・チェック・次の行動)サイクルを実践する。
中期計画は今まで5回実行しており、来年度からは第6次中期計画(2026年度~2029年度)となる。
2.中期計画に基づき、年度初めに各部門からの計画発表、年度末には評価を行い次年度計画実行へ。日常の意思決定・情報共有は毎週水曜日の教育経営会議で行う。
また、各部門代表者による主任・部長会議・課題別会議を適宜行う。日々の指示、情報共有は、毎朝教職員室で行う短時間の全体朝礼・各学年別朝礼、メール等に
より徹底する。
教育の質は、教職員の質の高さであり、下記の事項を重視しています。
1.行動指針・・誠実と気概、風通しの良い明るい風土(活発なコミュニケーションと挨拶)、課題解決に知恵を出し合うチームワーク
2.Well-being(幸福)・・身体・心・社会的健康
3.深い専門力、広い教養、人間力・・研修・研究を奨励、初任者研修、公開授業、教科別研修、教科を超えた研修、外部研修、全員研修(年3回)を実施
4.研究の奨励・・古賀研究基金による研究費助成、紀要の発行
5.危機管理対応・・安全はすべてに優先、現場判断の重要性と迅速な報告・連絡・相談
「学びの共同体である市川学園は常に進歩する・・創立90周年に向けて」
2026.2.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

1月は始業式から始まり、高校入試は17日、中学入試は20日(幕張メッセ)に行われました。受験生が十分に実力を発揮できるよう、毎年のことですが万全の準備を整え臨みました。中学2回目入試は、2月4日に行われます。高3生は、17日・18日の大学入学共通テストを終え、個別大学の二次試験に向けて力を注いでいます。
最近は私立大学の一部では、学校推薦型選抜や総合型選抜で早期に合格者を確定する傾向が見られますが、国公立大学では一般選抜(入試)が中心です。当学園でも一般選抜にチャレンジする生徒が多数おり、これからがまさに正念場です。
そのような中、大変うれしい知らせがありました。高3生N君が、受験勉強と並行して日本政策金融公庫の第13回「高校生ビジネスプラン・グランプリ」(応募数639校5640件で過去最多数)にチャレンジし、共通テスト直前の11日東大伊藤謝恩記念ホールで行われた最終審査会(10のファイナリスト)において、「探究心に、翼を!研究マッチング【Re:Search】」(大学の研究室と高校生のマッチングサービス)というプラン名で堂々と発表し、見事に準グランプリ(2位)を受賞したことです。彼は多様なチャレンジを行い、自分の可能性を追求しようという素晴らしい人材です。自分が本当にやりたいことを、あきらめずに多様なチャレンジをすることの重要性を改めて感じさせてくれました。
さて、1月には各業種で活躍する卒業生が集まって学ぶ会が行われました。(古賀塾と称しています)。既に10年以上23回行われ、卒業生であれば誰でも参加できます。冒頭に私が話をし、その後講演者(会のメンバーまたは外部講師)による講演と活発な質疑応答を通して互いに学び合います。
テーマの一例は、「人生は運・鈍・根」、「企業法務の仕事」、「日系企業の海外シフトと物流企業の対応」、「商社の多様な仕事」、「俳句の楽しみ」、「働き方改革」、「漫画市場の変遷と今後の展望」、「民間企業から千葉市動物公園の園長へ」、「生成AIを使いこなそう」、「社会実装が本格化するロボットとAI」、「東洋医学と西洋医学について」、「税理士と税について」などきわめて多様です。その後の懇談会も、楽しい交流のひと時です。
また、「生き方読書会」という保護者、教職員、卒業生、地域の方々が集まり指定読書(関係者で選ぶ)の感想を述べ合う会があります(幹事・まとめ役:学園評議員・カウンセラー)。この会は、30年近く続いており、かつては月に1回程度、年間12冊を学園に集まって学び合ってきました。コロナ禍以降は、幹事が各自の感想文をネットで集め、まとめてネット配信する形で続けられてきました。今は年6冊ほどを読んでいます。最近1年間に取り上げた書籍の例としては、「人類はどこで間違えたのか(中村桂子;中公新書ラクレ)」、「生きて死ぬ智慧(柳澤桂子;小学館)」、「みんなで読む源氏物語(渡辺祐真;ハヤカワ新書)」、「ホーキング、宇宙を語る(スティーブン・W・ホーキング;早川書房)」、「100分de名著:アリストテレス ニコマコス倫理学(山本芳久;NHK出版)」、「民話集:人はなんで生きるか(トルストイ;岩波文庫)」などがあります。
市川市をはじめとする各地域社会には、研究会・勉強会・読書会など学び合う場は多く且つ盛んです。社会人教育の一環として行われているこれらの活動は、まさに「第三教育」です。人生100年時代において、このような会のメンバーになったり、講師になったりすることは極めて重要だと思います。
「少にして学べば、即ち壮にして為すこと有り。 壮にして学べば、即ち老いて衰えず。 老いて学べば、即ち死して朽ちず」
(佐藤一斎『言志晩録』60条;講談社学術文庫 川上正光訳)
2026.1.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
新年おめでとうございます。
今年こそ、世界が平和・平穏な年となり、日本が他国とともに自由・平等・民主主義を守れる連携が深まり、多くの国との交流がさらに進むことを心より祈念します。

昨年も生徒たちの活動が非常に活発な年でした。その一部を紹介します。
・トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム 12名合格(全国2位)
・かるた同好会2年連続全国大会出場
・高校ハンドボール部インターハイ出場
・陸上競技部高2生がインターハイ2冠(200m、400m)、国民スポーツ大会で優勝(少年女子A 300m)
・中学男子硬式テニス部が団体・ダブルス個人で関東大会出場
・高2生が国際生物学オリンピックの日本代表候補者(12名)に選抜
・科学の甲子園ジュニア 全国大会において総合優勝
・高3生が日本政策金融公庫主催ビジネスグランプリの最終選考の10組(ファイナリスト)に選抜

また学園での多くの新しい取り組みが行われましたが、下記は一例です。
・国際研修プログラムに新しく東南アジア(タイ・マレーシア)研修加わる
・中3・高1イートンカレッジ研修の復活、SSHドイツ交流プログラムの復活
・シェアサイクル ステーション北門前駐輪場に30台設置
・全HR教室および北館第5~第7多目的室にAppleTVを常設
・教職員室カーペット更新、教室の照明 LED化完了、全教職員PCの更新
今年は、2027年の創立90周年に向けての準備の年になります。既に同窓会、後援会、学校法人による運営委員会が発足し、学内のプロジェクトチームも開始し、募金活動もスタートしました。
90周年記念事業の概要は、下記の通りです。
*教育施設整備事業
第三教育センター(図書館)を拠点に拡充し、自学自習、探求学習、協同学習など、多様な学びに向けた機能空間(個人ブース、対話スペース、自習室空間など)を校舎全体に展開する。
併せて、学園の足跡を顕彰し継承するため市川学園歴史センター、古賀教育センター等を統合整備・改修し学園ミュージアムをつくる。
第三教育を基点(Base)とする教育(Education)と学び(Learning)を通じて、鐘の音のように美しく輝く未来を担うリーダーの資質(Leadership)を育みたいというコンセプトに基づき、プロジェクト名を「IG-90 BELL Project」とした。
*研究・出版事業
90周年の歴史と伝統に裏付けされた学園教育に立脚した研究成果を、様々な視点から発信し将来の財産として活用し、学園ビジョンの実現を目指す。
90周年記念誌、理事長著作、教職員研究紀要、生徒論文集 SSH研究成果集、進学資料など
*記念行事
国・県・私学関係者、学園の支援者・関係者への感謝を込めた行事、生徒のための行事などの様々な記念イベントを実施する。
記念式典、祝賀行事、記念講演会、記念芸術鑑賞会(海外団体招聘)など
*募金
多くの個人、法人にお願いできるよう、一口5,000円とし、一定額以上の寄付者に対しては、國枝記念国際ホールの各座席にご芳名の銘板を貼付け、メモリアル・サポータズ・シートとして長く保存させていただく。

さて1月~2月は試験の季節、高3生は大学入学共通テストや個別大学入試に向かい、一方学園の高校・中学の入試が始まります。
一人一人がベストな状態で受験できるよう最善の準備をしています。
大学入試も高校・中学入試も人生のすべての試験(社会人になれば日々が試験かもしれません)も、合否、成功・失敗は僅差であることです。特に入学試験では、たった数点の差で合否が決まる場合が多々あります。だからこそ、最後まで「あきらめない」ことが重要です。また僅差の勝負では、体調が重要で、健康管理、食事をしっかりとることを重視してください。
一方人生は長く、1回や2回の失敗や思うように行かなくても、自分の目標、自分の好きなことは「あきらめない」でほしい。目標への道は多様、遠回りもOKです。この点でもNever Give upです。
日本経済新聞文化面「私の履歴書」には、各界のトップや有名人の人生が語られています。いわば成功者である方々ですが、順風満帆ではなく、挫折やどん底から這い上がった個人の歴史が、ご本人の言葉で書かれています。成功したのは、最後まであきらめなかったからであることを強く語っています。
受験生の皆さん、Never Give Up、最後まで「あきらめない」でください。多くの人が皆さんを応援しています。