2025.8.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

2025.7.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
6月は、芸術鑑賞会が国枝記念国際ホールで2日間3回に分けて行われ、中1~高1、高3の生徒全員が、シェイクスピアシアターによるシェイクピアの喜劇「十二夜」を鑑賞しました。高2はJR東日本四季劇場「春」でミュージカル「アナと雪の女王」を楽しみました。芸術鑑賞会は、校内外で年に一度、本物の芸術に直に触れ、芸術を楽しむきっかけになるとともに、鑑賞マナーを身につける貴重な行事です。また中2の体育大会(中1は11月実施予定)は実施できましたが、中3は猛暑のため中止し、2学期に再検討することとしました。この夏は行事、部活ともに熱中症対策をしっかりとり、必要により勇気ある中断や中止の判断が求められます。高1は軽井沢宿泊研修を実施し、有意義な2泊3日を過ごしました。また同窓会による高1希望者に対してのキャリアセミナーが対面で行われ、各業種のOBOGと親しく話し質問することができました。
*市川学園で誕生したサード長嶋
6月3日ミスタープロ野球の長嶋茂雄氏が逝去されました。心からご冥福を祈ります。1953年6月、県立佐倉一高(現在の佐倉高校)、県立船橋高校と本校の3校による練習試合が学園グラウンド(現第1G)でおこなわれ、当時の高2・高3の野球部員(高校6回、7回卒)が出場しました。特に長嶋選手との対戦は、野球部OBにとって忘れられない思い出になっています。
実は長嶋さんが国民栄誉賞を受賞された2013年、当時の佐倉第一高校の監督だった加藤哲夫氏から、当時の試合のスコアブックのコピーを頂き、直接お話を伺いました。第一試合の船橋戦で主将4番ショート長嶋選手が、打撃は素晴らしかったが4失策し2-5で敗れ、監督は熟慮決断の上、第二試合の市川戦で初めてサードにまわし、その後のサード長嶋のスタートになったとのことでした。残念ながら市川は3-5で佐倉に敗れました。
(参考資料;毎日新聞13-6-11、日経新聞07-7-4私の履歴書:長嶋茂雄④、当時のスコアブック)
*大変化の時代にグローバルな視点でチャレンジする多くの生徒達
6月は高校生を中心にグローバルな視点で自ら学び、チームとして協同で学ぶ活動が多く行われ、また外部の留学支援に応募した結果の発表(主として夏休みの活動)がありました。
1,トビタテ!留学JAPAN(注1)の採用数が全国2位
2013年スタートから10期目ですが、当学園は毎年着実に採用され、今年も12名が採用されました。1期~10期の累計では69名が採用され、今年度及び累計ともに全国2位でした。毎年継続して採用されるのは、本人の努力とともに、国際部、担任はじめ多くの教職員の支援によるものです。
注1;文科省による大学生・高校生留学促進・日本代表プログラム
2,WSC(注2)世界大会へ今年も多くの生徒が参加
今年は国内大会(東京、九州、関西)で世界大会出場権を得た生徒は24名(高2、中3,中2)で、8月下旬、マレーシアのクアラルンプールの世界大会に出場することになりました。WSC世界大会には、2016年初参加以来毎年着実に出場権を得、累計で155名に達し、日本では最大数と思います。その後のイエール大学での決勝にも多数参加しています。
注2;WSC(ワールドスカラーズカップ)・・中高生向けの総合的な知的能力・教養を競う大会、2006年スタートし、現在50ヶ国以上で国内大会が行われ、世界大会に2万人が参加。3名1チームで競う。世界大会出場者の上位は、米国イエール大学での決勝に出場できる。
3,グローバル講座でAI時代の日本の課題研究・・本質的問題の発見へ
10数年続けてきた本講座が新しく衣替えになりました。4月に高1生全員に対し、世界的投資会社の役員による世界を知る講演「今後の人生を考えるうえで伝えたいこと」を行いました。その後希望者41名を対象に、BBT大学院教授による講義とテーマの研究発表をゼミ形式で3回行いました。1回目は「グローバル時代と君たちの未来」と題し、AGI(汎用人工知能)世界の到来、日本の厳しい状況、希望の光、皆さんはどう生きるかについて、各種のデーターや事例を含んだ詳細な講義がありました。講義後、課題テーマ提示と8チームの分担を決めました。2回目はチームごとの課題研究の中間発表、最終回の6月23日は最終発表が行われ、講師のコメントがありました。最後にミニ講義「経営分析の技術」として、本質的問題を発見することの重要性が強調されました。課題テーマは、原子力以外のクリーンエネルギーの世界戦略、AGIの到来により変わる世界の予見、気候変動に取り組む世界戦略、日本の文化や技術を世界にアピールするビジネス構想などでした。
4,HKなずな奨学金(注3)応募活発
夏休みの活動を中心に個人の計画で応募するHKなずな奨学金の申請者が多く、審査の結果、国内外チャレンジ活動奨学金受給者19人が選ばれました。多くは海外短期留学の活動です。HKなずな奨学金は2022年開設以来、海外大学奨学金4名、国内外チャレンジ奨学金(長期、短期留学おおび国内)82名、計86名に支給されました。
注3;卒業生個人による海外大学進学及び国内外チャレンジ活動の奨学金
『障子を開けてみよ、外は広いぞ』(トヨタ創業者 豊田佐吉)

2025.6.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

5月は生徒の活動が活発な月でした。14日に校外研修活動を中1は上野、中2は鎌倉、中3は横浜、高2は上野で行いました。高1は6月に1泊2日で軽井沢での集団研修活動を予定しています。天気も良く新緑の季節、校外での友人との探求活動は思い出に残るものです。
第三教育拠点の図書館では、授業に関連した展示、季節や話題になる企画展示が積極的に行われています。また昨年10月より土足入館と荷物の持ち込みを解禁し、朝の利用者が増えています。4月7時30分時点での平均利用者数は、昨年の40人から91人へと倍増しています。またロッカーを撤去した空きスペースは、新着本コーナーと動画上映コーナーとし活用しています。朝の30分から1時間の読書は値千金です。
今世界は、不安定かつ大きな変化の時代です。少子化が進行し、天然資源のない日本は、人こそが最も重要な資源であり、人の育成、活用、健康・幸福(ウェルビーイング)は最重要課題です。いまこそ学園の建学の精神である自ら主体的に学び生涯学び続ける第三教育が大切です。
学校教育においては知識習得だけでなく、主体的・能動的学び、協働学習、発表・表現力の育成が重視され、社会においては新しい分野を学ぶリカレント教育が重要となっています。このような時代こそ教職員は常に新しいことを学び、深い専門性と広い教養が求められます。新しい教育へ挑戦し、第三教育の達人として生徒の手本であり続けるために、教職員の研究・研修がますます重要であります。
1, 古賀研究基金; 教職員の研究・研修活動を支える土台
学園には教職員の研究・研修のため独自の「古賀研究基金」(創立者古賀米吉の発案による教職員のための研究基金)があり、海外調査・視察、個人の研究への助成、教科研究会・各種研修支援、資格取得支援などに有意義に活用されています。この基金は、創立者の藍綬褒章及び叙勲、喜寿など祝賀のおりの祝い金をもとに創設され、その後保護者等の寄付、さらに毎年の新入生の入学時の古賀研究基金寄付などの浄財をもって、運営がなされています。最初の大型教育研修として、1964年に当時の教頭が海外研究視察のためヨーロッパへ派遣されています。
今年度の古賀研究基金の主な活用テーマは以下の通りです。
・アジアでの国際研修のための研究視察2名(タイ、マレーシア)
・個人特別研究開発
国語 生成AIの利用と作文教育・探求活動への応用
理科 実物周期律表展示の充実
理科 生成AIを活用したマイコン制御による測定器の開発
理科 3Dプリンターを用いた実験教具の開発
理科 センサーを利用した実験の教育効果
英語 行動科学の研究と実践 など
・授業研究会・教科研修会(外部講師)、他校視察などの推進

2, 研究成果; 隔年の研究紀要の作成と公表
学園では、創立当初より生徒・教職員の成果を研究誌として発行してきました。創立80周年を機に教職員の研究紀要を隔年に発行・公表することとし、2017年12編、2019年10編、2021年11編、2023年10編の論文からなる紀要を発行してきました。これらの研究の大半は上記の古賀研究基金の支援によるものです。今年は13編の論文を発表しました。国語5件,社会2件、数学1件、理科3件(物理2件、生物1件)、保健体育1件、生成AIに関するもの1件、学校図書館に関するもの1件と極めて多様です。いずれも日々多忙な教育活動の中で問題意識をもって研究し、まとめられた論文です。
3,研究・研修のシステム; 研修委員会が中心となり推進
教育の質の向上は、教職員の教育・研究力と熱意にかかっています。そのために研究・研修の制度およびシステムの改善を行ってきました。その中で研修委員会は、古賀研究基金の活用・推進をはじめ定期的な研修プログラムの企画・推進など研修の活性化を図っています。更に自主的公開授業「オープンクラス」、教科を超えた研究会、全教職員対象の研修会「なずなセミナー」、教科毎の研究会、他校見学など研究・研修活動を積極的に支援・推進しています。また教育研究部は先端的教育の研究・普及を推進し、ICT推進部はICT設備の計画・整備と利用法の研究を行っています。
最後に生成AIやインターネットなどデジタル技術の急速な進歩は、人間の仕事を代替すると共に、その活用は新しい価値を生み出します。一方今後ますます創造力、情緒、総合知、意識、思いやりといった人間らしさや人間力が一層求められ、実物や自然、対面での交流などリアルな活動が貴重な時代です。AIを有益なツールとして活用しつつ、一人一人を生身の人間として、よく見て特色を引き出す教育(学園のなずな教育)がますます重要であると思う日々です。
『一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし。(管子)』

2025.5.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
新年度をスタートし、1ヶ月が瞬く間に過ぎました。新入生も学園生活に慣れ、明るい声が校内に溢れています。25年度は、第5次中期計画の最終年度としての検証の年であり、第6次中期計画(2026年度~29年度)を計画する年です。また2027年度には創立90周年を迎えます。
4月9日の入学式は、満開の桜の花の中、中学生329名、高校生441名の新入生を迎えるにふさわしい日となりました。
高校入学式での小職の挨拶の要旨を記します。
『本学園は88年前の1937年4月15日創立者である古賀米吉先生と関係者の熱意で開校しました。英国イートン校などパブリックスクールの自由と規律、紳士の精神を模範とし、優れたリーダーの育成を目指す高い志でした。すでに4万人を越える卒業生を輩出し、多くの分野で活躍しています。建学の精神は、生徒一人ひとりの特色を良く見て伸ばそうと言う「なずな教育」と生徒が自ら考え学ぶ「第三教育」です。第三教育は、現在の能動的学習や学びなおし教育などを含む自分で自分を教育する生涯続く学びの王道です。第三教育の中心は読書です。紙の本をしっかり読み、考えることが、脳のためにも重要です。高校生活で皆さんに期待することを2つ話したいと思います。
第一は、「自分の将来の目標を探してください。」
自分が本当にやりたいことは何か、如何に社会や世界に貢献するか、幸福とは何か、つまり「いかに生きるか」という問いを、深く考えてほしいのです。自分の本当にやりたい将来の目標を探究して下さい。悩むことも重要です。
将来どの分野に進むにしても、本校のリベラルアーツ教育を通じ、基礎学力と広い教養、人間としてのマナーやモラルを身につけることは不可欠です。
また日本の大学の多くは理系、文系と分かれていますが、これからは理系・文系双方の知識が必要になり、広い教養の上に深い専門を持つ時代です。学問領域の境界や異なる分野の連携から新しい研究や新しい事業など、画期的な成果が生まれています。
一方昨今の生成AIなど極端に速い開発には、倫理的・安全性の検証や制御が必要になるでしょう。洪水のように押し寄せる科学・技術の発達を人間が良い方向に導くべきだと司馬遼太郎は、すでに「21世紀に生きる君たちへ」の中で指摘しています。
第二は、「楽しい学園生活を通じチャレンジしてください。」
楽しい学園生活は、学びと活動を通じて日々自分の進歩・成長を実感すること、友人や先生との人間関係を豊かにすることが基本です。授業、行事、クラブ活動はもちろん、自分で選択できる沢山のメニューにチャレンジしてください。土曜講座、国際研修、市川アカデメイア、SSH課題研究、リベラルアーツゼミや多く特別講座があり、更に各種外部イベントやコンテストなど他校の生徒と切磋琢磨する交流もあります。
まずは「何でも見てみよう、何でもやってみよう」というチャレンジ精神で参加することが大切です。皆さんは、今青春まっただ中です。しかし本当の青春とは、米国の詩人サミュエル・ウルマンが言うように、実は年齢ではなく、積極性や好奇心つまり心の若さなのです。何事にも意欲的にチャレンジし、本当の青春を楽しんでください。
今世界は戦争・紛争・災害が絶えず、大きな変化の中、こうして平和で平穏に入学式を行えることは、有難いことです。地球という惑星の中に生きる我々人間、すなわち賢い人と命名されたホモサピエンスと言う種は、生きものの一つであり、他の生きものや自然と共に生き、生かされている存在です。賢い行動で一刻も早い真の世界の平和と共存共栄を祈念します。』
最後に新しい発見をしました。
今年一橋大学の経済学部に入学した生徒の父親から、下記のメールをいただきました。『晴れて念願の一橋大生になることができ、親子ともども4月6日の入学式を心待ちにしています。昨日、新入生向けのガイダンスビデオを見たのですが、経済学部長の黒住英司教授は、市川高校のOBではないでしょうか?なぜなら、新入生へのメッセージとして「主体的な取り組み姿勢として第三教育という考え方」を勧められていたからです。(教授ご自身が通われた高校での教えということで紹介されています。) もしOBでしたら、大学でも先輩にあたる先生から教えを受けることとなり、つくづく不思議な縁を感じております。』早速ビデオメッセージを拝聴し、高校40回の卒業生であることを確かめ、黒住学部長に手紙を差し上げたところ、丁重な返信をいただきました。
『新しく経済学部長に就任し、真っ先に伝えたいと思ったのが第三教育のことでした。自分による自分のための教育は、教育課程が上がるほどに重要性を増してくると思います。研究者にしても社会人にしても意識しているいないにかかわらず、第三教育を実践しているものであり、その素地は中学・高校で準備を重ね、大学でもより積極的に意識して第三教育に励んでもらいたいと思っています。』(要約)
第三教育の達人、伝道者である卒業生の嬉しい発見でした。つくづく人生は、「ご縁とお蔭様(出会いと感謝)」の積み重ねだと感じました。
