2025.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 2月は、高3生が大学入学共通テストを終え、それぞれの目指す大学、目指す分野の一般選抜試験に臨んでいます。(すでに学校推薦型・総合型選抜試験は発表もされています。)本館3階の自習室で朝早くから黙々と学ぶ高3生の姿を見ると、顔が引きしまり美しささえ感じます。また自習室周辺の机で友人同士考え話し合っている姿もあります。全員に希望の大学・分野に進んでもらいたいと願うと共に、合否にかかわらず、限界まで頑張った力は必ずや人生に役立ち、失敗にも大きな学びがあると心から激励しています。
 さて2003年新校舎の開校時から実施している土曜講座は、学園の大きな特色としている課外講座です。今年度は年間8回、16人の講師の方に来ていただき、90分の講演・質疑応答を行ないました。中1~高3まで自由に参加でき、各分野の識者の講演を通じて広い分野を学び、生徒達は大きな刺激を受けています。すでに開始以来延べ400人以上の講師の方にご講演いただいています。分野は、自然科学、工学、医学、情報、文学、歴史、地理、法律、経済、哲学、芸術、音楽、ビジネス、起業。健康など多岐にわたります。講座がきっかけで、学ぶ方向、学び方、生き方等を知り、講師の「ひとこと」が自分の人生に大きく影響する人生・教養講座です。著名な方々に若い生徒のために来校いただき感謝しています。勿論各方面で活躍されている卒業生も積極的に講師を引き受けてくれています。ノーベル賞受賞者である故小柴昌敏、野依良治、故根岸英一、大隅良典各先生にも来校いただきました。
 今年度の土曜講座の最終日は、学園卒業生(高校36回)ナビタイムジャパン創立者、代表取締役社長大西啓介氏に、『経路探索技術で社会課題を解決』と題し、学生時代の研究から起業の経緯、今後の事業展望について話していただき、後輩生徒に大きな刺激を与えてもらいました。講演後の質疑応答が途切れなく、質問を打ち切りにせざるを得ないほどでした。概要は次の通りです。

1.大学院時代から研究してきたことを、研究室の後輩とたった2人で、父親の会社(大西熱学)の一部門としてスタートした。ナビゲーション技術を開発、PDA(電子
 手帳)マーケットで存在感を得、一定のメドがたち、2000年ナビタイムジャパンとして分社独立。
2.起業は最初が重要で、10年間ぐらいは極めて少人数で目標の開発をしつつ、その間は夜12時前に帰ったことがない程働いたが、楽しかった。
3.資金調達を外部に求めると短期で成果を求められ、本物の開発ができない。自分たちの僅かな資金 と外部のソフト開発など副業で食いつなぐ覚悟が必要。
4.その後も非上場を貫きむやみに拡大をせず、自前の技術の開発・蓄積に特化してきた。現在社員は約450名であるが、外注はせず全て自製を貫いた。外注すると
 技術やノウハウが自社に残らない。
5.トータルナビゲーションとしての自社の特徴
 ・全国バス・フェリーのデータを100%もつ
 ・ユーザーニーズに合った検索条件でルート探索できる・・フリーパス優先、国際間トータルナビなど
 ・電車、バス、自動車、トラック、自転車、バイクなど移動手段別に最適アプリを提供
6.社会課題の発見と解決
 ・独自開発の電車混雑予測技術で、電車の空いているルート提示
 ・赤ちゃんや子連れ移動のサポート
 ・リアルタイムで日陰マップ提供
 ・トラックカーナビ、観光バス専用カーナビ
 ・訪日外国人観光客向けのナビ・・インバウンドと地域活性化に貢献

 最後に高校時代の学びが如何に役立つかを、数学を例にとり具体事例で説得力ある話をしていただきました。
 生徒へのメッセージとして、『目の前の課題に真摯に向き合うこと(難しい問題は分解して考える事で解決する)』を色紙に書いてもらいました。
 今多くの企業が株価や売上・収益で競い合い、またグローバルな競争をしています。起業についても新しい技術や戦略で会社を立ち上げ、外部資本を得て上場し、成長を目指すことが推奨されています。一方ナビタイムのように非上場を続け、独自の技術や戦略でグローバルに活躍している企業も多数あります。今後日本人の特色を生かした産業・企業が多くでて、社会に貢献することを期待したいと思います。 

『継続は力なり』

 

2025.2.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 令和7年(2025年)がスタートし、あっという間に1ヶ月が経ちました。この間、高校入試、中学1回目入試(幕張メッセ)が無事終了し、残るは2月4日の中学2回目入試です。大学入学共通テストは、ほぼ全員の高3生が受験しました。また早くも4月からの新年度に向けた準備のため、25年度の人事・校務分掌の作成、25年度の年間行事予定表、大きな行事(宿泊行事、文化祭、土曜講座、各種セミナーなど)の具体化が進められています。

 2024年の学園トピックス42項目(学園の取組み、生徒の活躍)から、教職員が選ぶ重要トピックスが決定しました。
 1位 吉田学年(高校76回卒)の進学実績
   ・・東大合格者数過去最高の27名(既卒生含め31名)、難関10大学及び国公立医学部合格者数80名、国公立合格者数147名(卒業生の34.8%)
 2位 文科省よりSSH校として第4期目の指定
   ・・教科をまたがる学際研究と地域の科学技術教育への貢献を目標に5年間実施、1期より計20年間
 3位 なずな祭5年ぶりに来校者制限を撤廃
   ・・一般来場者2日間合計約16000人になる。街歩き・キッチンカーなど新企画を導入
 4位 中学第1回入試の男女別定員枠を撤廃
   ・・男女枠なしで280名(従来男子180名、女子100名)
 5位 高校陸上部 高1女子生徒の活躍
   ・・インターハイ200m6位、国民スポーツ体育大会100m2位など各種全国大会で活躍

その他生徒の活躍として主なものは、下記の通りです。
 *かるた同好会、演劇部、高校ハンドボール部、中学ハンドボール部、中学硬式テニス部、中学陸上部、応援部、山岳部などが県、関東、全国大会で活躍
 *高1生(現高2)JICA国際協力中高生エッセイコンテスト最優秀文科大臣賞受賞
 *高1生千葉県高校総合文化祭将棋大会A級優勝、全国大会出場
 *トビタテ!留学JAPANに13名合格(学校別合格生徒数全国2位)
 *SSHの活動:
  科学の甲子園ジュニア、千葉県大会優勝、全国大会準優勝
  科学の甲子園、千葉県大会優勝、全国大会出場(初)
  高3生日本地球惑星科学連合2024年大会高校セッション最優秀賞

 さて海外や地方から短い休暇期間を利用して帰省した卒業生が、学園を訪問し、親しい教職員と会い近況を報告してくれるのは本当に嬉しいことです。
 今回印象に残った卒業生のUT君(2023年3月卒、高校75回)のことを述べたいと思います。彼は経済的に困難な中、目指す海外大学進学を熱望し、卒業生寄付者による「HKなずな奨学金(海外大学奨学金)」の授与者に選ばれ、昨年1月ボストンのBerklee College of Music(バークリー音楽大学:ジャズおよびアメリカ現代音楽など商業音楽を専門とする世界最高の音楽大学)に入学を果たしました。大学ではオーディオテクノロジ-・レコーデイング・サウンドエンジニアリングを専攻、英語の壁のある中、優秀な学業成績をおさめ奨学金2年目の授与が決定しました。
 学業のみならず、ステージ演奏や音楽アルバムの発表など作編曲、アニメのサウンドトラックやコマーシャル音楽作成、アルバムカバーデザインなど幅広い活動をしています。こうした活動を通じ各国のそれぞれの専門家など多くの出会いがあり、人脈(ご縁)を広げており、自分の好きな分野での活動が楽しく、人生で最も密度の濃い時間を過ごしていると話していました。さらにたくましい精神力で1年間全く日本語を話さないほど現地に溶け込んでいました。インターネット時代、多くのことがコンピューターを通しスキルを修得でき作品を公開出来る中、大切な情報を見極め選択できる「判断力」が、積極性と共に必要と述べています。また将来の目標は音楽演奏家だけでなく、日本を代表するマルチアーティスト、クリエイターを目指すとのことでした。
 強く印象に残ったのは、到着後直ちに困難な状況に直面し生き抜いた力でした。米国初日、吹雪のボストンに到着したが、ロストバゲージ、物件詐欺(契約し家賃支払いまで済んでいた部屋にすでに人が住んでいた)に遭遇し、途方に暮れます。更に祝日で大学も閉鎖、仕方なくショッピングモールで夜を明かし、翌日警察に駆け込み、警察の聴取後大学へ連れられ、そこで渡されたのはフードバンク・マップ(食料炊き出し配給の地図)でした。誰も知り合いのいない異国の地で、日々生きぬくのは自分の力だと懸命でした。
 大学の新入生歓迎会でも同級生の積極性とレベルの高さに圧倒されますが、勇気をもって手を上げ演奏し存在感を示し、多くの友人を得たこと。恥ずかしい、目立ちたくない感情はこの国にはない、積極性と生き抜く力が道を開くことを実体験したのです。
 多くの人に助けられながらも強靱な生き抜く力、更に多くの出会いを自ら獲得し成長する姿に感動した次第です。
 グローバルな活躍を目指す若い力のたくましさと未来に希望を感じました。

2025.1.9
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 新年おめでとうございます。皆様それぞれ良いお正月を迎えられたと思います。毎年思うのですが、元気に平穏に年末年始を迎えられること、初詣など日本の伝統行事に参加できること、家族と団らんできることなど、当たり前、普通のことですが、本当に有難いことと思います。今や世界を見ると、普通、当たり前が難しい時代です。当たり前の日常が如何に大切か、平穏な一日一日を大事にしたいものです。三好達治の冬の日の一節「静かな眼 平和な心 その外に何の宝が世にあらう」を口ずさみます。

 能登半島大地震の災害から1年、今なお苦しい生活を強いられている方々に、心からお見舞い申し上げます。拡大する戦争・紛争地域、難民、環境破壊のことを思うと、本当に胸が痛みます。昨年12月に日本被団協がノーベル平和賞を受賞しましたが、講演された田中代表委員をはじめ被害者の方々の長い活動に心からの敬意を表します。また内外ともに政治が不安定な中、世界の平和が前進することを願っています。ホモサピエンスである人類の英知が試されています。
 16日間の冬期休業期間中も、勉強会、部活動、課外研究、各種大会参加等の活発な活動が行われ、また日頃できない体験をした生徒も多く、成長を期待しています。
 またこれからは入学試験の季節です。市川中学校入試は、1月20日幕張メッセでの第一回と2月4日の第二回、市川高等学校入試は1月17日の1回のみです。受験生が良い環境で受験できるよう、怪我や体調不良などの受験生のために特別室も用意しています。
 更に大学入試は、1月18日19日の大学入学共通テストをスタートに各大学の入試が2月を中心に行われます。大学入試に向かう生徒には、入学試験の合否は僅差故に最後まであきらめないこと、一方人生100年時代、1回や2回の失敗は問題なく、失敗の経験は成功につながる故、本当に自分のやりたいこと好きなことを目指すよう激励しています。

 今年は第5次中期計画の最終年、更に2年後(2027年)の90周年の節目に向かう年です。一歩前進し、教職員一同協力し意欲的活動をしたいと思っています。

 さて最近思うのは、AI、インターネットなどを通じDX(デジタルトランスフォーメーション:組織活動のデジタルによる変革)が進む中、DXによる組織活動の効率化と利便性を追求すると共に、一方でリアルのコミュニケーションや対面活動の大切さです。DXの進歩と優位性を追求・活用する一方、ますます対面活動の重要性と差異化が起こると思っています。
 学園のような教育組織もDXと対面の2極の活用・推進の発想が重要です。

1.教職員のDXによる働きやすさ、効率的活動の追求
 すでに学園では日常業務の大半がDX化されていますが、更に教職員が本来の教育業務や生徒対応に集中できるよう改善・改革が重要です。DX推進を通じ組織や仕事の仕組みの改革も必須です。DXは中期計画上も優先項目で投資を惜しむことはありません。
 校務分掌上は、ICT推進部が日常業務改善・改革推進と普及教育を、教育研究部が生成AIなど新技術の活用の研究・導入を担当しています。特に生成AIは、先行試行するエバンジェリスト(伝道者)的教職員の拡大を通じ、課題をまとめ、教職員・生徒へのガイド、規制、更に活用を推進していきます。

2.教職員の対面コミュニケーションの重要性
 DXの重要性と共に、その組織が本当に成果を上げるため、最後に大切なことは対面コミュニケーションの活性化です。誰でも何でも話せ意見を言える風土、困ったこと不満なども直接言える関係、誰でも提案できる環境です。縦横斜めのコミュニケーションを活発にし、教職員と管理職の間、部長主任と管理職の間、学年内、教科内など、どこの間でも話し合い問題を提起できる風土、異なる部門同士の交流などが大切です。
 チーム市川学園としてお互いに助け合うこと、仕事の負荷が一人に集中しないよう協力すること、課題・問題を共に解決することです。何よりも教職員の元気さとコミュニケーションのよさが、生徒にも元気を与えます。お互いに声をかけ合う、話す、明るい挨拶をすることも大切です。挨拶はコミュニケーションの基本であり、文字通り「あかるく、いつも、さきに、つづけて」です。これらを学園として推進してきました。このための多くの仕組み、例えばオープン授業、教科を越えた学ぶ会、学年・教科の自主性などですが、今年も更にリアルのコミュニケーションを大切に活発にしたいと思っています。

「コミュニケーションの基本は、互いに相手を思いやる心である」

2024.12.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 11月は宿泊行事が多く、一部台風の影響など受けながらも高2修学旅行(北海道、沖縄)、中2京都研修、中3修学旅行(九州、北陸、北海道)など無事終わり、生徒は思い出に残る集団活動を楽しみました。学園行事も多様化かつ個別化し、探究型になっています。事前の準備、事後のレビューが重要です。また保護者・生徒・担任教師との3者面談も行われました。
 コロナ禍で2019年を最後に中断していた同窓会主催のホームカミングデイ(HCD)が11月10日再開されました。今回は卒業回期が6の数字即ち高校26,36,・・・,76回(今年3月卒業)の学年が当番幹事として実行委員会をつくり、かつ当番学年と高校19回以前のシニア同窓生が招待されました。同窓生とその同伴者、旧教職員、現教職員、HCDで実演するクラブの保護者の方々含め約450名に来校いただきました。
 同窓生は、学年単位で教室に集まり写真撮影し旧交を温め、その後國枝記念国際ホールでの全体イベントに参加しました。小職、校長の挨拶、学園近況紹介の後、後藤忠治前同窓会長(現顧問、セントラルスポーツ会長、1964年東京オリンピック水泳自由形短距離選手)より「オリンピックの想い出」と題しての講演がありました。また同窓会会長12年間の後藤忠治氏、同窓会副会長兼事務局長16年間の二川則義氏に感謝状が贈呈されました。更に生徒の司会のもと、応援部チアダンスの演技、吹奏楽部、オーケストラ部の演奏、音楽部の合唱などが実施され、いずれも同窓生に喜びと感動を与えました。最後に校歌を全員で合唱し、二川則義同窓会会長の挨拶があり散会しました。
 
後藤忠治氏の講演の要旨を以下に記します。
 『スポーツを分析すると、「する」「見る」「支える」の3要素に分けられる。今回は「する」と「見る」について話す。
 「する」:自分の力を試すこと、同じルールのもとでプレーし、チームとして協調性を育むことにある。特に自分の力を試すという点は、努力は無限で、まさに市川学園の建学の精神である独自無双の人間観と自ら努力し続ける第三教育に通じる。自分はスポーツを「する」ため大学で水泳部に入部し、オリンピックを目指し、厳しい鍛錬に耐え、自分の力を試すとともに、協調性を養うことができた。1964年の東京オリンピック水泳短距離に出場でき、後に後輩育成のためセントラルスポーツ(株)の創業に至った。
 「見る」:努力の成果が見る人に夢と勇気と感動を与える。
 現代では、その良い例が大谷翔平選手の大活躍であり、また約75年前1949年8月の全米水泳選手権で古橋廣之進さんや橋爪四郎さんが次々に世界新記録を打ち立てるという大活躍である。敗戦で気力を失っていた日本国民に夢と勇気と感動を与えてくれた。
  また、成功の三条件として運鈍根、即ち好運に恵まれること、こつこつ努力をすること、および根気よく頑張ることだ言われている。実は順序は鈍根の厳しい鍛錬があって初めて運が来るので、鈍根運の順序が大切だというお寺の高僧から聞いた話が、厳しい鍛錬の中での自分の支えになった。』など感銘深い話をしていただきました。

 また冒頭小職から下記の挨拶をしました。
 『同窓会の各支部、各学年、クラブ、クラスなどの会の活動はもとより、生徒達へのキャリア教育、専門教育等活発な活動に感謝。
1.学園の価値は、第一に建学の精神をベースに長期に安定した経営、第二に生徒一人一人の特徴をよくみて、それを伸ばす充実した教育である。結果として定員を上回る入学者数と卓越した進学実績を確保する。第三に同窓生の皆さんが社会に貢献活躍している力と同窓会のネットワークの力である。
2.学園は、4年単位の中期計画をたて現在第5次中期計画を推進している。広い教養であるリベラルアーツ教育を基本に、学力、教養力、国際力、科学力、人間力の5つの力の育成を目標としている。学力の面では進学実績が伸び、国際力では、生徒の国際的活動が活発で、約15%の生徒が今夏に国際活動を実践。科学力では文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の第4期目の指定をうけ、物理と生物、化学と生物、地学と地理など複数の学科の学際的研究を推進している。
3.AI・インターネット・デジタル時代、その開発速度が急激。教育での活用も進み、本学も極めて積極的である。一方人間力のためには、リアルの体験や実験を多くし、意識、人を思いやる共感、感性、情緒など育むことが大切であり、中学1,2年生にはタブレットを与えず、手で文字を書く、紙の本をしっかり読む、感性を育む教育を重視している。AIはいくら発達しても生きものではない、道具として考えること、科学技術開発の正しいコントロール・倫理性が非常に大切であると思う。』

同窓会、同窓生の物心両面での支援は本当に有難いことです。