2024.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

2月4日の中学第2回入学試験が終わり、2月11日の中学入学ガイダンスをへて、24年度の中学新1年生327名(定員320名)が確定しました。ガイダンスでは、校長・中学教頭の話をはじめ各種手続き、主要教科の入学前課題、特別英語授業の説明などが行われました。高校は、公立高校の合格発表後に行う3月のガイダンスで確定します。大学入試も国公立前期選抜試験が終わり、吉報を待つばかりです。私立大学合格の吉報が続いていますが、大切なことは希望通りにいかなかった生徒への支援です。若い生徒が持つ最高のものは、「未来と可能性」です。失敗もよし、回り道やり直しもよし、それぞれ自分の希望する道を目指して欲しいと念願しています。
2月の大きな行事として、2日間にわたり中学1年生、中学2年生・3年生合同のクラス単位で行う16回目の合唱祭が、コロナ後はじめて保護者参加の下に行われました。各学年の課題曲と自由曲で競うもので、チームワーク、調和、技術等で競われます。学年毎のクラス金賞・銀賞と共に、指揮者賞・伴奏者賞・パート賞等の特別賞もあります。学園に美しい歌声が響き渡った2日間でした。 最近気になる言葉で、レジリエンス(resilience、形容詞resilient)という言葉があります。強靱性、弾力性、回復力,復元力を意味します。これは能登半島地震のような地震・災害や事故でのインフラや建築物あるいは情報システムなどに適用される言葉です。電力・運輸・交通・通信・上下水道など公共システム、食料・住居など当たり前の利便性が失われることで、日常の当たり前の平穏さが失われます。強靱性と共に、復旧・回復しやすく、障害を最小限にする適切な保守や整備もレジリエンスの要素です。 一方レジリエンスという言葉は、我々人間にも適用されます。困難な問題に遭遇しても、ストレスにあっても立ち直ることのできる人は、レジリエントな人です。AIをはじめ技術革新が急速であり、一方仕事もストレスの多い時代です。それを支援し克服するための働き方改革や職場環境、何でも話せる開放的組織が大切です。 生徒の場合も、勉学をはじめ、友人など種々の人間関係で悩みながらも、レジリエントな人間力をつけて行きます。授業、部活、行事、課外活動などを通じ、困難に負けない自分を目指してほしい。クラスや行事での役割、課外活動を通じて異質な人との交流、リーダーになって板挟みの経験などで生徒は大きく伸びて行きます。また海外研修などで世界の異質な人との出会いや体験を通じて、レジリエンスを高めます。勿論解決できず、深刻なストレスに悩む場合もあります、そのような場合、学園では、何でも相談できるよう、担任、保健養護教諭、カウンセラー(ほっとルーム)が連携し支援する体制を整えています。またレジリエンスを高めるには、自分の得意や好きなことを見つけ、日々達成感を味わい、先生や友人と良い関係を築き、楽しい学園であることが大切です。学園が楽しいという生徒が非常に多いことは、嬉しいことです。 大人の場合も、複雑な人間関係や仕事の達成、仕事と家庭の両立などに悩み、ストレスに苦しむ場合があります。長い人生経験から、レジリエントな人は、次のような特徴があるように思います。①相談相手や親しい友人がいる。協力関係が築ける。②仕事以外の趣味など発散するものがある。気分転換がうまい。③何とかなるという楽観的思考と良い意味の鈍感性。④自己肯定感、やってみよう精神。達成しているという感覚と明日を思い悩まない。⑤自己中心主義でなく、協調性がある。人にも優しく、利他の精神を持っている。 以前にも触れましたが、城山三郎「打たれ強く生きる」という本の中の3本の柱の話は参考になります。精神科医から聞いた話として、強く生きるには、インティマシイ、セルフ、アチーブメントの3つの柱が必要であること、柱が3本あれば、1本の柱が折れても、挫折や困難を乗り越えられるということです。 私の解釈を含め要約します。(文責筆者) 第一の柱はインティマシイ(intimacy)親近性という意味です。親しい人との関係、例えば家族、親しい友人や敬愛する先生、地域の人、自分を支えてくれる人々との関係を大切に親密にすることです。第二の柱は、セルフ(self)即ち自分だけの個の世界を持つことの重要性です。読書、音楽を聴く、絵を見たり描いたりする、一人でできる趣味、思索など個人だけで完結する世界の大切さです。第三の柱は、アチーブメント(achievement)達成という意味で、目標を持つことです。多くは自分の仕事での成果、本当にやりたいこと、生きがいです。事業の達成目標、進学の目標、学びの目標等もあります。3本の柱をバランス良く太く充実させておけば、1本の柱が折れてもあとの2本が支えてくれる。人生では、親しい人との別れは必ずあり、インティマシイの柱が折れることがあります。そのときにセルフの柱、アチーブメントの柱が支えてくれることでしょう。お互いに3本の柱を、充実させ豊かにしたいものです。 『あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。』 新約聖書「マタイによる福音書」
2024.2.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

能登半島地震発生から1ヶ月が経ちました。寒さの中、被災された方々の生活困難を思うと胸が痛みます。受験生の皆さん大変ですが頑張って下さい。被災された皆さんの生活が一日も早く改善されることを祈っています。 1月2月は毎年入試の月、大学入学共通テスト(13,14日)、当学園の高校入試(17日)、幕張メッセでの中学第1回入試(20日)、中学第2回入試(2月4日)、国立2次試験(前期2月25日~)と続きます。幕張メッセ入試は、コロナ前に完全に戻し無事終了しました。共通テスト後も、日曜日を含め連日学園で学ぶ高3生の顔が引き締まり、心から応援しています。全力で最後までやり抜いた達成感は、合否にかかわらず今後の人生で大きな力になると思います。 今年は、世界的には選挙の年と云われており、戦争・紛争が平和な方向に前進することを念願しています。また身近では、今年は昭和99年、千葉県誕生(1873年)150周年の行事が6月まで続き、市川市は市制施行90周年の年です。1934年に市川町、八幡町、中山町、国分村の合併で市川市が誕生しました。学園は、その3年後1937年に創立され、市川市と共に成長してきました。この近辺では、当時旧制中学校(男子5年制中学校)は、私立は開成中、公立は千葉中、佐倉中、府立3中しかなく、新しく私立市川中としてスタートしました。3年後の創立90周年の節目を目指し、更なる進化・発展、改革をめざす年とする決意です。 さて今我が国は、政治・経済・教育・生活等の課題山積ですが、大切な資源である人の課題が多く取り上げられていることは良いことです。資源国でない日本の唯一の資源・宝は、勿論人であり人財です。人手不足、人への投資、賃上げ、働き方改革、子育て・教育支援、移民・留学生など主として人の数への課題は重要です。22世紀に向かい人口6000万~8000万維持の対策は急務です。一方一人一人が存分に力を発揮する質の課題も重要です。GDPがドイツに抜かれ世界4位を問題視していますが、一人当たりのGDP(現在世界32位)、一人一人の生産性、能力開発、生活・仕事の充実感・幸福感がより大切です。年齢によらず学び続け適所で働き、力を発揮できること、誰もが充実した教育を受けられ、個性を発揮できる社会づくりが重要です。教師の数の充実と質の向上は不可欠です。 人財重視の中で、人の「美点凝視」良い点を見て発掘し伸ばし、誉めることが大切と感じる昨今です。どんな人にも個性・特色・美点があり、それを存分に生かす教育が大切です。特に中高の伸びる時期に、美点凝視、特色をじっと見つめそれを伸ばす、誉める、激励することです。まさに学園の建学の精神の一つである「なずな教育」の深い実践です。芭蕉の句「よく見ればなずな花咲く垣根かな」は、なずなの目立たない美しさに感動する美しい句です。花を人にたとえれば、大輪の菊のように、立派に活躍する生徒をより高くチャレンジするよう支援すると共に、なずなの花のように目立たない生徒の美点を凝視し良い点を発掘し誉めることが重要です。今学園は公式表彰だけでなく、生徒が何かを達成すると、随時学年集会やクラス等で積極的に表彰し、全員で喜び合う姿が多く、将に美点凝視の実践です。 学校特に私立学校は、建学の精神のもと、各校が異なる特色ある教育を伸ばすことが不可欠で、美点凝視です。いたずらに流行を追い、他校の真似や追従するだけでは良い教育はできません。 また卒業生の活躍も、美点凝視で同窓会が取り上げ、同窓会報やメールで紹介し、また卒業生も同窓会活動に積極参加し、キャリアセミナーや種々の特別講座、保護者交流会などで、後輩の支援をしてくれています。学園訪問やメールなどでの近況報告も多く、中高時代の先生や友人の影響は一生忘れないと云っています。最近の多くの嬉しい事例の一例をあげます。卒業生A君(高校56回卒、38才)から当時世話になったK先生への手紙です。(要約)「昨日、宇宙科学振興会より、宇宙科学奨励賞を受賞しました。理学も工学も含んだ、宇宙科学のあらゆる分野に所属する全ての若手研究者を対象とした規模の大きいものですが、今回運良く受賞しました。市川学園での勉強が今の研究の基盤になっており、市川学園の先生方からの教えが何年経っても役に立っております。感謝の気持ちもあわせて、ご報告させていただきました。もうすぐ高校3年生が、共通テストや国公立・私立大学の入試を迎える時期かと思います。当時、第一志望の大学に落ちた自分が言うのも大変おこがましいのですが、後輩には第一志望校の合格に向けて頑張ってほしいと思いますし、応援しています。」 学校教育の美点凝視だけでなく、一般企業や社会も同じです。組織運営や人事、教育、事業も自社の特徴を伸ばす集中と美点凝視が肝要です。 我が国は今閉塞感があり改革・改善は急務ですが、足もとの美点・良いところをもっと発掘し伸ばし自信をもつことが必要です。売り上げ100億~1000億クラスで各業種の特色ある光る企業は多数あります。外国人観光客が世界でもっとも訪問したい国の一つは日本です。若い人の起業成功事例(学園卒業生も最近起業成功が多い)、地域の特色を生かした町づくりの良い事例など増えています。 欠点指摘から美点凝視へ、問題指摘から問題解決へ、マイナス思考からプラス思考へ、悲観から楽観へ、不満から感謝へ、内から外へなど、自分事についても良い点を見つめ自信を持ちたいものです。 百の欠点を無くしている暇があるなら、一つの長所を伸した方がいい。 ピエール=オーギュスト・ルノワール(仏 画家)
2024.1.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

新年おめでとうございます。旧年は世界も日本も多事多難な1年でした。その中で平和で平穏な日々、当たり前の日常を過ごせたことに、感謝せざるを得ません。新年こそ世界の紛争・戦争が一歩でも平和に近づき、戦火に苦しむ多くの人々の救済、難民問題、貧困、地球温暖化、急速に進化するAI等科学技術の制御・抑制など世界共通の課題の解決が前進することを願っています。 我々人間は、宇宙の中の地球という小さな惑星の一員であり、ホモ・サピエンスの名にふさわしい賢い行動が必要です。世界および我が国の真のリーダーの英知と輩出を願っています。1932年A・アインシュタインとS・フロイトの書簡である「ひとはなぜ戦争をするのか」(講談社学術文庫)は、人間の本性である攻撃欲動と他者への共感力・欲動抑制、更には知性と文化力の重要性を語っており、この時期に一読の価値がある一冊です。

旧年12月は、毎年の如く学園活動も極めて早い流れでした。学期末試験が終わり、高校3年生は、大学入学共通テストおよび2次試験に向け頑張っています。学期末試験最終日(12月14日)には、高3生の激励会が開かれ、國枝記念国際ホールで、小職、及川校長、吉田学年主任が話し、更に学年の担任・副担任合計23名が、心を込めた短い激励のことばを述べしました。それぞれ特色ある激励でしたが、共通点は「生徒の皆さんが大好きで最後まで支援する」という決意と愛情に満ちたものでした。小職からは、概略次の話で激励しました。「吉田学年は、学年スローガンのムーンショット、ファーストペンギンを目指し高い目標にチャレンジする素晴らしいチームです。自信を持とう。全ての選抜試験は僅差、僅かな点数5点10点の差で合否が決まります。最後まで目標を諦めず、よく食べ、よく寝て元気にベストコンディションで臨んで欲しい。一方人生100年時代故に、本当に自分のやりたい第一の希望、我が道をめざして欲しい。必ず達成できます。まわり道よし、やり直しよしです。健闘を心から祈ります。」 HKなずな奨学金は、今年度後期の授与式が、寄付者出席のもと行われ、海外大学進学奨学金予定者1名、国内外チャレンジ活動奨学金8名に奨学金が授与されました。本奨学金制度発足の昨年度および23年度あわせ、2年間で、海外大学進学奨学金2名、国内外チャレンジ活動奨学金36名計38名の授与者となりました。各自が目標に向かい、大きく羽ばたいて欲しいと思います。 近年は、政治も企業も社会も人への投資を重視しています。人口減少が確実な中、人材育成は数だけでなく質の大切さ、また日本の教育システムの優位性が重要になります。広い意味での教育への投資が重視されていることは喜ばしいことです。個々の課題への対応以外に、教育・人材開発の国家百年の計であるビジョンと総合的長期計画が必要です。 憲法の基本的人権の尊重、多様性重視、個の活性化、WHO憲章の健康(肉体的、精神的、社会的に健全であるウェルビーイング)が、これほど重視される時代は、過去にはありません。個人の自由と権利を守る自由民主主義の国に生まれた幸せは、専制独裁主義の国と比較してみれば、良く分かります。 しかしこの自由と権利を守り維持していくには、放漫な自由ではなくルールを守り法を遵守する規律が重要であり、自分の権利の主張だけでなく、義務と責任を果たすことが必要です。個人も組織も行き過ぎた自由、行き過ぎた権利主張があります。過度な自由競争を促す新自由主義的発想やSNS時代に自己の権利だけを主張し他人の迷惑を考えない風潮もあります。組織では、全ての利害関係者(ステークホルダー)のことを考える日本のよき伝統の「三方よし」の精神が大切です。個人では自分のやりたいことを追求できる自由と共に、人に迷惑をかけないための適切な抑制が大切であり、また自身の責任と義務を果たす努力が必要です。 学校特に私立学校は、各種の法律を遵守しつつ、建学の精神のもとそれぞれ独自の特色ある教育を実践しています。某大学のような組織や個人の不祥事が起きるとガバナンスとして法律や規制を厳格化する傾向になります。自由を獲得するには、法令遵守など規律をしっかり守る、権利を主張するには、義務と責任をしっかり果たすことが私学にも問われています。一方生徒・学生に対しては、自主性と主体性を高めると共に、義務と責任を果たすことを問わねばなりません。 本学園は、生徒の自主性・主体性を重んじ校則やルールを少なくするために、生徒が自分を律すること、規則を守ること、人間としてのマナーやモラルを自分で考え実践することを前提としています。ご家庭の協力が必要です。本校の方針の一つ「紳士淑女たれ!」は、紳士(Gentleman)の語源の教養がありマナーや振る舞いの立派な人物を意味しています。当たり前ですが、他人に親切にする、迷惑をかけない、規則やルールは守る、身だしなみをきちんとする、約束・時間・期限を守る等です。学園は自由で闊達な風土がモットーですが、決して放漫であってはならず、「自由には規律を、権利には責任と義務が伴う」ことを認識してもらう人間教育に尽力しています。これは生徒だけでなく、我々教職員が自ら率先実践し、身をもって生徒に範を示すものです。 新しい年が平和で、皆様に取り幸せな1年になることを祈念いたします。 「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。」 ジョン・F・ケネディ
2023.12.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一


11月は高2沖縄(含む石垣島)修学旅行、中3長崎・広島2方面の修学旅行、中2京都宿泊研修がすべて無事終了しました。生徒にとり最も思い出に残る行事です。また恒例の生徒・保護者・担任の個人面談が4日間にわたり行われ、個別の課題等について有意義な対話が行われました。

24年度トビタテ!留学JAPANに応募したい生徒むけに、「トビタテ!留学JAPAN」と「Camp Rising Sun」を利用して海外活動をした生徒12名の発表会が行われました。中3・高1の生徒185名が参加し、海外体験への関心の強さを感じました。またSSHの課題研究の中間発表会が4日間行われました。海外SSH交流校のタイ国プリンセスチュラボーン・サイエンスハイスクール(チョンブリ)の校長・教員・生徒計12名が来校し、授業へ参加、タイの先生の特別授業、生徒同志の研究発表会を行いました。またタイの生徒全員が学園生徒の家庭でホームステイをし、日本の家庭の日常を知り、東京理科大学、日本科学未来館、国立科学博物館の見学・研修、日本文化を知る都内見学を行い、充実した5日間を過ごしてもらいました。当校も6月にタイを訪問しており、国際交流が活発になっています。

同窓会設立80周年記念総会・祝賀会(コロナ禍で1年延期)が、約750名の同窓生、法人役員・教職員が集い、盛大に行われました。午前は國枝記念国際ホールで生徒の音楽イベント(オーケストラ、ブラスバンド、チアダンスなど)が行われ、午後は古賀アリーナで、式典・総会が行われ、その後の祝賀会では卒業回期のテーブルを移動しながら、同窓の先輩・後輩、教職員が和やかに交流し、同窓生の演奏もあり、時間の経つのを忘れるほどでした。新制高校3回卒から今年卒業の75回卒までの幅広い世代が集まりました。 式典では、小職より学園概況を説明し、卒業生が各分野で活躍され、同窓の友情をもとに同窓会が活発であることは、学園にとり大きな誇りであることを話しました。また創立者古賀米吉が、卒寿の祝いの席で「私学の道は厳しい。どうかこの学校をつぶさないよう、守ってください。」と挨拶したこと、今後も少子化が進む中、厳しい競争時代に、全国でトップクラスの学園へ発展を続け、創立90周年、100周年、120周年を迎えるべく、卒業生の学園を支える重要さを強調しました。 さて昨今働き方改革が話題になり、各分野で仕事に関して、働き方の多様性、働く時間、収入、法の順守などを中心に改善が図られています。一方働く意義や仕事の価値、楽しさ・幸福、人生100年時代の生き方も重要です。人は仕事を通じて成長します。あらゆる正しい仕事・職業は、価値あるものですが、教職はその中でも次世代の人づくりで社会への貢献と価値が大きいことはいうまでもありません。近年教職がブラックな仕事といわれ、教員志望が少ないというのは残念で、国家100年の計の大問題です。私立学校は労働基準法に準拠しており、当学園は教員の働きやすさのため、年間個人別変形労働時間制で個人別カレンダーにより自主的時間管理ができ、法人本部による教員支援、ICT支援など事務的支援を強化し、教員の負担軽減に注力してきました。教職員がゆとりをもち仕事を楽しむことが、生徒が楽しい学園の要件です。

生徒の将来の生き方、職業、働き方などについて、高1生対象に各分野の卒業生約50人と対話するキャリアセミナーを同窓会と共同で毎年行ってきました。仕事は、第一に報酬を得て自立すること、第二に自分の本当に好きな天職を見つけること、仕事を通じて成長すること、第三にそれにより社会貢献することの3つをあげ、それらを通じて幸福になることを話してきました。 仕事、成功、幸福、生き方については、理論、事例、人物論、ノウハウを含め莫大な数の図書が発刊されています。知的な仕事と幸福についての古典として、カール・ヒルティ(1833-1909)が130年以上前に書いた「幸福論」が参考になります。アラン(仏)、ラッセル(英)と並ぶ3大幸福論の一つです。 著者は1833年スイス生れで、政治家・哲学者・法学者・文筆家です。幸福論(第1部)は、仕事の上手な仕方、良い習慣、時間の作り方、幸福、エピクテトスなど8章からなります。「仕事の上手な仕方」の中で、人を幸福にするのは、仕事の種類ではなく創造と成功の喜びであること、仕事に没頭できる喜びが大切としています。仕事にもあらゆる技術と同じくコツがあるとし、①仕事への勤勉さと人類・社会貢献の大切さ ②まずやり始める習慣をつけること ③創造的仕事は本論から始めること ④元気と感興がなくなったら休息すること ⑤無益な活動に力を費やさないこと ⑥繰り返しやり直す重要さ などを述べています。また「時間の作り方」では、①規則正しく働くこと ②1日の時間をどう区分するか(タイムマネージメント) ③準備に時間をかけずすぐやること ④小さな時間の断片の活用(細切れの短時間の活用) ⑤時には仕事の対象を変えること(いくつかの仕事の並行処理) 昔も今も仕事のやり方の本質は変わらないものです。 今イスラエル対イスラム主義組織ハマス、ウクライナ対ロシアの戦争をはじめ世界各地での紛争と分断が続いています。非常に不透明不確実な時代です。更に経済、環境、貧困、格差など日本も世界も課題山積です。何よりも平和が大切で、当たり前の日常、平凡な日々がいかに貴重かと改めて考えさせられます。TVの悲惨な画像を見、一日も早い平和を願う日々です。今こそホモ・サピエンス(知恵ある人)である人間の真の賢さが求められています。 『静かな眼 平和な心 その外に何の宝が世にあらう。』(三好達治;冬の日)