173.『紳士淑女たれ』・・・人間力教育および生徒指導のもとになるもの

bb2020.02.01
市川学園理事長・学園長 古賀正一

当学園の創立時からのモットーは、『紳士たれ(Be Gentlemen!)』の教えであります。

この教えは、創立者が英国パブリックスクールの一つであるイートン校のジェントルマンシップと自立の精神に強く感銘を受けたことから生まれました。2003年から共学になり、この言葉は、『紳士・淑女たれ』(Be Gentlemen and Be Ladies!)としています。

本学園の究極の目標は、真に品格ある紳士・淑女となるべき人物の育成であり、更に具体的に云えば、国際的に活躍できる品格あるリーダーの育成、随所に主となる真のリーダーの育成であります。

英語のgentlemanという言葉は、a man who is polite and well educated, who has excellent manners and always behaves well. (Oxford 現代英英辞典)のごとく、誰にでも丁寧で、教養があり、マナーがよく振る舞いが立派な人という意味で、ladyも全く同じです。He is no gentleman! といわれることは、最も恥ずべきことですし、逆にHis wife was a real lady. は賞賛の言葉です。

本学園の教育基本方針のリベラルアーツ教育を支える5つの力はのうち、人間力の育成は、教育の基盤であり、いかに生きるか、よく生きるとは何かを考えかつ実践することです。『紳士・淑女たれ』は、頭で理解するだけでなく実践が重要であり、マナー、モラルから、良い習慣、学びへの姿勢、リーダーシップ、人のために尽くす善行など幅広く実践を積み重ねることで身につきます。教師が教えると共に自分で学び体験することが重要なのです。

また「第一の教育」であるご家庭での教育の影響が大きく、家庭と学校の協力が不可欠です。生徒の人間力向上は、クラス、授業、部活、行事、校外の活動などであらゆる場面で体得され、教師からだけでなく両親・先輩・友人・知人などからも学びます。

特に特別の教科である道徳と生徒指導について考えてみたいと思います。

道徳の授業は、中学では週1単位であり、副校長をリーダーとする道徳教育委員会で中学全体としての年間計画をたて推進しています。目標は、『紳士・淑女たれ』をベースに、社会規範を身につけ、自他を思いやる品格ある生徒の育成です。自分自身、人との関わり、集団や社会との関わり、生命や自然・崇高なるものとの関わりを念頭に、クラス単位で行う授業から、学年単位でおこなう講演やワークショップもあります。外部の方の協力で行う学びは、スマホ利用のマナー、キャリア教育、盲導犬の利用者の話、薬害教育、国際ボランティア、認知症サポーター、性といのちを考える、日本の伝統文化を考える、原爆被爆体験者の話など多様なテーマです。話を聞く事を通じ、生徒自身が考えることが大切なのです。

次に生徒指導です。学校は生徒に学校の規則を守らせることは必須ですが、規則以外に社会のルール、マナー、義務・責任と権利を教えることも、生徒指導であり、人間力教育であります。

生徒指導は生徒指導部を中心に、担任、教科、部活など全ての教師が参加しなければなりません。重大な規則違反に対しては、強い姿勢で当たることもあります。しかし自分で考え学ぶ『第三教育』を建学の精神としている学園では、強圧的にあれこれ注意するのではなく、自分で事の是非を考え判断し行動する自主性を、指導の中心にしています。

逆説的ですが、『生徒指導をしなくてよい生徒指導部』が、生徒指導部長の掲げる方針あり、究極の目標です。

勿論生徒には、生徒が守るべき『生徒心得』や『Be gentlemen, Be ladies.~紳士・淑女たれ~noblesse oblige』という冊子が配布され、これらは道徳の教科書と共に道徳の時間やHR授業等で指導が行われます。

今年度の生徒指導部の活動は、身近な課題をとりあげ、具体的に実践することで生徒の自主性を高めています。目標は「自転車通学交通事故ゼロ」「バス・電車の利用についての苦情ゼロ」「携帯・スマホの不適切な使用ゼロ」の3つです。この目標に向けて次のような試みが行われました。

1.生徒から生徒に訴えさせる試みを実施
終業式などの集会で校長や生徒指導部長が直接生徒に語りかけ、常に自分で考えさせるよう導く話をしています。1学期の終業式では、中学演劇部がバスのマナー向上について寸劇をつくり、上演しました。バス内や停留所での良い事例悪い事例を演じ、中学生全員が見て、改めて考える良い機会でした。

2.スケアード・ストレートを実施し事故の怖さを疑似体験
スケアード・ストレートとは、自転車事故をスタントマンが目の前で再現し、その恐怖を疑似体験する事によって、禁止事項を身にしみて覚えるものです。イヤホン装着、並走、傘差し、二人乗り、一時停止不履行、右側通行などの違反による事故の怖さ、ヘルメット着用の重要性など自分のこととして考える機会となり、口頭による注意だけでは得られない体験でした。

3.生徒指導部通信『紳士、淑女たれ』(BB通信:生徒指導部通信)
定期的に各生徒に適時配布し、生徒自身が考える素材と重要連絡事項を載せます。例えば、話題になった米国の母親が12才の息子にスマホを渡すに当たり、使用契約書を結んだ話の内容などです。また『生徒指導部よりのお知らせ(壁新聞)』を適宜発行し、具体的に自転車の危険な場所や、バス乗車などの写真を教室に掲示します。

生徒指導は立派な社会人になるためには不可欠で、家庭と学校の協力が必要です。また良いことをやった場合は褒めることが大切であり、本人にとって善い行いは快感なのです。高圧的な指導では効果が上がりませんが、一方全く自由放任で見て見ぬふりをする事は無責任です。

生徒が社会に巣立つとき、しっかりした自己肯定感と自立心を持ち、自己中心でなく他人に思いやりのある『真の紳士・淑女』として社会に貢献し、自身の幸せを追求してほしいと念願しています。

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