今回は,本校の高校2年生が4月に取り組む物理実験の一つをご紹介します。
実験の名前は「一発的中飛行計画」です。
写真にあるように,使用する道具はスタンド,針金,ナット,木のスティック,カップといった,どれも身近で素朴なものばかりです。
針金でつくった振り子を持ち上げて離すと,振り子は最下点でスティックに衝突します。その瞬間,針金の先についたナットが振り子から飛び出し,空中に放り出されます。このナットが描く軌道を見極め,離れた場所に置いたカップに一発で入れる——それがこの実験の目標です。
ただし,この実験にはルールがあります。
試行錯誤を重ねて「当たるまで調整する」ことは禁止。
授業で学んだ物理の理論を用いてナットの軌道を計算し,その結果に基づいて,ただ一度だけ実験を行うのです。
計算を終え,いよいよ迎える実験の瞬間,教室には緊張感が漂います。
そしてナットが美しい放物線を描き,見事カップに吸い込まれた瞬間——
生徒たちは思わず歓声をあげ,班員と成功の喜びを分かち合います。
実際の授業では,カップを床に置くなど,写真よりもさらに長い距離で実験を行いますが,それでも「一発的中」は十分に可能です。
この実験は,物理の中でも「力学」と呼ばれる分野に位置づけられます。
力学の魅力の一つは,物体の未来の位置や運動を,理論によって予測できる点にあります。
計算による予測と,実験による結果が一致したとき,生徒は「物理は現象を理解する学問なのだ」という実感を得ます。
年度はじめにこの実験を行うことで,生徒は,これから学んでいく物理の理論や実験に対して,自然と期待感を高めていきます。
「一発的中飛行計画」はシンプルな実験でありながら,理論で予測し,実験で確かめるという物理学の醍醐味を味わえるものです。
本校ではこのような生徒実験を数多く用意し,実験と理論を行き来しながら科学を楽しむカリキュラムを展開しています。
ぜひ,「考えて,試す」ことの面白さを,日々の学びや生活の中でも感じてください。

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理科の散歩道 #5 「色の変化は化学の不思議を解き明かす?!」今回は、市川学園の化学実験室を覗いてみます。
「酸とアルカリ」の単元を学んでいる中学2年生が実験をしています。
小学校でも習う「酸とアルカリ」ですが、中学校ではそれらの正体が何なのかを明らかにしていきます。
BTB溶液(最初は緑色)を含む寒天(※1)入りチューブに、塩酸を1滴たらして真ん中だけ黄色にした後、左右から電気を流します。
そうすると、真ん中の黄色の部分が少しずつマイナス極側に移動していく様子が観察されます。
一方、水酸化ナトリウムを1滴たらして真ん中だけ青色にした後、左右から電気を流すと、真ん中の青色の部分が少しずつプラス極側に移動していく様子が観察されます。
この実験からわかる「酸やアルカリ」の正体とは……?
この実験のように、目では見えない原子や分子の世界を、色の変化を使って調べることができます。
色の変化は化学の不思議を解き明かすヒントになるのです。
高校生では、色の変化を使って水溶液に含まれる物質の量を調べる『滴定(てきてい)実験』を行ったり、溶液に色が付くまでの時間を測定することで温度や濃度(濃さ)によって化学反応の速さがどのように変わるのかを調べる『時計反応』という実験を行ったりしています。
さらに、高校3年生では、「どうして物質に色がついて見えるのか」という本質的なことを学んでいきます。
身の回りにもいろいろな色が溢れています。
化学の不思議を解き明かしてくれるヒントをくれる“色”に注目してみましょう。
(※1)用いた寒天は実験用です。20%BTB溶液、0.2 mol/L硝酸カリウム、2%アガロースの混合溶液。


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理科の散歩道#4「見て、さわって、物理がわかる。3Dプリンター教材」