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2026.03.31理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#244 強さとやさしさ・・・いま必要なこと

2026.4.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 3月は別れの季節であり、新しい出発への準備のときです。3月4日には、第78回高校卒業生417名の卒業式(卒業証書授与式)を、田中甲市川市長、二川則義同窓会長、野村あずさ後援会長をはじめ、多くの来賓にご臨席いただき、厳かな中にも和気あいあいとした雰囲気で、無事に挙行することができました。学年主任・担任を先頭に入場する卒業生を拍手で迎え、君が代斉唱、理事長・学園長挨拶、市川市長挨拶、卒業証書授与、賞状賞品授与、校長式辞、同窓会会長挨拶、祝電披露、卒業生からの記念品目録贈呈、卒業生への記念品贈呈、卒業生謝辞、卒業の歌「旅立ちの日に」を保護者に向けて合唱し、最後に校歌斉唱で式を締めくくりました。その後、卒業生の退場を見送り式典を終えました。毎年のことながら、感動する時間です。午後には、後援会・卒業生主催の謝恩会があり、お世話になった先生方(学園幹部、学年教職員ほか)への感謝の言葉と記念品贈呈、学園生活での思い出の映像、余興、合唱「3月9日」など、短時間でしたが充実した心のこもったひとときでした。
 中学は99%が市川高校に進学する(内進生)ので、卒業式でなく修了式としています。23日の終業式の日に、國枝記念国際ホールにて、理事長挨拶、卒業証書授与、校長祝辞を行い簡素ながら心を込めた門出を祝う式を行いました。

 さて、作家の司馬遼太郎は晩年「二十一世紀に生きる君たちへ」(注)というエッセイを、小学校6年の教科書(大阪書籍:小学国語下)に書きました。
 技術革新のスピードが速く、自国第一・自分第一主義、対立と分断が続く今こそ、価値あるメッセージであり、その要旨を以下に記します。

1.空気・水・土など自然こそ、不変の価値であり、人間は他の動植物とともに自然に依存しつつ生き、生かされてきた。
2.人間は古代でも中世でも自然こそ神々とした。自然をおそれ身を慎んできたが、近現代になり人間こそが一番偉い存在だと思いあがってきた。
  人間は自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされているという素直な態度こそ希望であり君たちへの期待である。
3.君たち自身のことである。人間は、自分に厳しく、相手にやさしい、素直で賢い自己を確立しなければならない。
4.21世紀は科学・技術がもっと発達するが、洪水のように人間をのみこんでしまってはならない。人間が科学・技術を支配し、良い方向にもっていってほしい。
5.人間は孤立しては生きられず、社会という支え合う仕組みを作っている。人間は自己中心でなく支え合う存在であり、助け合う、いたわり、他人の痛みを感じること、やさしさが大切である。これらは本能ではないので訓練が必要である。これがしっかり根づけば、他民族へのいたわりも湧き出る。
6.君たちは自己を確立し、魅力ある頼もしい人間になってほしい。君たちの未来が真昼の太陽のように輝いていると感じた。
 (注)掲載本:「十六の話」(中央公論社)、「二十一世紀に生きる君たちへ」(司馬遼太郎記念館)および(朝日出版社)

 司馬さんは、21世紀を背負う若者へ、頼もしくたくましい強さを持った人間であるとともに、自己中心でなく、やさしさ・思いやり・人の痛みを感じ、生かされているという謙虚な気持ちを持たねばならないと言っています。
 今、世界では戦争や紛争が収まらず、むしろ拡大・エスカレートしています。力こそ正義、強ければ何をやってもよいという風潮が広がり、民主主義・法の支配・基本的人権が危機にあります。これが本当の強さなのか、いま真の強さとは何かを考えてみる必要があります。

 奇しくも、今年の東京大学の入試における英語問題2(A)は、下記の通りでした。
 「以下の問いに、60~80語の英語で答えよ。What does it mean to be strong?」
 まさに知識でなく思考力を測る問題であり、強いとは何か、単なる肉体的な力ではないものとして、「強さ」や「弱さ」、他者との関係などを理解し論じる問題です。
 正解はいろいろあると思いますが、強さの定義、具体的内容が必要でしょう。
 回答として、「強いとは、単に身体的な力や恐れを感じない力を意味しない。真の強さとは、困難に正直に立ち向かい、あきらめず、自分の弱さを受け入れ、失敗しても努力を続ける力にある。また、強い人は、他者を理解し、特に弱者を支える。困難にあっても忍耐と勇気を示す。強さとは他者を支配することではなく、共感すること。逆境でも助け合うことである。」など考えたい。

 強さを示す有名な言葉として、下記の言葉を思い出します。
「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。」米国の作家レイモンド・チャンドラーの小説プレイバックの中で、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウに言わせた名言です。 以下が原文です。
 「 If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」