NEWS新着情報

2025.02.28理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#231 新しいことに挑戦すること・・・起業について

2025.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 2月は、高3生が大学入学共通テストを終え、それぞれの目指す大学、目指す分野の一般選抜試験に臨んでいます。(すでに学校推薦型・総合型選抜試験は発表もされています。)本館3階の自習室で朝早くから黙々と学ぶ高3生の姿を見ると、顔が引きしまり美しささえ感じます。また自習室周辺の机で友人同士考え話し合っている姿もあります。全員に希望の大学・分野に進んでもらいたいと願うと共に、合否にかかわらず、限界まで頑張った力は必ずや人生に役立ち、失敗にも大きな学びがあると心から激励しています。
 さて2003年新校舎の開校時から実施している土曜講座は、学園の大きな特色としている課外講座です。今年度は年間8回、16人の講師の方に来ていただき、90分の講演・質疑応答を行ないました。中1~高3まで自由に参加でき、各分野の識者の講演を通じて広い分野を学び、生徒達は大きな刺激を受けています。すでに開始以来延べ400人以上の講師の方にご講演いただいています。分野は、自然科学、工学、医学、情報、文学、歴史、地理、法律、経済、哲学、芸術、音楽、ビジネス、起業。健康など多岐にわたります。講座がきっかけで、学ぶ方向、学び方、生き方等を知り、講師の「ひとこと」が自分の人生に大きく影響する人生・教養講座です。著名な方々に若い生徒のために来校いただき感謝しています。勿論各方面で活躍されている卒業生も積極的に講師を引き受けてくれています。ノーベル賞受賞者である故小柴昌敏、野依良治、故根岸英一、大隅良典各先生にも来校いただきました。
 今年度の土曜講座の最終日は、学園卒業生(高校36回)ナビタイムジャパン創立者、代表取締役社長大西啓介氏に、『経路探索技術で社会課題を解決』と題し、学生時代の研究から起業の経緯、今後の事業展望について話していただき、後輩生徒に大きな刺激を与えてもらいました。講演後の質疑応答が途切れなく、質問を打ち切りにせざるを得ないほどでした。概要は次の通りです。

1.大学院時代から研究してきたことを、研究室の後輩とたった2人で、父親の会社(大西熱学)の一部門としてスタートした。ナビゲーション技術を開発、PDA(電子
 手帳)マーケットで存在感を得、一定のメドがたち、2000年ナビタイムジャパンとして分社独立。
2.起業は最初が重要で、10年間ぐらいは極めて少人数で目標の開発をしつつ、その間は夜12時前に帰ったことがない程働いたが、楽しかった。
3.資金調達を外部に求めると短期で成果を求められ、本物の開発ができない。自分たちの僅かな資金 と外部のソフト開発など副業で食いつなぐ覚悟が必要。
4.その後も非上場を貫きむやみに拡大をせず、自前の技術の開発・蓄積に特化してきた。現在社員は約450名であるが、外注はせず全て自製を貫いた。外注すると
 技術やノウハウが自社に残らない。
5.トータルナビゲーションとしての自社の特徴
 ・全国バス・フェリーのデータを100%もつ
 ・ユーザーニーズに合った検索条件でルート探索できる・・フリーパス優先、国際間トータルナビなど
 ・電車、バス、自動車、トラック、自転車、バイクなど移動手段別に最適アプリを提供
6.社会課題の発見と解決
 ・独自開発の電車混雑予測技術で、電車の空いているルート提示
 ・赤ちゃんや子連れ移動のサポート
 ・リアルタイムで日陰マップ提供
 ・トラックカーナビ、観光バス専用カーナビ
 ・訪日外国人観光客向けのナビ・・インバウンドと地域活性化に貢献

 最後に高校時代の学びが如何に役立つかを、数学を例にとり具体事例で説得力ある話をしていただきました。
 生徒へのメッセージとして、『目の前の課題に真摯に向き合うこと(難しい問題は分解して考える事で解決する)』を色紙に書いてもらいました。
 今多くの企業が株価や売上・収益で競い合い、またグローバルな競争をしています。起業についても新しい技術や戦略で会社を立ち上げ、外部資本を得て上場し、成長を目指すことが推奨されています。一方ナビタイムのように非上場を続け、独自の技術や戦略でグローバルに活躍している企業も多数あります。今後日本人の特色を生かした産業・企業が多くでて、社会に貢献することを期待したいと思います。 

『継続は力なり』