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2025.06.24SSH

理科の散歩道 #2 「なずな池の四季」

本校の北館中庭に、「なずな池」と呼ばれる小さな池があります。
人工の池ではありますが、ここには、自然の時間がやさしく、ゆっくりと流れています。

春の風が、そっと吹き抜ける頃。

近くの調節池から、ヒキガエルの夫婦がやってきて、
今年もまた、たくさんの命をこの池に預けていきました。

千を超えるちいさな命は、
水の中でしずかに育ち、五月の終わりに、立派に育って、しずかに旅立ってゆきました。

カエルたちの季節が終わるころ、空のうえからトンボが舞い降りてきます。

産卵の水面をさがしながら、空と池とを結ぶ、細い橋のように飛び交います。

夏。

セミの声が、一斉に鳴り響き、
中庭には抜け殻が点々と、宝探しの景品のように残されています。

青く茂った葉は、やがて人工の庇(ひさし)となり、
まぶしい夏の光をやわらかく和らげてくれます。

秋の訪れは、カツラの香りから。

ふと鼻をくすぐるのは、どこか懐かしい、キャラメルの匂い。

生物室の窓からのぞけば、黄金色に染まるカツラと、緑の常緑樹が織りなす風景が、
まるで一枚の絵画のように、心をそっと染めてくれます。

そして、冬。

木々が葉を落とし、空はぐんと高く、広くなります。

なずな池のまわりはしんと静まりかえり、
中庭は息をひそめるように、その広さを見せてくれる季節となります。