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2022.02.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#197 「自利利他」の精神の重要さ 

                       22.2.1.
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 オミクロン株が急拡大する中、高校入試、中学第1回入試(幕張メッセ)は、昨年同時期の緊急事態宣言下での経験を生かし、全教職員の協力の下、無事安全に実行することができました。志願者は、高校は昨年比123%増であり、中学は昨年とほぼ同数でした。また高校3年生も一部地域に津波警報が出された中、15日、16日の大学入学共通テスト(2年目)を済ませ、各大学の個別入学試験に向け最後の努力を重ねています。
時々3階の自習室の近くを回ると、厳しい顔つきではあるが明るい生徒に多く出会います。一人集中して真剣に学ぶ姿、友と白板に書き討議し学び合っている様子、教師に真剣に質問に来る生徒など、それぞれ頼もしく感じます。心の中で声援を送る日々です。

現在1月21日から2月13日の予定で、2度目のまん延防止等重点措置が千葉県全域に適用されています(全国34都道府県に適用)。過去を振り返ると20年2月28日に全国一斉休校がスタートし、その後4月7日緊急事態宣言(5月25日解除)、更に21年に入り1月8日2度目の緊急事態宣言(3月21日解除)、4月20日まん延防止等重点措置(県内一部、5月11日解除)適用、8月2日3度目の緊急事態宣言(9月30日解除)でした。感染力が強いオミクロン株に対し、一層感染症防止と学校運営・教育活動継続の両立を推進してまいります。

1月は生徒休日が多い中、国際的に活躍されている2人の方に来校いただき、国際的仕事に関心を持つ生徒に大きな刺激を与えていただきました。

お一人は昨年3月にも来ていただいた本学 高校28回卒業生である伯耆田修(ほうきだ おさむ) 在ボリビア日本国大使館特命全権大使です。大使の帰国の機会に1月14日再度来校いただき、特別講座「夢は叶う、それを実行するのは自分自身」の題で講演いただき、中1生から高2生50名が熱心に参加しました。

ご自身のキャリアの外務省本省及び大使館・領事館の仕事内容、特に長く勤務された領事局、在外領事館・中南米諸国の仕事、災害や事件・事故など緊急時の邦人支援、平時での相談、日本からの要人の現地訪問時の支援など具体的な多様な仕事内容を説明されました。特に現場で人のために尽くすのが自分にも役立ち且つ楽しいことを強調されました。後半は多くの写真を使い災害時や事件発生の折の支援情況など具体例をリアルに説明されました。
また高校卒で一般職として入省し、夜間大学を7年かけて卒業し、主としてスペイン語圏の20年にわたる海外勤務と本省領事局勤務が長く、大使就任前の直近は、在レオン(メキシコ)総領事でした。一般職から大使、総領事への昇進は1%の確率、現場で起こる一つ一つの仕事を誠実に迅速に実行することで道は開ける。人を助けたときに、安心した顔を見ると本当にやりがいを感じるとのことでした。

もうお一人は、1月8日の土曜講座に、国連食糧農業機関(FAO:本部ローマ)駐日連絡事務所所長 日比絵里子氏をお招きし、「世界の飢餓と栄養不良に終止符を打つ~持続可能な社会へ」の題で講演いただき、中1生から高3生80名が熱心に参加しました。
日比さんは、米国の大学院修士ののちジャーナリズムの仕事に就いたが、自分に合わないと判断し、方向転換し国連の仕事に進んだとのことで、途中で道を変えても自分自身が真に面白いと思う仕事にチャレンジすることが大切と説かれました。ニューヨーク、ウズベキスタン、ローマ、シリア、サモア等海外経験も豊富かつ多様でした。FAOの活動内容、世界の食糧安全保障の現状、新型コロナウイルス感染拡大の影響、持続可能な食料システムを目指しての活動、日本がやるべきことなど情熱的に話していただきました。持続可能な開発目標(SDGs)の「飢餓」に深く関係し、食料の安定確保と栄養状態の改善、持続可能な農業の推進特に家族農業の重要性などを説かれました。生徒へのメッセージとして「勇気を持って前進するのみ、世界に羽ばたいてください!」と色紙に書かれました。

両講演共に会場での質問が多く、更に講演終了後の個別の質問にも丁寧にお答えいただき、アドバイスをいただきました。生徒はパンデミックの中だからこそ、グローバルな仕事に関心が深いことが分かりました。

さて【自利利他】ということばがあります。「自利とは、自己の修行により得た功徳を自分だけが受けとることをいい、利他とは、自己の利益のためでなく、他の人々の救済のために尽くすことをいう。この両者を完全に両立させた状態に至ることを、大乗仏教の理想とする。」(精選日本国語大辞典)
一方、小職の親しくした(株)TKC(会計事務所の情報サービス会社、東証1部)の創業者飯塚毅会長は、TKCの経営理念としてとして、「自利利他」の実践を掲げ、次のように述べています。「大乗仏教の経論には「自利利他」の語が実に頻繁に登場する。解釈にも諸説がある。その中で私は、「自利とは利他をいう」(最澄伝教大師伝)と解するのが最も正しいと信ずる。すなわち「自利即利他」の意味である。「自利と、利他と」といった並列の関係ではない。世のため人のため、社会のために精進努力の生活に徹すること、それがそのまま自利すなわち本当の自分の喜びであり幸福なのだ。そのような心境に立ち至り、本物の人物となって社会と大衆に奉仕することができれば、人は心からの生き甲斐を感じるはずである。」(『TKC会報』1998年新年号、一部要約)

本学園にも「善行は快感である」の創立者 古賀米吉の話があり、他人に良い事をすれば、自分にとっても快感で有り結局は自分も頼られ幸せになることを述べています。また「情けは人の為ならず」は、人に親切にしておけば、必ずよい報いがあると言う意味であります。

国際的に活躍するお二人の話を聞きながら、改めて自利利他の精神の重要さを思い、生徒諸君には、自分の好きなことを追求しつつ、あわせて世のため人のため役立つことが、結局は自分の幸せに通ずることを学び、随所でリーダーになって活躍ほしいと念願しています。