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2022.10.31理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#206 人への投資は私学教育から・・・米百俵に学ぶ

2022.11.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 10月は行事も多く生徒の活動が活発な月です。なずな祭(文化祭)は、昨年同様一般公開はせず、新たに保護者の皆様には参加いただきました。「令和浪漫」と題し、生徒が計画し、生徒が運営し、生徒自身が楽しむ祭りでした。前日の準備日の全員での開会式、2日目の最後に閉会式と後夜祭、翌日は片付け日とし次年度のため中2生全員が中3生の演劇を鑑賞する工夫もされました。高校球技大会は、雨天ながら5種目での学年順位及び高校全体順位を競いました。この2つの行事は卒業後も常に語られる行事です。中間考査後には、高1,高2全生徒が幕張メッセで開催のCEATEC見学研修を行い、最先端のICT, AI, メタバース、要素等の技術と応用を学びました。月末の3年ぶりの中2京都研修では、各クラス共に個性のある表紙のパンフレットをつくり、班別行動、クラス別行動など2泊3日の有意義な活動を楽しみました。
 また後援会主催の「保護者交流会」がオンラインで実施され、第1部は、卒業生6人のパネリストの対談を行いました。中高時代の活動内容、先生との関係、受験対策、親子の関係、学園の良かったことや思い出、大学での活動などそれぞれ違う体験を積極的に語ってくれ、保護者の皆さんの心に響いたと思います。第Ⅱ部は少人数(5人~10人)のグループ別の保護者同士の交流対話会が行われました。

 10月8日(土)には令和4年度千葉県私学振興大会が幕張メッセで行われ、熊谷千葉県知事、国会議員、河上千葉県私学振興議員連盟会長他多くの県議会議員が出席され、佐久間千葉県私立中学高等学校協会会長から、千葉県私学の情勢の報告をし、保護者代表挨拶、来賓各位の挨拶の後、大会決議を要望書として知事と県議会議員代表に手渡され大会を終了しました。19回目の大会ですが、政治家の皆様に公教育の一翼を担う私立学校の課題を知っていただく極めて重要な機会です。千葉県には、現在私立中学校が24校、全日制高等学校が54校あります。国及び県から私立高校への公費支出は、国からの財源措置(補助金と交付税)に県単独の補助額を加え、高校生一人当たり年間37.7万円(内県単独は27500円)です。平成20年までは県単独補助は0円またはマイナスのこともあり、全国最下位の額でしたが、その後年々増加し全国7位となりました。関係各位の支援のお蔭です。これでも公立高校に支出される額の3割であり、残りは保護者からの授業料等で経営を行っています。一方家庭の教育費負担軽減をはかるため、授業料に対し国から就学支援金が支給され、これに加え、県の授業料減免制度が設けられています。現在保護者の世帯収入が590万円までは最大39.6万円、910万円までは11.88万円が国から支給されます。640万円以下は授業料全額まで県制度で減免されます。この制度も都道府県毎に異なり、東京都は910万円までは全額減免されます。今年度の私学フェアで来場者に実施したアンケートでは、「私立高校と公立高校と学費が同程度としたらどちらを選びますか」の問いに対し、私立第一希望の回答者は全員が私立、公立第一希望及び未定の生徒の77%が私立を選ぶと答えています。一方少子化過疎化の中、地域により定員確保が苦しい私立もあり、全日制高等学校54校の内、毎年40~50%の学校が定員未充足になっています。お蔭様で当学園は中学、高等学校共に毎年定員を充足でき且つ定員に極めて近い入学者数を守り、県の定員遵守の方針に合致しています。
 千葉県の私学全体の団体として、千葉県私学教育振興財団があり、退職金事業等共通事業を行い、事務局は各学校種(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、専修各種学校、短大、大学)毎の協会の事務局でもあり、私学の拠点です。前身である千葉県私学団体連合会が、先人の尽力で、1954年(昭和29年)結成、同時に中学高等学校協会等学校種毎の協会が設立されました。図らずも小職は第11代の私学団体連合会会長、初代の私学教育振興財団の理事長を務めさせていただきました。終戦後まもなく公立重視で、私学振興の法律も不備な中、国県はじめ多方面の尽力で私学振興が推進されてきました。高度成長で中学卒業生が急増の時代には、公立で引き受けられない生徒数を、私学が懸命に校舎等を増強し対処してきました。
 今各分野で人への投資が重要であると盛んに云われています。人・物・金・情報のなかで、我が国は、天然資源が少なく、人財こそが貴重な資源であることは云うまでもありません。江戸末期に財政窮乏の長岡藩に他藩から贈られた百俵の米を、藩の大参事小林虎三郎が藩士に分け与えず、学校開校の費用に使ったのは有名な話です。小林虎三郎曰く、「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万俵、百万俵となる」と諭したとのことです。
(山本有三の戯曲にもあり。)

明治維新以降近代日本への発展は、海外留学、西欧教育の取り入れ、新しい教育制度への急速な変革があり、人への投資、特にリーダ教育への投資に公が熱心な時代でした。一方この間多数の情熱ある人が、それぞれの理想を持ち私立学校を創立し人財を育成しました。戦後も民主主義国家として高度経済成長・人口増加時代の教育、男女共同参画社会時代の教育から近年の能動的学習や協働学習、ICT活用の教育へと教育改革が推進されてきました。この間私学は常に先進的活動をし、国公立の足らざる部分を補う役割を担い、公私協調して、学校教育を推進してきました。私学教育振興政策も年々改善され、2007年の教育基本法の改定では、私立学校の重要性と国・地方公共団体の私立学校教育振興の義務が明記されました。(第8条)少子化の中各私立学校は、各々の建学の精神をベースに、特色を持った教育と経営努力・改革をしています。公教育の中で益々重要な責任を担う私学の発展こそが、人への投資、次世代への大きな資産となると確信し、国県の一層のご支援をお願いする次第です。