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2023.01.10理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#208 自力と他力

2023.1.10
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 新年おめでとうございます。それぞれ皆様平穏なお正月を迎えられたと存じます。今や世界はあらゆることでつながっているネットワーク型地球船です。ロシアのウクライナ侵攻をはじめ戦火に苦しむ人々、また貧困にあえぐ人々を思うと胸が痛みます。今こうして平和平穏で健康に新年を迎えられることは、まさに有ることが難い、有難いことです。
 「静かな眼、平和な心、その外に何の宝が世にあらう」三好達治の冬の日の一節を思いおこします。
 今年卒業する高校3年生は、3年間のコロナ禍の中をよく頑張ってきたと思います。1月14日から始まる大学入学共通テスト、個別大学2次試験等を最後まで諦めず、それぞれの目指す道に進んで欲しいと心から念願しています。人生100年時代、寄り道回り道も必要なときがあり大切です。自分の目指す道、好きなことを諦めないで欲しいと思っています。2100年まで77年、まさに生徒達は21世紀の主役であり宝です。
 さて新年に当たり思うのは、絶えず磨く自分の力「自力」(じりき)の重要さと他の力「他力」(たりき)のお蔭ということです。
 生徒も我々教職員も常に学び続け「自力」を高めると共に、「他力」の恩恵をいかに多く得ているかを思います。家族、友人、職場の協働者、エッセンシャルな仕事をする人々、人だけでなく自然や他の生きもの、環境など「他力」に支えられて生きていることを改めて学びます。「生きているだけでなく、生かされている自分」という感覚が大切と思うのです。そこには感謝、お蔭様、謙虚という概念が生まれます。
 受験に向かう生徒も「自力」に自信を持ち、かつ家族、先生はじめ多くの「他力」に感謝することから道が開けると思います。人間は決して傲慢になってはいけない、謙虚な気持ちが成功に導くと信じます。旧年末に作家五木寛之の「他力」などの本をあらためて再々読し、昨今の混乱した世界を見ながら感じた次第です。
 旧年2学期は、修学旅行、宿泊行事等も行い、生徒の活動がほぼ平常に近い形で実施できました。17日間の冬期休暇も冬期講習、部活動、宿泊活動、課外活動、また高3生の最後の頑張りに対しての支援等、感染防止対策をとり無事実施することができました。元日も高3生のために自習室を開けました。
 今年は学園として更に教職員全体で下記の実行・実践を推進します。
 第一は、教職員のチームとしての力を更に高めます。教職員個人としての教育力の研鑽・向上、即ち優れた個の力は基本ですが、個の力と共に学年チーム、教科チーム、校務分掌の部としてのチームなどあらゆる活動単位でのチーム力を更に強化・進化させます。サッカーやラグビー等強いスポーツチームは勿論、優れた研究やプロジェクトの成功、優れた会社など卓越した組織体は、全て小集団の活力あるチーム力の集合によるものです。
 第二は、我々教職員が、生徒の人間力、即ち教養の基本であるマナーやモラルについて、模範になることを更に重視します。後ろ姿を見せることです。「紳士淑女たれ」は本学園の不易のモットーですが、我々教職員こそが、紳士淑女として、マナーやモラル、具体的には良き挨拶、きちんとした身だしなみや生活習慣、約束を守る、整理整頓など生徒に範を示すことが何よりの教育です。生徒が「さすが市川学園生」と言われるには、まず我々が「さすが市川学園の先生」と言われなければならないと思っています。
 最後に、第5次中期計画の初年度として種をまき、楔を打ち込み、創立90周年(2027年)を目標に、生徒や保護者の皆様に更に評価され信頼される卓越した学園を目指して活動します。
 今年こそ新型コロナ感染症が収束し、世界に平和が近づき、日本社会が活性化する明るい年を念願し、皆様のご多幸ご健勝を祈念いたします。

注*五木寛之『他力』、『大河の一滴』(幻冬舎文庫)