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2023.04.30理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#212 ChatGPTの時代こそ創造力と人間らしさが大切

202355.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 23年度も1ヶ月たち、新入生もやっと環境に慣れてきました。毎年4月のスケジュールはほとんど同じですが、新たな生徒を迎え、在校生も教職員も学年・クラスが変わり、常に年々新たなりです。2日間の新任教員研修会、各学年・教科・部・委員会の打合せ、23年度方針発表会、始業式、入学式、新入生オリエンテーション、クラブ紹介、中1・高1・高3の保護者会、生徒健康診断と続きました。

 念願の大野グラウンドの管理棟(部室)が完成し、4月6日にはささやかな落成式を行いました。総床面積156㎡、更衣室2室、管理室、倉庫、男女トイレなどからなります。硬式・軟式野球部が更に盛んになり大いに活用してくれることを願っています。小職からは下記の挨拶をしました。
 『長い間不便をかけました。これから選手諸君は、管理棟を自分の家と思い、整理・整頓・清潔・清掃の4Sを通じて良い環境を維持してください。「野球を学ぶ」ことは勿論大切だが、「野球で学ぶ」ことがより大事です。「野球で学ぶ」とは、野球を通じてマナー・モラルや規則を守り、協力とフェアープレイの精神を学び、友情をはぐくみ、目標に向けやりぬく力をつけるなど、「人間力」を養うことです。試合で勝つひたむきな努力と共に、「さすが市川学園の野球部の選手」といわれたい。WBC侍ジャパンの活躍は感動的でしたね。大谷選手はじめ活躍した選手、監督の采配は素晴らしく感動しました。特に栗山監督の誠実な人間性とひたむきに学び続けた長い努力の人生に学びたいと思います。まさに第三教育の名人です。』 
 栗山監督の野球人生は努力と学びの人生です。高校時代甲子園への夢を持ちつつもなし得ず、東京学芸大学教育学部に進み、硬式野球部に入部、東京新大学野球連盟のリーグで投手・野手として活躍しました。教員免許を取得し卒業後教員を目指していたが、野球への夢を断ち切れず、プロ入団テストを受けヤクルトへドラフト外で入団し、病気(メニエール病)に苦しみつつも、約6年間外野手として活躍しました。その後20年間は野球解説者、スポーツキャスターとして活動し、また大学教授としてスポーツメディア論などを専門として学生を指導し、更に少年野球の普及育成に努めました。2012年から10年間北海道日本ハムファイターズの監督、その間大谷翔平2刀流を育成。まさにリーダー、研究者、教育者、起業家であり、読書家で著書も多く、多能な人間力のある方です。非常に勉強熱心で、多くの監督やリーダーを訪問し、教えをノートにとり学び続ける、まさに第三教育の名人です。特に三原マジックと言われ、西鉄等の監督を歴任した知将三原脩監督が自ら書きとめた「三原ノート」に多くを学んだとのことです。

市川大野グラウンド

 さて最近話題のChatGPTなど対話型生成系AIは、異次元のAI革命、インターネット・スマホ出現以来の大革新ともいわれ、世界的に活用され、問題点・デメリットも指摘されています。質問や指示を入力すると自然な文章や画像で回答してくれるAIです。昨年11月末新興企業Open AI社(CEOサミュエル・アルトマン)がChatGPT(GPT-3)を公開、僅か2ヶ月でアクティブユーザーが1億人に到達。その名の如くChat(対話する)Generative Pre-trained Transformer(生成可能な事前学習済み変換器)であり、大規模言語モデル(LLM)を基に、教師あり学習と強化学習の両方で学習しています。本年3月末公開された有料版ChatGPT-4(月20ドル)は更に文章の質や正確性が向上しているとのことです。
 すでに我が国でも官庁・自治体・民間企業・大学、個人などで利用され、メリット・活用分野と注意事項、倫理的・法律的課題やリスクが討議されています。社会全般にも、仕事や雇用にも大きな影響を及ぼします。この分野のAIの研究も国として強化すべき必要があります。教育・学習に於いては、教師、生徒にも大きな影響があります。生徒の思考力・判断力・表現力を増進しつつChatGPTに相談しうまく活用することが大切で、安易にChatGPTに頼ることは危険ですし、ましてやChatGPTの回答をそのままコピペすることは全く評価されず、自身の思考力を阻害することになります。一般の多くの仕事の上でも上流の計画や創造に力を入れ、他のAI同様ChatGPTも道具として中間の事務・整理に有効活用し下流の対話など人間力に力を注ぐ必要があります。

 先ずは使ってみることでしょう。注意事項も必要で、いずれ文部科学省からもガイドが出ると思います。私見ですが、利用面で当面次のような注意が必要でしょう。
 1.仕組み上誤った情報もあり間違った回答もあるので、内容の信憑性には十分注意する。
 2.一般社会や通常のネット社会と同様にマナーやモラルには注意する。
   ChatGPTとの対話は人と人 の対話のように礼儀やマナーが重要。
 3.個人情報、プライバシー、内部情報、機密情報は、ChatGPTに送信しない。
 4.自分の創造力、思考力、判断力、表現力を大切に。論文や課題研究において、ChatGPTの回答を
   直接コピーするなどは不可。評価されず、自身の学力・知力向上を阻害する。あくまでも相談。
   著作権に触れることもある。
 5.ChatGPTはAIチャットボット(しゃべるロボット)であり、人間の創造力、思考力、意識、感情
   などには及ばないことを知ること。
 なお、質問や対話を明確に具体的にすること。明確でない質問は回答も不正確になる。より具体的質問が大切である。

 東大が4月3日に副学長名でだした『生成系AIについて』は、第一弾としてこのAI活用と問題点を適切に指摘していますので参考までに目次と、URLを記します。
 https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/docs/20230403-generative-ai
「生成系AI(ChatGPT, BingAI, Bard, Midjourney, Stable Diffusion等)について」
 ・・・・・目次
      何ができるか、「検索」ではなく「相談」するシステム
      仕組み上、書かれている内容の信憑性には注意が必要
      機密情報や個人情報などを安易にChatGPTに送信することは危険
      将来著作権や文書を用いた試験・評価に問題が発生する可能性がある
      社会に対する影響
      本学の学生や教職員はどう対応したらよいか

 また4月25日には、(日本)人工知能学会が、会長/倫理委員会の声明文を出しました。一部要約すると「文章の生成や相談事、検索的用途など、多彩な使い方ができ、アイデアの創造や効率化などの点で極めて有用性が高いAIである。まだ発展途上の技術であり、社会規範や倫理にそぐわないものを生成する可能性がある。従って出力をうのみにせず、長所・短所を理解した上で利用することが大切である。教育の場では、一律な利用の禁止でなく積極的活用を検討すべきであり、自分で考えることなしに答えのみを教えてもらう用途には利用すべきではないなど、皆で検討すべきである。」全文URLは下記です。
 https://www.ai-gakkai.or.jp/ai-elsi/archives/info/

 ChatGPTなどAIがますます進歩?する時代、人間の創造力、総合知、統合的判断力、優しさ、思いやり、共感力など真の人間らしさ・人間力が,ますます重要になるでしょう。他の先端技術(核技術、生命科学技術・・)と同様、開発や利用を適切にコントロールするのは、全て人間であることを忘れてはならないと思います。