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2017.05.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#140 温故知新…常に進歩・成長する学園へ

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市川学園理事長・学園長 古賀正一

去る4月15日市川学園は創立80周年を迎えました。例年創立記念日は休日としていますが、今年は学園が満80歳になる誕生日として、通常授業日としました。第1時限には全校で生徒集会を行い、理事長、校長の講話を行い、共に祝い、創立者はじめ先人に感謝する日としました。論語にある温故知新は、『昔のことをよく学び、そこから新しいことを得る』の意味で、80年前に旧制市川中学校(5年制)として開校した日に想いを馳せ、未来につなげたいと思います。

また当日は、生徒への記念品として、『クリアーファイル』、『ボールペン』、『80年の不易流行』(学園の沿革や80周年記念事業をとりまとめたリーフレット)、『創立者古賀米吉先生の生涯』(小冊子)、『われらの研究』(小冊子)を配布しました。

尚本年度は、創立80周年の年度として、募金をおこなっており、多くの事業、行事、印刷物発行などを行います。

1.  創立者と学園の歴史

創立者古賀米吉は、自ら学び続けた第三教育の名人であり、理想を求める教育者でした。明治24年(1891)福岡県に生まれ、9歳で父親を亡くし、母子家庭のため極めて貧乏な中、小学校、高等小学校(2年制)を卒業。勉学への意欲が旺盛で、地域の方の支援をうけ旧制中学校(現在の福岡県立嘉穂高校)に入学します。勉学とともに部活の剣道部主将、野球部の投手にもなり、文武両道のリーダー的存在でした。

卒業後は福岡師範学校に進学し地元で小学校の教諭となるが物足らず、上京して東京府の小学校教諭をつとめながら、更に英語教師の免許を取り、東京府立第四中学校(現都立戸山高校)の英語教諭、予備校講師、また鉄道省関連の教員など歴任しました。その間も、今の東京外語大学英語科、東京大学文学部(社会学)で学び続けました。

つまり、学びつつ働き、働きつつ学び、学問と仕事を並行両立させました。特に勉強の場として図書館を多く活用したため、自分で学ぶ第三教育の考えはこの体験からでています。

当時の官立学校の教育に対し、本当の教育は私立でなければできない、それも自分の理想の学校を作らねばと、強く思いをいだきました。時に40歳、安定した仕事を辞め、留学資金を得て2年間米国・英国に留学。そこで英国のリーダー育成の全寮制私立中学校(パブリックスクール)のイートン校などに出合い、自由と規律の精神、紳士の育成に感銘し、夢の実現を志しました。帰国後多くの方々の支援により46歳で市川中学校創立。まさに今のベンチャー企業設立のように大きなリスクをかけたものでした。

学園創立の1937年という年は日中戦争が勃発し、日本がまさに戦争に突入する不安な時代でした。しかも無名の新人の学校で、立地も田んぼや梨畑に囲まれた不便な場所。初年度は100人の生徒募集に対して32名の生徒しか集まらず、困難な開校でした。小さな3教室と物置兼教員室、先生はたった5人、一人で2教科をもつ状況でした。先生方の給料も満足に払えず、夜は皆自宅で塾や家庭教師のアルバイトをやり、生計をたてたといいます。

この様な苦難の中にあっても、創立者は自らの理想を失わず進みました。終戦後の苦しい時期を経て、創立30周年(1967年)頃にやっと軌道に乗り、世間からも千葉県に市川中学校、高校ありと言われるようになりました。校舎も新しくなり、第2・第3グラウンド、敬和寮完成もこのころです。

創立者は1983年(創立46年目)92歳で逝去、教育一筋の生涯でした。

創立60周年(1997年)の頃から、新しい学園計画(共学化・新校舎建設構想)がスタートし、2003年4月に現在の新校舎が完成し移転、中学1年から順次共学となり、『新生市川学園』がスタートしました。その後創立70周年(2007年)には国枝記念国際ホールが完成しました。

このたびの創立80周年(2017年)の記念事業として、2年前に総合グラウンドが完成し、そして今回ALICE(Active Learning For Ichikawa Creative Education)の名称の能動的学習に適した5教室がそろい、新しい方法の授業の準備がととのいました。

節目ごとに、学園は大きな進歩を続けてきましたが、今日の学園があるのは、歴代の多くの関係者のご尽力とご支援の賜物です。

2. 創立者のめざしたもの

一人ひとりの特色をよく見て伸ばす『なずな教育』(「よく見ればなずな花咲く垣根かな~芭蕉」)と自ら学び考え生涯学ぶ『第三教育』は、勿論建学の精神の基本ですが、他に創立者が良く使った言葉をあげたいと思います。

1)『高くより高く Higher,higher!』
創立者自身が学園の目標を高く持ち実行してきた。生徒にも目標、夢を高く持てという教えである。自分の力を過小評価してはいけない。進路目標も失敗を恐れず、自分が本当に行きたい大学や学科に挑戦してほしい。

2)『紳士たれ(淑女たれ)Be gentlemen,Be ladies!』
勉強ができるだけでは人間として不足。挨拶、約束守る、人に迷惑をかけないなど人間としてのマナーやモラル(徳と言っても良い)が、一番大切。社会にでて約束を守らないと信用されない。本当の教養は、マナーやモラルが基本である。

3)『善行とは快感(プレジャー)である』
人に親切にするなど善いことをすると自分自身気持ちがよい。人が幸せになり自分も幸せ。創立者は、市川善行会を設立、市内の小さなよい行いを発見し、毎年表彰している。(現会長は、高校8回卒北川善樹氏)

4)『仕事の大切さと生きがい』(この道より我を生かす道なしこの道を歩く~武者小路実篤)
最も大切なことは一生の仕事・職業であり、学園の3年間または6年間で自分の本当に好きなこと、将来の夢、目標を探してほしい。

3. 学園の未来について

80周年を節目に、更にこの学校を発展させたい。キーワードは2つ、

①『常に進歩・成長する市川学園』(生徒も先生も学校も進歩する)
②『学びの共同体市川学園』(生徒は勿論先生も、卒業生も、保護者も皆が学ぶ組織体)

です。これから20年後の100周年、45年後の125周年、70年後の150周年、私はそれを見ることは出来ないが、21世紀を存分生きる生徒、卒業生の皆さんが、学園発展の原動力になることを、切に期待しています。