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2017.07.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#142 『歩き回る経営』…常に答えは現場にあり

061775512017.7.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

7月にはいり、学期末試験、採点期間中の行事・活動、答案返却と指導、終業式と続き、長い44日間の夏期休業期間に入ります。生徒自身で計画できるこの期間は、貴重であり、勉学、学校行事、部活以外にも学校外・地域の活動、家族との時間など、楽しく有意義なことが一杯です。1日24時間は誰にも平等に与えられており、その時間を如何に有効に使い、自立し成長するか、生徒一人ひとりの活躍に期待しています。

学校行事として新しいことは、国際研修として、英国イートン校、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、カナダ研修(ホームステイ)に加え、米国のボストン(MIT,ハーバード大)およびダートマス大学で行うアメリカ研修が加わりました。

学園内を歩きながら未来を考えることがあります。今の生徒たちが活躍する時代は、世界人口100億人、人生100年時代、日本の人口1億人、財政赤字の縮小必須の中での経済発展、AI・ロボットや再生医療など止まることを知らぬ技術革新、不透明な世界秩序の中での日本の存在と平和維持など課題が多く、チャレンジングな将来です。次世代を担う品格あるリーダーの育成は急務です。生徒たちには、各々違う自分、人と比較せず自分らしく自立して生きて、随所でリーダーになってほしい。思いやりを持ち一方でたくましく幸せに生きていってほしいと常に念願しています。幸せとは、心の持ちようです。新しいことにチャレンジする姿、発表・表現する力、積極的に海外や校外行事、コンテストに参加する意欲など、今の若者の卓越した力に期待したいと思います。

さて私立学校の最終責任者である理事長の責務は重いものですが、校長を兼務している場合は別として、待っていては理事長には生の情報は、はいりにくく受信能力を高めねばなりません。

一方教職員へのメッセージの発信の機会は、学園では年度初めの方針発表会、主任部長会議、教職員会議や期末の朝礼、理事長・校長以下の幹部が毎週熟議する教育経営会議などを活用しています。日常の承認・決裁業務だけでは、理事長の使命を果たすことにはなりません。学園のビジョン・目標を示すこと、学園の統治に責任を持つこと、人材を登用すること、危機管理、予算・決算、中期計画、設備投資など経営業務、理事会・評議員会の主催など多岐にわたります。

現在および中長期の正しい経営判断のためには、日常の教育、学園の状況を十分よく知らなければなりません。通常の教育活動は、校長以下に任せつつ、理事長の視点から教育の現場を歩き回る経営、現場の匂いをかぐ努力を続けてきました。毎日の朝礼、授業現場の視察(当学園では、オープン授業など授業見学の機会が多い)、各種行事の積極視察、傍聴などを通じ、いわゆる『歩き回る経営』を実践しています。

『歩き回る経営』(Management By Walking Around)とは、経営戦略の一種で、活動的情報収集と活動的問題解決のため、米国ヒューレット・パッカード社を創業したW.ヒューレットとD.パッカードが考案し、日本でも、ホンダの3現主義(現場、現物、現実)に代表されるように採用されてきました。小職も企業にいる時代にモットーとしてきた行動指針の一つです。営業現場である顧客訪問、生産現場の工場、物流の拠点の倉庫、研究所、海外拠点の現地法人などの視察です。数字やレポートだけでなく、企業活動の現場を直接視察し且つ現場の人々との対話の中に、課題解決の答えはありました。『常に答えは現場にあり』です。

一方小職の思いや考えを教職員に伝えるため、全教職員に2001年4月より、『理事長メッセージ』を学内にメール配信し積もり積もって260以上になりました。その中から、2006年2月1日より保護者、卒業生、受験予定の保護者など学園に関心のある方々に向け、加筆修正し、毎月1日学園のホームページに、時々の学園の姿と共に『なずなメッセージ』(理事長メッセージ)として掲載してきました。これも140を超え、アクセス数もかなりあり、市川学園改革の一部を知っていただいています。今回まとめて冊子として発行することとしました。以前発行した『我以外皆我師』に続くものですが、11月の創立80周年記念式典までに刊行の予定です。

建学の精神である『一人ひとりをよく見る教育(なずな精神)』は、今こそICTなど最先端技術を駆使しての個別教育と教員の人間的指導により個性を伸ばすことに実を結ばせ、自ら学び自ら考え、生涯学び続ける『第三教育』は、能動的学習(アクティブラーニング)の基本となるものです。具体的教育実践を通じ、学園のリベラルアーツ教育を大きく開花する好機と考えています。日々新たな気持ちで、進歩・成長する学びの共同体として、前進してまいりたいと存じます。