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2017.11.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#146 異なる部門間交流の大切さ …『茶ットルーム(chat room)』に思う

2017.11.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

創立80周年式典や行事、事業の準備も着々と進み、そのひとつである『学園歴史センター(本館1階)』の改装整備は、直近10年間の出来事や成果を中心に追加展示するため、最終段階です。これを見ていると、10年間に積み上げたこと、学園内の教育改革、学外との連携が急速に進んできたことを感じます。

10年間の特色ある実績として、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の認定を2期10年にわたりうけ、生徒の課題探究、教員の授業研究を深く耕し、海外・国内の大会で多くの受賞実績をあげました。

また英国ケンブリッジ大学、オクスフォード大学、イートンカレッジ、米国ダートマス大学等での研修及びシンガポール修学旅行など国際研修が充実し、更に文部科学省の『トビタテ!留学JAPAN』などへの積極的応募による自主的留学、帰国生教育の拡大など、国際力の向上が顕著です。

さらに少人数リベラルアーツゼミ、東西哲学の熟読と対話の市川アカデメイア、論文作成ゼミなど教養力の向上に努め、各種外部コンテストでの多くの受賞があります。多様な難関国立私立大学への進学実績の向上(2017年東大合格18名)、学業としっかり両立する部活動など成果を挙げてまいりました。特に生徒の自主性、チャレンジ精神が加速されており、非常にうれしいことです。

さて、いかなる組織体(官公庁、企業、学校など)も、組織の各部門の自律性、独立性を推進すると共に、部門間の壁を低くし、異なる部門の交流・連携によるシナジー効果を発揮する闊達な組織運営が、昨今求められています。開発・研究などでも部門の境界のところに新しい芽が多く、異なった部門から学ぶべきことが多々あるとのことです。企業などでも異業種に学び連携する業際的活動・事業開発が大切です。

学校組織でも、各教科間の連携、学年同士の学びあい、担任・教科・部の間の連携が求められます。学校の組織は、フラットで小規模であり、工夫すれば部門の壁を低くすることは容易に出来ます。

今市川学園で、教職員のインフォーマルな自発的な学び、教科の枠をこえた学びが進んでいます。その例を紹介したいと思います。

きっかけは、校長のチャレンジをうけ、教職員研修委員会が2015年に立ち上げた自由参加の教科を超えた勉強会です。教職員の勤続年数や役職の有無、教科枠などに関係なく、気軽に飲み物でも持ち寄り、おしゃべりをしようという主旨であり、『茶ットルーム(chatroom)』と名づけられました。定期試験の午後などを活用し、参加し発表し合い、自由闊達に語り合う場です。生徒の能動的学習(AL)などをテーマに、自己の授業実践報告、新しい教育展望、他校や海外の事例報告、果ては未来の学園のあり方などにも話が及びます。

小職や校長も参加しますが、一方的発表だけでなく、小グループでの討議や発表もあり、その前向きさに勇気づけられるひと時です。堅苦しい雰囲気はなく、出入りも自由、発言も自由な会は、すでに2年半で、13回行われています。その事例の一部をあげますと、下記の通り多岐にわたります。

  1. 反転授業について
  2. リベラルアーツゼミの実践報告
  3. アクティブボード(まなボード)を利用したアクテイブラーニング(AL)
  4. 新しいALICEルームの活用とAL実践
  5. 生徒を惹きつける授業とは
  6. 新しい教育実践への取り組み(教員研究論文の発表)
  7. 中高各段階に必要な難関大学への進学力とシラバス
  8. 他校に学ぶ
  9. 生徒の自主的海外研修活動に学ぶ

本学園では、教職員室が学年単位の島になっており、学年集団としての情報共有は当然活発です。更に教職員室隣接のリフレッシュルームでの食事やコーヒーを飲みながらの教職員同士の語らいや、既報の自主的授業公開(オープンクラス)への自主的参加も重要です。

教職員の学びは、定型的・義務的学びも勿論必要ですが、基本は更に質の高い教育にむけ、自分の内的な欲求または必要性に迫り、自発的に学びに行くことが大切であり、成果も上がるのです。欠点は学ぶ意欲のある教員と学ぶ意欲のない教員との実力の差が出てくることです。

組織の壁を超えた学びには、個人の意欲と共に、場や仕掛けが大切であることを感じます。

ある文具メーカーのオフィスは、従来多くの階に別れていたオフィスを、移転時大きなビルの一つの階に集結し、部門間の交流が非常に活発になったとのことです。米国の先端的技術研究所では、毎日3時のティタイムの時間が、研究者同士の交流に非常に役立ち、新しい研究テーマの発掘や、苦戦している課題の解決に役立っているとのことでした。日本の企業でも、各フロアの自動販売機のところに、リフレッシュルームをつくっているところは多いようです。

今後の働き方改革の中で、仕事の質を上げ、生産性を向上させる鍵は、仕事の段取りや集中力と共に、部門間の情報共有、インフォーマルな意見交換、創造的闊達な人間関係のなかにあるでしょう。