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2019.08.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#167 教えあうことが一番の学び

Learning Pyramid2019.08.01
市川学園理事長・学園長 古賀正一

7月19日から45日間の夏期休暇に入っています。夏は生徒が通常の生活から離れ自分で自身の日々を計画し実践できる期間であり、大きく成長できる機会です。毎年思うのですが、中高教職員・生徒合わせて2500人、附属幼稚園を合わせると3000人以上が、学校管轄の夏期講習、国際研修、校外行事や部活だけでなく、個別に国内、海外で活動します。どうか事故、怪我、病気のないよう、『安全は全てに優先する』を合言葉に、9月2日の始業式に元気で会えること願っています。また、8月31日には、2学期の準備のため、また夏の状況集約のために、教職員全員出勤日とし、教職員会議、学年・教科会議、『なずなセミナー(外部講師を招聘し、年間2~3回実施する教職員研修会)』など有意義な1日を過ごします。201907baseball

本年7月の最大のトピックスは、高校野球選手権千葉大会での硬式野球部の大活躍でした。1回戦から着々と勝ち上がり、そのうちシード校の2校を倒し5回戦まで勝ち続け、なんと6回戦である準々決勝まで進みました。惜しくも敗れはしましたが、千葉県170校163チームの8強の一校に名を連ねたのは快挙でした。

23年ぶりにベスト8に進出したこと、2人の投手の制球力で3試合無失点に抑えたこと、また進学校として文武両道の野球部活動を実践したことなど、新聞各紙で大きく取り上げられました。学業と部活の両立をモットーとし、部活最終時間は18:30とし、休日の活動制限を含め『学園部活ガイドライン』を遵守しつつの努力の成果でした。選手の時間を大切にしたたゆまぬ努力、監督・顧問のよき指導による自分で考える野球、保護者会(市球会)の熱意、応援部・ブラスバンド部の応援など総合力のお蔭です。現役生徒・教職員、OB・OGも熱心にスタンドから応援し、充実した6日間でした。

さて、教育の中で、自ら学ぶ・体験することと、人に教えることが学びの定着率としてよいことは実証されています。アメリカの国立訓練研究所が発表した研究データで、学習定着率(学んだ知識がどれだけ身に付くかの割合)を示すラーニング・ピラミッドというもがあります。

①講義(5%)、②読んで学ぶ(10%)、③視聴覚(音声・映像で学ぶ)(20%)、④実演説明(30%)、⑤グループ議論(50%)、⑥練習(75%)、⑦他者に教える(90%)

を、定着率順に積み上げたピラミッド型の図です。①~④は、受動的学びであり、⑤~⑦が能動的学びであります。最近のアクティブ・ラーニング(AL)の根拠にもなっています。特に自分が理解したことを他人に教えることが、最も定着率がよく90%です。

当校で生徒が他者に教える場面が多くなっていますが、以下その一例を挙げてみます。

1) AL(アクティブ・ラーニング)をふまえた授業の中で、生徒同士が討議し教えあう場面が多くなっています。授業のグループ学習の中で、互いに教え合い学び合うことを通じて知識も思考力も本物になります。生徒同士で「ああそういうことだったのか」と理解を深めている姿を見ると、うれしくなります。

2)開放的学習空間(図書館や自習室のように静粛でなく、互いに討議または教えあうスペース)が、学園の各所にできています。本館3階、4階のスペース、特に3階自習室の前は知の拠点として多くの書籍がおかれ、白板を使って互いに教えあっています。また北館4階の高2学年のフロアには、各所に本や机・椅子がおかれ、学びあっています。人に教えることは、損ではなく、自分のためになる、更に人から喜ばれる、こんなよいことはありません。

3) SSHでの恒例の『高校生が教える小学生体験講座』は、学園生徒が先生になり人に教える絶好の機会です。今年も約200名の小学生と保護者に熱心に参加していただきました。物理、化学、生物、数学の27のテーマについて、生徒が小学生に説明し実験をします。『楽しめる音の実験』『雲を作ろう』『DNAを抽出し見てみよう』『パスカルの三角形の作り方』など面白い身近な実験が多数ありました。時には小学生から本質的質問を受け、丁寧に教えている姿はよいものです。

4)授業外のセミナーや対外コンテストなどで、数人のチームでの発表が多くなりました。互いに分担して調べ、教え合い検討する段階を通じて、学びが深くなります。以前、このコラムでも紹介したグローバル講座、WSC(The World Scholar’s Cup)への参加、ビジネスグランプリ、模擬国連などはその一例です。

振りかえって考えてみると教師という職業は、教えることを通じて、自身も学び成長し、知識の定着率でも高く、生涯学び続ける素晴らしい職業でもあります。

『人は教えつつ学ぶものである。』(セネカ;ローマの哲学者)