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2020.01.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#172 ご縁を大切に・・・人間関係は学園の大切な財産

2020.01.01
市川学園理事長・学園長 古賀正一

令和でのはじめての正月、いよいよオリンピック・パラリンピック開催の年、新たな気持ちでスタートしたいと思います。平成時代が平和な時代であったように、令和時代も絶対に戦争のない平和な時代でなければなりません。年賀状に今年は『知足者富』(老子;足るを知る者は富む)としました。平和な今を大切に、何事にも満足し感謝し、心豊かに生きて行きたいものです。

旧年教育界の大きな出来事は、2020年度に迫った大学入学共通テストの2本柱である英語民間試験導入と国語・数学記述問題の突然の中止・白紙撤回の発表でした。大きな混乱と6年間の壮大な無駄をもたらしました。教員・生徒がこれ以上戸惑わぬよう、文科省・大学等関係機関の早急な具体的対策提示が必要です。AI・ディジタル・グローバル時代の高校教育において、英語の4技能を格段に向上させることは急務であり、ディジタル時代の日本語の読解力と記述力は勿論、思考力・判断力・表現力を身につけることは、最近のPISA(OECD国際学習到達度調査)の結果からも不可欠です。教育改革は一歩たりとも止めることはできないと思います。

大切なことは教育改革の原点の高校教育改革、大学教育改革を前進させることです。大学入学共通テストに、高大接続一体改革の牽引力としての役割を期待しすぎたのではないでしょうか。高校教育改革は、新学習指導要領に向けてのカリキュラム、シラバスをしっかりつくり授業変革をすること、思考力・判断力・表現力の向上に向けALを中心に推進すること、英語4技能を授業および授業外でしっかり生徒に身につけさせることが本質です。

大学教育改革は、アドミッションポリシーに基づき、大学入試改革で目指したことを各大学の責任において個別入試を充実させ、自らの大学が求める条件に合った学生選抜をしっかり行うことです。またカリキュラムポリシー、ディプローマポリシーに基づき、カリキュラム・教育の質をグローバルに競争できるレベルに向上させること、何より学位取得者として恥じないレベルの学力・教養を身につけた学生を社会に送り出す責務を持つことです。

さて学園は、生徒、保護者、役員・教職員、同窓生、その他直接の関係者・支援者のチームとしての組織体です。この直接の関係者・支援者以外に、教育に関係していただける方が多数おり、いろいろなご縁で参加していただいています。一つのご縁が発展し、新しい方々とのご縁ができ、人間関係が大きく広がり、学園の進歩の原動力となっています。もちろん教育の中核は、現教職員ですが、技術革新が激しいグローバル時代には、外部の方の経験や知見が不可欠です。

外部の方の支援は、土曜講座、特別講座・ゼミ、市川アカデメイア、学年の諸企画・講座、SSH活動、他校および大学との交流、学校視察、教職員研修、生徒の外部活動など多岐にわたり、多種多様なご縁ができています。過去、特に20世紀の学校教育では、学校現場に外部の方が参加すること、教育を見ていただくこと、授業をオープンにすることは、教育研究を使命とする国立の学校は別として、極めてまれでした。今は外部の方に教育に参加していただき、意見をいただくことは、当学園では極めて普通かつ重要であり、大歓迎なのです。

例えば「土曜講座」では、毎年外部の各分野の識者14~16人に講演と質疑応答をしていただき、「特別講座・ゼミ」でも定期・不定期のもの含め多数の方に協力いただき、古典哲学書熟読・対話の「市川アカデメイア」には、アスペン・エグゼクティブセミナの経験のある社会人にアドバイスをいただき、教職員全員研修の「なずなセミナー」では、年3回現在の教育問題の専門家に来ていただき、講義・ワークショップなどをしていただいています。

もちろん学校に来ていただくだけではなく、教職員の他校訪問や外部研修、生徒の企業訪問・大学訪問、生徒自身の国際研修や外部活動でも、多くのご縁をいただき、新しい人間関係ができます。ご縁による人間関係すなわち人とのつながりのネットワークは、個人にとっても、学園にとっても非常に貴重な無形の財産なのです。

ご縁という言葉は、日本語特有です。縁とは、『人と人または人と物とを結びつける不思議な力』(広辞苑)とあります。英語では、難しいのですが、和英辞典によると、fate、 destiny、relation、chanceなどと訳されますが、一語ではぴったり来ません。かつて小職の民間企業時代に、ある外国企業との提携発足の挨拶で、良いご縁があって今日の日を迎えたと言うため、外国人に聞いたところ、ご縁という言葉はGod Giftが適切ではないかと言われたことを思い出します。

学園も個人も、ご縁を大切に、良い人間関係という無形の財産を豊かにして行きたいものです。これからは自分がどういう人を知っているかが、組織においても、企業活動・社会活動においても、技術・研究においても重要になるでしょう。

最後に新年が皆様にとり、健康で幸せな一年でありますよう祈念いたします。