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2020.06.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#177 本当に大切なことを考える

2020.06.01
0601 市川学園理事長・学園長 古賀正一

長い休校期間を終え、いよいよ学園を再開できることになりました。久方ぶりに生徒がマスクを装着し、社会的距離をとり、本館エントランスから、2台の自動体温検知カメラの前を通り、消毒ポンプで手指を消毒し、クラスや第三教育センター、自習室に向かう姿を感慨深く見守っています。

長い休校期間、自粛生活の中、生徒も一日も早い登校を望み、教職員も生徒との出会いを熱望しつつ、4月から5月末まで遠隔授業・学習支援に注力してきました。同時に学内では6月1日以降の再開計画を慎重に準備してきました。緊急事態宣言解除とはいえ、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症防止は、赤信号が青に変わったのではなく、黄色信号の中での解除であり、衛生管理に十分に対処にしつつ、生徒・保護者の協力で、慎重に遅れた学習を取り戻さなければなりません。

すでに学園関係者には緊急メール、なずなネット、Classi等で具体的に通知していますが、段階的に登校をスタートします。
第一段階として、中学・高校共に分散登校(クラスの出席番号奇数番、偶数番毎に隔日登校)、時差登校(10時登校)、短縮授業(1コマ40分)からはじめ、第二段階は、中学は引き続き分散・時差登校、高校は一斉時差登校、第三段階は、中高共に一斉時差登校とします。それぞれの切り替えは、学内の状況や社会全体の様相を見極めつつ慎重に判断していきます。

1学期は、感染症防止と授業時間数確保のため、残念ながら行事、部活は原則行いません。生徒諸君は是非理解して下さい。7月末に学期末試験、8月6日に終業式を行い1学期を終了する予定です。何よりも大切なことは、3密回避、マスク着用、体温測定、手洗い、消毒など衛生管理と自制した生活習慣のもとでの健康管理を、一人一人が自分事として守ることであり、感染終息のための責務だと思います。

休校中各学年の特色を生かし、それぞれ学習時間割を作り、決められた時間帯での学習も取り入れつつ、各種ICTソフトを活用した学習をしてきました。
例えばZOOMソフトを利用した『双方向TV会議型』のHRや授業、Dropbox、YouTubeなど大容量データファイル(フォルダー)に動画やPP等授業コンテンツをアップし、いつでも視聴出来る『オンデマンド型授業』、双方向学習支援システムClassiを使った『課題やり取り型授業』、既存のなずなネットや緊急メール、HPによる告知の徹底と質問回答などです。
一方的授業や課題配信だけでなく、回答を回収し添削するなどの生徒とのやりとりも活発に行なってきました。休校期間中、本校の建学の精神である自ら学ぶ『第三教育』を実践するよい機会として、生徒が主体的に計画し、学ぶ力をつけたことを期待しています。

人類の歴史は、地震や洪水などの自然災害と共に疫病特に感染症との戦い・共生の歴史だったといっても過言ではありません。時々の政治、経済、学問、科学技術、文化、人的交流にも大きな影響を与えてきました。
ペストの流行は西洋にルネサンス(再生)時代をもたらし、スペイン・インフルエンザは、第一次世界大戦後の世界に影響を与えました。

今、感染拡大防止と経済・生活の両立、感染の第二波・第三波を防止する新しい日常が必要です。一刻も早いワクチンと治療薬の開発が期待されます。人間は自然の中の一部であり、他の微生物・動植物など生きものと共に生き、生かされていることを考える時、文明の発達が自然環境を破壊し、野生動物からの感染が多くなった現実を直視しなければなりません。これからの新しい持続的社会の形成、新たな自由と連帯の世界への変革の大きな試練かも知れません。

今回の自粛生活の中、生徒や保護者の皆様もいろいろなことを考えられ、またご家庭もそれぞれにご苦労がおありと存じます。今大切なことは、自粛を通じ3密回避を守り、自分の体調を管理し、新しい生活習慣を維持することであり、まじめさ、清潔感、協調性など日本人固有の道徳観が収束の鍵となるでしょう。自粛とは、『自分で自分の行いを慎む』ことなのです。
自粛の中、本当に大切なことは何か、グローバル化、急速な技術革新、経済の発展、高齢化社会の中で失ったものは何かなど、改めて考える機会でした。コロナ以前には日々当たり前であったことが、いかに貴重なものであるかに気付かされます。3度の食事、自由な対話、移動の自由、リアルの世界での感動、基本インフラと制度(電気・ガス・水・情報通信・医療・病院・国民皆保険・物流・交通など)、日々仕事があり働けること、家族との団らんの時間、学校生活での先生・友人との対話や交流などなど。一見平凡な無事な一日が、いかに貴重で大切なものかを考えさせられます。将に『無事是貴人』です。

自粛の中で失ったものも多いが、得たものもあったと思います。ICTのスキル向上と活用拡大、テレワーク、遠隔での学習、静かにものを考える時間、自分で学ぶこと、読書や音楽など好きなことを一人で楽しむ時間、改めて近所の風景、新緑の美しさへの感動などなど。ネットの世界の効率性とリアルの世界の感動性、助け合いの大切さ等も再認識します。

最後に、政府のコロナ対策諮問委員会のメンバーである経済学者慶応大学教授竹森俊平氏が、5月22日の衆参の予算委員会に参考人として出席されましたが、その陳述が極めて印象的でしたので紹介します。18世紀スコットランドの哲学者トマス・リード(1710~1796)の『鎖の強さは、一番もろい箇所の強さに等しい。なぜなら鎖の一番もろい箇所が崩壊したら、鎖全体がバラバラになって崩壊するからだ。』の言葉を引用し、その上で現在の経済危機を脱するには、日本社会の弱い部分、困っている労働者、中小の企業、小店舗、非正規労働者など経済困窮者に焦点を当て支援し守り、社会がばらばらにならぬよう政策を打つべきだと主張されました。教育にも弱い部分(ICTが行き渡らない部分など)があり、支援すべきと話されました。

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