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2020.11.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#182 バランスの重要性・・・楕円の哲学に思う

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市川学園理事長・学園長 古賀正一

早いもので2学期も中間試験が終了し、後半に入りました。新型コロナウイルス感染防止のため、なずな祭、中学体育大会、高2沖縄修学旅行、合唱祭、芸術鑑賞会などの行事が中止となり、中2関西宿泊研修は3月に延期、中3シンガポール修学旅行は行き先を国内に変え3月に実施となりました。そのような中、高校球技大会は、小雨の中でしたが縮小して実施しました。また行事の重要さを考え、代替の行事を行ったりネットでの外部イベントに参加するなど、各学年が創意工夫し努力をしています。

21年度入試の学校説明会は、ZOOMを中心にこれまで多数回行ってきました。10月24日・25日には、学内で3密を避け縮小した人数での対面での説明会と同時にZOOMを使ったオンラインとの併用で実施しました。

学校行事は協働により生徒のリーダーシップやフォロワーシップを育て、成果の発表や情操教育の機会として、極めて重要な役割を持つものと考えています。11月には3密を避け、感染防止対策をしつつ、「中学文化月間」として日頃の研究成果発表や芸術に触れる情操教育の場を下記のように設けたいと考えています。

①作品展示会
課題や自由研究、授業などで作成した作品を中学各学年フロアに展示するもの

②ミニ芸術鑑賞会
吹奏楽部、オーケストラ部の協力でミニ演奏を國枝記念国際ホールで聴くもの

③研究・学芸発表会
研究の発表、体験学習の発表、個人・グループ学芸発表など各教室、國枝記念国際ホールまたはZOOMで実施  するもの

さて最近思うことは、生き方についても、教育についても、経営・リーダーシップについても、政治の世界でも異なった視点の並立と対立する考えのバランス、どちらか一方に偏らない中庸の判断や良識が重要であることです。

  1. 生き方について・・強さと優しさ

    これからの時代は、強く逞しく新しいことにチャレンジしやり抜く力、自助努力が期待されるが、一方では弱者や人の悩みに対しての優しさや思いやり、配慮や心配りが不可欠である。又助け合う共助がますます必要である。
    『強くなければ生きて行けない、優しくなければ生きる資格がない(レイモンド・チャンドラー)』
    また論理的であることと一方で直感・情緒などがAI時代には必要であり、更に誠実さ(正直、ごまかしがない)と共に気概(新しいことへのチャレンジ精神、やり抜く力)が必要である。

  2. 教育について・・不易と流行

    私学教育における不易(建学の精神)と流行(時代に合った改革と進歩)、広い教養と深い専門、理系と文系の知見と相互の交流、学力と人間力、新しい分野と基礎学問、対面授業とデジタルの活用による遠隔学習などのハイブリッド教育の視点が重要になる。

  3. 経営とリーダーシップについて・・鷹の目と蟻の目

    中期長期の戦略的視点・俯瞰的な総合知と現場の課題を発見・解決する現場感覚、戦略やビジョンと具体的に施策を実行する現場力、大局観と具体論など、常に2つの視点が必要である。

  4. 政治における中庸・・楕円の哲学(大平正芳)

    現在は右か左かの極端な考えの対立を強調し煽る極論が、世界でも国内でも激しいが、国民の立場では政権が変わるたびに方針が180度変わることは不安である。

    連続性と改革のバランス、中庸に真理がある。敬愛する第68・69代内閣総理大臣大平正芳氏の『楕円の哲学』は、楕円の2つの焦点のように、並立する考えの均衡、緊張関係を保ちつつ、バランスと合意重視の政治手法である。1978年12月大平内閣誕生後の施政方針演説で次のように述べた。

    『(前略)急速な経済成長がもたらした都市化や近代合理主義に基づく物質文明が限界に来ている。いわば、近代化の時代から近代を超える時代に、経済中心の時代から文化重視の時代に至ったのである。我々が、今日目指している新しい社会は不信と対立を克服し、理解と信頼を培いつつ、家庭や地域、国家や地域社会の全てのレベルにわたって、真の生きがいが追求される社会である。各人の創造力が生かされ、勤労が正当に報われる一方、法秩序が尊重され、自ら守るべき責任と節度、他者に対する理解と思いやりが行き届202010sis2いた社会である。』

    今こそ必要な新鮮な方針である。そのための9つの政策研究グループを立ち上げた。即ち田園都市構想、対外経済政策、多元化社会の生活関心、環太平洋連帯、家庭基盤充実、総合安全保障、文化の時代、文化の時代の経済運営、科学技術の史的展開である。

    尚大平内閣で首相補佐官制度がはじめてでき、上記研究会のまとめ役になった補佐官の長富祐一郞氏は、市川中学校第4回卒業生(高校第6回相当)である。

    ※参考資料;『大平正芳・・戦後保守とは何か:福永文夫(中公新書)』『大平正芳・・理念と外交:服部龍二(文春学芸ライブラリー)』