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2021.05.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#188 ポジティブな励ましの言葉の大切さ

 2021.5.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

  4月20日から、千葉県もまん延防止等特別措置が適用され、市川市も対象です。また東京都には25日から5月11日まで緊急事帯宣言が発令されました。学校は休校にはなりませんが、一層緊張感を持って、生徒の学習と感染防止対策、生徒・教職員の安全に対処しています。
21年度をスタートして1ヶ月、コロナの感染が拡大する中で、新人教員研修、各部門の年度初め方針発表会(今年は完全ペーパーレス)、各校務分掌別の準備打合せ、教職員健康診断など年度初めの準備を行い、種々制限の上、中学・高校入学式、新入生オリエンテーション、保護者会、生徒健康診断など4月の行事を無事に行いました。部活や対外活動など、生徒達が思う存分に校舎の内外、学校の内外で活動出来る日が早く来てほしいものです。

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始業式から一週目、ちょっとよい話がありました。市内の在住の方から次のようなメールをいただきました。『昨日市川学園のグラウンド(東菅野3丁目)のバス停からバスに乗ろうとしました。バス停には部活帰りの生徒さんが大勢並んでいましたが、私が子供連れで時刻表を確認していたところ、並んでいた生徒さんが「どうぞ座って下さい。」と数名でバス停の椅子席を譲ってくださいました。また、バスが来た際も「お先にどうぞ!」と乗車を譲ってくださいました。部活後で疲れているでしょうに、優しい心遣いにうれしく感動しました。』
当たり前のことですが、上級生が下級生を良く指導していたこともうれしく思いました。日頃から教養力、紳士・淑女たれと云っていますが、土台はモラルやマナーや他人への思いやりで、小さな善行は、本人達にとっても気持ちの良いものです。徳育・人間力育成は言葉や論より、日々の継続した実践です。

さて生徒の成長で最も大切なことは、自分の特色・得意や好きなことを知り、人とあまり比較せず、自己肯定感(自尊感情,self-esteem)を持つことです。ありのままの自分を認め、自分が思うことをポジティブに、積極的に行動することです。保護者も教職員もそれをサポートする応援者であることが大切です。自己肯定感を持つことは、幸福への道でもあります。
平成27年8月の国立青少年教育振興機構の「高校生の生活と意識に関する調査報告書*」の「自分について」の項目の他国比較では、我が国の高校生は米国、中国、韓国に比して評価が低いのです。「人並みの能力がある」、「希望はいつか叶うと思う」、「はっきりした目標を持っている」の問いに対し、肯定的答えが少なく、「自分はダメな人間だと思うことがある」の問いに対しては、肯定の割合が高いという結果です。また内閣府の定点観測「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査**」(平成30年度)でも、「自分自身に満足している」、「自分には長所があると感じている」、「分からないことに意欲的に取り組む」などの問いに、そう思うという肯定的答えが他国(韓国、米国、英国、独、仏、スウェーデン)に比し少ないのです。

しかし当学園では、自分から積極的に活動する生徒が多くなっています。生徒に自己肯定感を持たせるには、やはり保護者や我々教職員がよい点を認め、褒めること、注意する場合でも自分で考えさせるよう仕向けることが大切です。日本人の謙虚さ故か、従来自分から積極的に発言する人は目立ちたがり屋という気風がありましたが、グローバル時代の今は違います。海外で仕事をしてみると、黙っていることは意見がないとして、無視される事になります。

先日の学年の保護者会で、高2の学年主任が、受験に向かう生徒に対して、励ましの言葉をタイミング良くかけることが大切で、本人が悩んでいるときに志望校を下げたらとか、食事やリラックスしているときに勉強の話をするのは非常にマイナスであり、保護者は見守りと激励が大切と強調していました。

安田教育研究所の安田理先生は、「先生は、生徒を拍手する人になってほしい。先生自身が拍手されることもあるかもしれませんが、基本的には先生は生徒に拍手する人だと思うのです。社会で活躍する卒業生やコンテストで入賞した生徒にはもちろん拍手をするでしょう。でも、私がお願いしたいのは、そうでない生徒に拍手をすることです。地味で教室の片隅でおとなしくしている、そういう生徒こそ見つけ、材料を探して拍手していただきたい。」と述べておられます。
まさに当学園の建学の『なずな精神』、目立たないなずなの花のような生徒の美点を見つけ、育て伸ばすことこそが教育の醍醐味です。菊の大輪や満開の桜のような目立つ生徒を愛でることも大切ですが、目立たない生徒に拍手する『なずな精神』に、改めて力を入れたいと思いました。

都留文科大学特任教授の石田勝紀氏は、NHKラジオの文化講演会の『子供を伸ばす魔法のことば』の中で、親が子供の自己肯定感を伸ばす10のプラス言葉(魔法のことば)として、次の言葉をあげています。
      承認のことば;  すごいね、さすがだね、いいね
      感心のことば;  なるほどね、しらなかった
      感謝のことば;  ありがとう、うれしい、たすかった
      安心のことば;  だいじょうぶ
      指摘のことば;  ・・らしくないね (・・らしいね)
これを軽く、さりげなく、短く、明るく、すぐ云うのがコツだそうです。
やはり保護者も我々教職員も、ポジジティブなことばを多く、ネガティブなことばを少なく使いたいものです。褒める、認める、受け入れることが大切で、自己肯定感を生徒に持たせる、自信を持たせることは、いかなる時代でも重要なことです。

当学園の建学の精神の一つである『なずな精神』を基本に、一人一人かけがえのない生徒が、自己肯定感を持ち、日々の楽しい学園生活で大きく成長することを常に願っています。白背景 なずな
     「よく見ればなずな花咲く垣根かな」(芭蕉)
      「君は君我は我也されど仲良き」(武者小路実篤) 

* 国立青少年教育振興機構:高校生の生活と意識に関する調査報告書
・・・日本・米国・中国・韓国の比較 (平成27年)
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/98/

** 内閣府:「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成30年度)
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html