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2011.04.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#66 助け合う心・・・やさしさと思いやりをもって

理事長・学園長
古 賀  正 一

 生徒の皆さん、保護者の皆様入学・進級おめでとうございます。難関を突破した素晴らしい努力を大切に、よく学び友情を深め、楽しい学園生活をおくって下さい。本学園は創立74年、一人一人違う人間の持ち味をひき出す『よく見る教育』、生徒自らが意欲的に学び探求する『第三教育』が建学の精神です。

さて東日本大震災(地震・津波・原発)は、未曾有のものとなり、我が国はまさに危機に立つ国家です。災害に直接あわれた方の苦しみ悲しみは察するに余りあり、心から御見舞い申上げます。長期間かかる復興、再建に立ち向かい、日本人一人一人が持ち場持ち場で、全力を尽くすべきときです。

3月11日(金)巨大地震発生時、本校では学期末考査・第三日目を終了し、学内に生徒が約330名おりました。帰宅出来る生徒は直ちに保護者に連絡の上帰宅させ、帰宅できぬ生徒290名は、国枝ホールに集結し一泊し、非常時備蓄の乾パン、水を提供、炊き出しのおにぎりも食べさせ、翌日逐次帰校させました。3月13日(日)以降生徒休校、行事中止を保護者に通知いたしました。生徒の安全安心を第一に考え、中学校卒業式、終業式も苦渋の中止決断をいたしました。当学園の建物の損傷はお蔭様で軽微でした。

いよいよ4月7日始業式、8日入学式その後は正規の授業・行事が始まります。授業や教育活動が待ち望んだ生徒の心を癒すと思います。生徒諸君は、今こそ多少の不便や不足に負けず、我慢や忍耐を学んでほしい。親を助け自分でやれることは自分でやる自立の精神、友達同士が助け合う心をより多く持ってほしいと思います。

被災された方々の痛みを、ああ痛い苦しいだろうと思う心を持ち続けることにより、思いやりや感謝の心が本物になると思います。困難に負けないたくましさと勇気、他へのやさしい思いやりを、現実を通して学んでください。自分の命をかけて救済や復旧に努力する現場の人々の勇気ある姿には頭が下がります。

作家司馬遼太郎氏は、『21世紀に生きる君たちへ』(世界文化社)のなかで、今考えなければならぬことを的確に書いており、その要旨を参考に記します。

1. 人々は自然をおそれあがめ、身を慎んできた。しかし近年人間こそ偉い存在だという思いあがった考えが頭をもたげてきた。人間は自然の一部にすぎず自分で生きているのではなく、生かされているのだという素直な考えが大切。

2. 自分に厳しく相手にはやさしく、素直で賢い自己を確立しなければならない。科学・技術が、人間をのみこんではならない、支配しよい方向に持っていってほしい。人間は助け合って生きている。社会とは支えあう仕組みであり、助け合うことが大きな道徳である。

3. 助け合うという行動のもとは、いたわりという感情である。他人の痛みを感じること、やさしさといってもよい。これは本能ではない。訓練して身につけねばならない。友達が転ぶ、さぞ痛かろうなと感じる気持ちを、自分の中でつくりあげていくことである。

4. 君たちは、たのもしい人格をもたねばならない。たのもしくない人格には魅力を感じない。

最後に『君たち。君たちはつねに晴れあがった空のように、たかだかとした心を持たねばならない。』と結んでいます。

今世界は、あらゆることでつながっています。日本が世界から支援を受ける立場になりました。130に及ぶ国々から支援の手が差し伸べられ有難いことです。世界が日本の立ち上がりを注視しています。日本人の英知と助け合う力を結集し、創意工夫と勇気をもって行動すれば、必ず明るい未来の日本を築けると信じています。

「強くなければ生きて行けない、優しくなければ生きている資格がない。」

~ レイモンド・チャンドラー