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2012.06.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#80 V字型人間をめざせ・・・広い教養と深い専門

理事長・学園長
古 賀 正 一

 中学1年生もやっと学校に慣れ、熱心に授業に取り組み、クラブに入部し、初めての中間試験も終了しました。朝 校門で挨拶するたびに、逞しく成長していくことを感じます。学園全体として4月末から6月上旬は、グローバル時代を学ぶため、外部講師の講演やゼミが集中し、日本の外へ目を向け考える有益な期間になりました。

まず4月末の3日間、『グローバル時代と君達の未来』と題して、米国IT有名企業の日本法人社長経験者と海外経験20年のコンサルタントによるセミナーとワークショップが行われ、高校2年生の有志が参加しました。

土曜講座ではグローバル社会で活躍した3人の方々の有益な講演があり、中学1年から高校3年まで、毎回500-700人の生徒が熱心に参加しました。質問にも懇切に答えていただき、素晴らしい人格にふれる良い機会でした。

東大副学長・佐藤慎一氏は、『東大は何故秋入学への移行を検討しているのか』と題し大学の国際化とグローバルリーダーを目指せとのお話。前国連ユネスコ事務局長・松浦晃一郎氏は『国際人のすすめ』と題し、国際的に活躍するための要件更には国際組織で働く心構えなどのお話。また日本IBM元会長、ICU理事長の北城格太郎氏は『これからの国際社会に生きる君達へ』と題し、日本の国際競争力、価値の創造、社会で求められる人材など、いずれも熱く語られました。

それぞれ人生の達人としての実体験からの若者への期待に満ちたお話は、未来に生きる生徒達に大きなインパクトを与えたと確信しています。

さて大学においても、社会においても文系・理系と永らく分けてきています。大学においては、理科系の学科、文科系の学科と別れ、入学試験の科目も異なります。しかし今や学問領域が広がり、理系と文系の境界領域も広く、コラボレーション(共同)する時代です。グローバル時代には、文系の仕事でも理数の素養、論理的な考え方、理系の仕事でも、日本の歴史・文化、世界の歴史や政治経済への関心は不可欠です。

小学校、中学校は、理系・文系全科目必修で学問の基礎を習得します。高校では、当学園は1年生は全科目を共通に習得し、2年からは理系・文系のコースに別れ、文系では国語・社会の授業時間数を多く、理系では、数学・理科の時間数を多くしています。しかし志望大学の入試科目に特化し、主要教科の一部を捨ててしまうような勉強の仕方は、将来に禍根を残します。たとえ大学入試科目にはなくとも、基礎教養として、高校時代に習得することが大切です。

大学入試センター試験を受けることは極めて有益です。国・社・数・理・英の5教科以外に保健体育、芸術、家庭、情報の教科も人生に大切な知識であり、不必要なものはありません。中高に基礎を置いている教養をしっかり学び、人に負けない得意の専門を持ち、深く厚く学ぶ人間、丁度Ⅴ字型のような人間像が理想です。教養の面で重要なのは、やはり読書であり、知の宝庫と思索の場である第三教育センター(図書館)の活用は不可欠です。

社会にでると、大学時代の専門力と共に、中高の基礎学力がベースです。文章をしっかり書けることや礼儀・挨拶は必須です。更にリーダーに必要な正しい判断力には、教養の集積がものを言います。卓越した企業では、幹部に教養を深める教育を実施しているほどです。

小職は、中高時代に数学・理科が好きなこともあり理系に進みましたが、国語や社会の先生の教えによる古典や歴史の素養が、後年非常に役立ちました。大学では1年半広い分野を学ぶことが出来幸いでした。研究者か技術者か、大学に残るか迷いましたが、産業界を選びました。専門は電気工学という広い分野であり、半導体がトランジスタとして実用化されるエキサイティングな時代でした。コンピューターの黎明期であり、その開発にあこがれました。

開発設計者を皮切りに、海外の会社との提携と米国駐在、生産や品質管理部門、他社との合弁会社への出向、システム技術者・営業などを経験し、最後は事業責任者、経営者と人生をたどってきました。

専門分野のたゆまぬ勉強だけでなく、古典や読書の大切さを真に悟ったのは、何人かの部下を持つ管理者になった時でした。「生きる」とは多くの方々の協力と指導のお蔭であり、自ら学び続ける精神と仕事を通じ自分を鍛えること、新しいことにチャレンジすることにより困難な道は開けることを実感してきました。

今は学問、科学技術の発展の速度も速く、習った知識だけでは処理できないことが多くなっています。変化に対応するには、基礎をしっかり身につけると共に、何でも学ぶチャレンジ精神と自ら学ぶ第三教育により、Ⅴ字を大きく太くして欲しいと念願しています。