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2012.07.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#81 脳を鍛えるには運動が第一

理事長・学園長
古 賀 正 一

 7月に入り学期末試験が間近にせまり、生徒の登校時間が早くなっています。新年度の生徒会役員も選出されました。また中1から高2までの学年・クラス別保護者会も実施し、熱心な質問や建設的意見などをいただきました。

去る6月19日、台風接近の日でしたが、ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授ジョン・レイティ先生と慶応大学医学部眼科教授 坪田一男先生による『運動で元気に、成績もアップ、人生大成功』と題した特別講演会を実施しました。750名の生徒・保護者が参加し、国枝記念国際ホールが一杯でした。坪田先生は、抗加齢の研究者でもあり、ご自身の運動体験に科学的知見も加え、運動と前向き志向による前頭葉への刺激の重要性と脳の活性化を中心に話されました。またレイティ先生は、米国の小学校等の多くの実績データから、毎日の授業前の運動の重要性、立ったままでの会議による活性化、運動によりうつ病や肥満をなくすなど、運動習慣が人生でいかに重要であるかを強調されました。講演の最後に行った質疑応答は非常に活発で、時間になり司会者が途中で打ち切るほどでした。レイティ先生の著書には『脳を鍛えるには運動しかない』(野中訳;NHK出版)があります。

また後援会(保護者による学校後援組織)も24年度役員、クラス幹事が決まり、第一回後援会幹事会が行われました。小職が『グローバル時代に生きる~第三教育の達人をめざせ』の題で、下記要旨の講演を行いました。

グローバル社会で品格あるリーダーとして活躍できる紳士淑女の輩出が、当学園の目標であり、これは建学の精神の具現化でもあります。

1.グローバル時代の人間としての基本

世界の人々と交流するには、人間の基礎こそ大切、基礎力がないと恥をかく。挨拶、マナー、ルール・約束・時間を守る、人に迷惑をかけないなど。信頼されること、異質な人や文化になじむこと。

家庭、地域、日本、世界を知り、日本のよさを話せることが大切。日本の道徳の原点は、新渡戸稲造の武士道(The soul of Japan)の徳目(義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義、克己)である。

言葉(語学力)は重要だが道具であり、中身が必要。立派な日本人であること、広い教養と人に負けない専門を持つV字型人間が理想。

2.世界の中のこれからの日本

世界人口増(70億)で、水、食糧、エネルギー不足。技術革新によりいかに解決するか。明治から1980年代までの我が国はは欧米に追いつけ追い越せのキャッチアップ時代、お手本を見習い創意工夫した。21世紀は新しいことをクリエイトする時代。未知の課題解決にチャレンジしなければならぬ。これからの日本は自助力(セルフヘルプ)こそ重要、その上で共助・公助。

『日本の自殺(1975文芸春秋、2012-3月要旨採録)』にあるように、自助力のない国は滅びる。古代ギリシャ・ローマは何故滅びたか。パンとサーカスの名のもとに欲望の肥大化と悪平等主義、エゴイズムの氾濫が原因。1983年頃の土光敏夫氏の行政改革に学ばねばならない。

3.グローバル時代に生きる若者

企業は、海外事業拡大(特に新興国)で、国内でもグローバル人材を求め、日本人(内なる国際化)だけでなく、外国籍(トリリンガル)人材を求める。

2010年経済同友会調査の大学新卒採用で求める順位は ①熱意・意欲、②行動力・実行力、③協調性(コミュニケーション力)、④論理的思考力、⑤課題解決力、であった。

4.グローバル時代の教育の課題

中学・高校時代の基礎教育と人間教育は土台であり、教養、読書、学ぶ習慣は重要。日本の競争力は、IMD(スイスビジネススクール)の評価では27位、政府、経済状況、エネルギーなど基礎インフラは低い評価。

東大秋入学(よりグローバルにより、タフに)問題は、国際化と大学の競争力の強化が本質。(英語での授業、留学生、教育の質の改革、カリキュラム改革、入試と高大接続、ギャップターム活用)。THE社の世界大学ランキングでは東大30位。新興国の青少年のハングリーさに学び、内向き脱却必要(アメリカの大学での日本人博士学位取得数はアジアで6位、TOEFLアジアスコアは、16カ国中14位)。青少年にチャレンジの機会と場を与えることが大切。

5.グローバル化で学園が考えていること~国際教育部4月新設

コミュニケーションできる英語力(RSLW)、中3海外修学旅行、語学研修充実(カナダ、英国、NZ)、留学生受け入れのためのホストファミリー・ネットワーク設立、SSH英語での発表、SSH海外交流(米国、NZ、中国、タイ)、土曜講座で識者によるグローバル社会の話、高2の3日間の『グローバル時代と君達の未来のゼミ』、日韓交流協会生徒派遣、ユネスコスクール加盟手続き中。海外の大学進学、帰国生英語授業。教員の海外派遣(米、英、韓、中、NZ、カナダ、タイ)による内なる国際化も大切。

6.第一教育の大切さ

基本の生活習慣としつけはまず家庭から。早起き、挨拶、食事、整理整頓、自分のことを自分でできる、約束・ルール・時間を守る、我慢させる。

家での読書(親子)、親戚・知人と会うなど種々の経験、きつい体験も大切。

高齢化社会を生きるには、第三教育こそ宝である。