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2013.09.02理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#95 幸田露伴幸福3説と感謝の心

2013.09.02
市川学園理事長・学園長 古賀 正一

edogawa

9月は陰暦長月(ながつき)。日本気象協会の『季節のことば36選』では、いわし雲、虫の声、お月見であり、秋らしい季節感を表しています。暑さ寒さも彼岸までと昔の人は良く言いましたが、まだ残暑が続きます。二十四節気では白露(霜が白々と結ぶ)、秋分です。

猛暑の続いた夏休みでしたが、事故や大きな問題もなく、『無事是貴人』です。幼稚園から高校まで約3000名の生徒・園児を預かる学園として『安全はすべてに優先』します。校長以下教職員がよく計画し、生徒指導し、細心の注意をはらい、報告連絡、責任体制のできていることと家庭との協力の結果です。生徒諸君は、40日間の様々な活動・体験を通じて大きく成長しました。校門に立ち挨拶をしていても、早く学校に来たい、友達に会いたい気持ちがいっぱいでした。一方夏休みに生活習慣が変わり、学期初めにスイッチを切り替えられない生徒もいます。学校も家庭も生徒の様子をよく見る大切な時期です。

最近の日本の若者は自己肯定観(自分を大切に思い、自信を持ち人生や将来への前向きな肯定的な考え)が、他国に比して非常に低いとよくいわれます。由々しきことです。

自分を価値ある人間と思うかとの問いに対し、そう思うと答えた比率が、米国・中国・韓国に比し極めて低いのです。また自分はダメな人間と思うかという問いに対しては、そう思うという比率が、米中韓に比して高く、30年前に比しては3倍くらいになっているという残念な統計です。

これは全国のサンプル調査ですが、学園の生徒は絶対にそうあってほしくない。建学の精神は、人間は一人一人かけがえのない『独自無双』な存在だという自己肯定の人間観が基本です。そのうえで自分の特色を伸ばし、自ら学ぶ『第三教育』の達人になり世のため人のため尽くしてほしい、それが私の願いです。現在授業以外にも生徒がチャレンジし、自分を伸ばす場や機会を多くつくっています。

自己肯定観に関連し市川学園に通える幸せと親への感謝の心も大切だと思います。自己肯定観は、熱意や意欲、行動力、前向き思考と幸福への感謝の気持ちを生みます。幸福は心の持ちようが決め手です。自己を肯定し、やってみることで自信につながり、自己実現をし、幸せな人生が開けると思います。

グローバル時代に社会が求める人材は、①熱意・意欲 ②行動力 ③協調性 ④誠実・明るさ・素直 ⑤課題発見・解決力などで(2012-9 経済同友会調査)、これらは全て自己肯定観がなければ生まれません。

さて明治の文豪 幸田露伴の『努力論』という本の中に、幸福三説があります。三説とは惜福(せきふく)、分福、植福3つの福からなります。

『惜福』とは与えられた福(しあわせ)に感謝しつつ、幸福をかみしめ、取り尽くしてしまわない、むさぼらないことです。このような幸福を大切に感謝する工夫をする、『惜福の工夫』をしている人や家庭は、不思議に福に出合うといっています。

『分福』とは、文字通り幸福を人に分け与えること、自分一人の幸福はありえず、周囲を幸福にすることが自らの幸福につながる、人への親切なども同じです。社会や他人に善いことをすれば必ず自分に善いことが戻ってきます。

『植福』とは将来幸せであり続けるよう、幸せの種をまき、正しい努力と精進をし続けることです。幸せは過去まいた種が芽をだし、今の自分をつくっているといえます。

幸福の原点は、毎日の心構え、努力精進と感謝の気持ちでしょう。また他人とあまり比較しないことも大切です。

『君は君我は我なり、されど仲良き』(武者小路実篤)

最後に8月の学園のトピックスをあげます。8月も学園行事は多く、夏期講習、クラブ活動、合宿、遠征、世界遺産白神山地自然学習・研究会、3コースの国際研修などがありました。教職員自身の研修も多く実施されました。

生徒の国際研修は、次の3コース合計91人、各コース毎に旅行会社添乗員以外に本校教諭が2人づつ計6人が同行し、サポート体制も万全を期しました。いずれも生徒の活動状況は、なずなネットに日々写真つきで詳細に掲載され、学園・家族が常に状況が把握でき好評でした。

第1のコースは、今回2回目で、高1・中3合同の14日間の英国ケンブリッジ大学での研修です。ピーターハウスカレッジのキャンパスと寮生活を体験しつつ、英語レッスンと調べ学習、論文作成、論文発表で、主として理科系のテーマが多く、またケンブリッジ大学の学生がサポートしてくれるのが特徴です。

第2のコースは、今回初めての高1・中3合同の14日間英国オックスフォード大学研修です。ベリオルカレッジのキャンパスと寮生活を体験しつつ、ケンブリッジと同じく英語レッスンと調べ学習、論文作成、論分発表で、やはりオックスフォード大学の学生がサポートしてくれるのが大きな特徴です。

第3は、永年本校の経験あるカナダのナナイモでの中3の17日間の国際研修です。こちらは英語研修とともに、ホームステイとアクティビティが豊富で多様性が特徴です。3コース91名は一人の怪我落伍者もなく無事帰国しました。

また9月1日午後、市川学園オーケストラ部サマーコンサートを習志野文化ホールで実施し、多くの生徒、保護者、教職員、卒業生などが集まり、至福の午後を過ごしました。

今回は、東京名門男子校開成学園の開成管弦楽団との合同演奏もあり、130人のオーケストラは壮観でした。合同演奏曲『交響詩フィンランディア(シベリウス)』、『バレエ組曲くるみ割り人形より花のワルツ(チャイコフスキー)』を短期間の合同練習で立派に演奏でき、互いに学ぶことが多く有益な行事でした。また最初の『オペラ座の怪人(アンドリュー・ロイド・ウェーバー)』では、生徒がその日の練習だけで立派にパイプオルガンを弾いたのには感動しました。生徒の夏の楽しい思い出になったことでしょう。