高校3年生の物理では、電気や磁気に関する「電磁気」の単元を学びます。
その中で、生徒たちの反応がよい実験の一つに、「コイルを使って音楽の信号を飛ばす実験」があります。
使うのは、20回ほど巻いたコイルを2つ。
これを少し離して、向かい合わせに置きます。
片方のコイルには、手持ちのスマートフォンなどからケーブルをつないで、音楽の信号を増幅器を通して流します。いつものように音楽を再生するだけです。
もう片方のコイルはスピーカーにつなぎます。
すると、スマートフォンからケーブルで直接つながっていないスピーカーから音楽が聞こえてきます。
さらに、コイル同士の距離や向きによって音の大きさが変わることも体感できます。
コイルを遠ざけると音は小さくなり、近づけると大きくなります。
また、コイルの向きを変えると音は弱くなり、互いに垂直にしてしまうと、聞こえなくなります。
生徒の手持ちのスマーフォンから流行っている音楽を流してもらうと、教室の雰囲気は一気に盛り上がります。
この実験の面白さは「音楽が聞こえる」という驚きだけではありません。そこには、電磁気の大切な原理が詰まっています。
音楽は、空気の振動として聞こえますが、スマートフォンの中では電気信号として流れています。その変化する電気信号が片方のコイルに流れると、コイルのまわりに変化する磁場(磁力のはたらく空間)が生まれます。その磁場の変化が空間を通してもう片方のコイルに届き、今度はそのコイルに電流を生じさせます。これが「相互誘導」です。
そして、その電気信号がスピーカーに伝わることで、再び音として聞こえるのです。
つまり、この実験では、
「音楽の信号が、目に見えない磁場の変化を通して空間を渡っている」
ということになります。
私たちは普段、Bluetoothを使って、音楽をワイヤレスイヤホンなどで聞いています。便利な技術である一方、その仕組みはブラックボックスになりがちです。
しかし、コイルを2つ並べただけの素朴な実験を通して、ワイヤレス技術の根底にある「見えないものが空間を伝わる」という感覚を、手触りのある形で体験することができます。
現代の技術は、高度で複雑です。
けれども、その奥には、授業で学ぶような基礎的な物理の原理が息づいています。
物理を学ぶことで、身の回りの当たり前をもう一度見つめ直し、「なぜだろう」「そういうことだったのか」と味わえるようになります。
生徒たちには、物理の授業を通して、世界の見え方が変わるような経験をしてほしいと思っています。
そして、身の回りの技術や自然現象を楽しむための、「物理の眼鏡」をぜひ手に入れてほしいです。

バックナンバー理科の散歩道 #6 「 計算で未来を当てる 一発的中で体感する物理 」
第4回 高校生地学研究発表会を開催します。
GEO SPARK(高校生地学研究発表会)は,全国で地学の研究を行っている生徒や指導されている先生が集まって研究発表会を行うことで,地学研究を活性化させ,研究に新たな視点をもって発展させていくことを狙った発表会です。これまでに3回実施してきました。この発表会の特徴は,地学分野の研究発表を主な対象としていること,成果発表のみならず構想発表でも構わないこと,などがあります。
第4回となる今回から,発表会の通称としてGEO SPARKを採用することにしました。高校生が地学研究発表で集う場での発表を通して参加者同士で議論を深めることで,今後の研究活動に火花(spark)をもたらすような会になってほしいという願いを込めています。

今回は,本校の高校2年生が4月に取り組む物理実験の一つをご紹介します。
実験の名前は「一発的中飛行計画」です。
写真にあるように,使用する道具はスタンド,針金,ナット,木のスティック,カップといった,どれも身近で素朴なものばかりです。
針金でつくった振り子を持ち上げて離すと,振り子は最下点でスティックに衝突します。その瞬間,針金の先についたナットが振り子から飛び出し,空中に放り出されます。このナットが描く軌道を見極め,離れた場所に置いたカップに一発で入れる——それがこの実験の目標です。
ただし,この実験にはルールがあります。
試行錯誤を重ねて「当たるまで調整する」ことは禁止。
授業で学んだ物理の理論を用いてナットの軌道を計算し,その結果に基づいて,ただ一度だけ実験を行うのです。
計算を終え,いよいよ迎える実験の瞬間,教室には緊張感が漂います。
そしてナットが美しい放物線を描き,見事カップに吸い込まれた瞬間——
生徒たちは思わず歓声をあげ,班員と成功の喜びを分かち合います。
実際の授業では,カップを床に置くなど,写真よりもさらに長い距離で実験を行いますが,それでも「一発的中」は十分に可能です。
この実験は,物理の中でも「力学」と呼ばれる分野に位置づけられます。
力学の魅力の一つは,物体の未来の位置や運動を,理論によって予測できる点にあります。
計算による予測と,実験による結果が一致したとき,生徒は「物理は現象を理解する学問なのだ」という実感を得ます。
年度はじめにこの実験を行うことで,生徒は,これから学んでいく物理の理論や実験に対して,自然と期待感を高めていきます。
「一発的中飛行計画」はシンプルな実験でありながら,理論で予測し,実験で確かめるという物理学の醍醐味を味わえるものです。
本校ではこのような生徒実験を数多く用意し,実験と理論を行き来しながら科学を楽しむカリキュラムを展開しています。
ぜひ,「考えて,試す」ことの面白さを,日々の学びや生活の中でも感じてください。

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理科の散歩道 #5 「色の変化は化学の不思議を解き明かす?!」